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野鳥の楽園・長流川
日本野鳥の会室蘭支部副支部長 篠原盛雄
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長流川は支笏湖付近を源とし、長さ約50キロの、内浦湾に注ぐ川 としては最大の河川です。途中温泉、田畑、人家などがあり生活廃水等も流れ込み清流とまでは行きませんが、それでもまだヤマメなど魚の種類も多い川です。
特に伊達の館山公園から壮瞥まで続く東側の火山灰の崖は保安林として6キロにわたり自然林が残されており、長流川の自然度を高めています。
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10万年前の洞爺湖形成時の火山堆積物は自然の多様性をもたらし、さまざまな生物が生息する環境を作っています。長流川の河口部分は残念ながらコンクリートで全面固められてしまっていますが、それでもさまざまな生きもの達が命を繋いでいく重要なところとなっています。特に河口付近の自然再生の為の取り組みがこれから早急にされなければならない所です。
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北海道でみられるほとんどの野鳥を観察できる
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11年前から長流川の野鳥調査をしていますが、長流川の素晴しさ発見連続の11年でした。2007年1月現在長流川を中心として伊達で観察された野鳥の種類は253種(18目53科)にもおよび、種類数では1級の探鳥地です。
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長流川では連続して珍しい鳥の観察が続いています。最近では2006年10月にマナヅルの飛来がありました。これまでに観察された珍しい鳥をあげて見ますと、コグンカンドリ、ヘラサギ、カラシラサギ、サンカノゴイ、ゴイサギ、シマアジ、クビワキンクロ、トモエガモ、オオホシハジロ、ツクシガモ、ヒメハジロ、クマタカ、ミヤコドリ、ハジロコチドリ、ツバメチドリ、タゲリ、ヒメウズラシギ、ハリオシギ、チュウジシギ、トウゾクカモメ、コアカゲラ、コシアカツバメ、ツメナガセキレイ、シラガホオジロ、ナキイスカ、コクマルガラスなどがあげられます。
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天然記念物の鳥はコクガン、マガン、ヒシクイ、オジロワシ、オオワシ、クマゲラ6種
レッドリストの鳥は28種にのぼります。北海道で見ることの出来る野鳥のほとんどが長流川周辺で観察することができます。
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カラシラサギ |
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季節によって様々な鳥が訪れる
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10月から3月まではオオハクチョウ、カモ類、オオワシ、オジロワシなどたくさんの冬鳥達が越冬します。今年も3月24日(土)8:45分カルチャーセンター駐車場に集合後、長流川を中心にガンカモ類の市民探鳥会があります。伊達の自然の素晴しさを体験していただきたいと思います。(3pに詳細、親子での参加大歓迎です)
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オジロワシ(天然記念物)
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4月〜5月、8月〜10月はシベリアから遠く東南アジア、オーストラリアまで渡ってゆくシギ・チドリの旅鳥たちが立ち寄っていきます。
5月から10月まで東南アジア、本州から繁殖の為、ヒバリ、ノビタキ、オオヨシキリ、オオルリ、キビタキ、カワセミなどの夏鳥が繁殖のために長流川にやってきます。
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オオハクチョウ・カモ類の越冬地が狩猟地に
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長流川は1年中さまざまな鳥を観察することのできる、西胆振を代表する探鳥地となっています。しかし残念ながら長流川は銃猟禁止の地域となっていないため(猟友会で自主規制となっていますが)発砲禁止の看板を無視して、相変わらず今シーズンも発砲している者がいます。
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コクガン(天然記念物)
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少なくなってしまったオオハクチョウ、カモ類の越冬地が一人の心無いハンターによって脅かされていることは自然保護の面から大変問題のあるところです。
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生態系を維持するために
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長流川は地域の生態系の中核となる自然度の高いまとまりのあるエリアです。伊達の自然を維持していく上で最も重要なところです。地域の人々の生活を健康に豊かに支えるのは自然の豊かさです。私たちは短期的なものも見方ではなく、100年後も伊達の地域で人々が健康で豊かに暮らしていく為に、子ども達に引き継いでいく責任を負っています。また長流川は地域の自然環境を守っているだけではなく、多くの野鳥が中継地、繁殖地、越冬地として生活しています。そのことは長流川が地球的な規模で生態系を維持していく上でも重要な役割を担っていることを意味しています。長流川を守ることは地球の自然環境、生態系を守っていくことになるのだということを意識していくことが大切です。
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そんな意味から、長流川の自然度を維持する為に、長流川一帯を自然保護地域として法的に保全していくことが求められますし、自然を守っていくために行政機関および市民による自然保護の組織の創設が求められます。またコンクリート化された河口部分を元の自然状態に戻す自然再生の取り組みが早急に必要とされています。
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カワセミ
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