むしゃなび特集/2008年6号/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび

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■ むしゃなび特集 2008年6号 ■
ナットウの達人・大友正信 [3/4]
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納豆菌は生きている


<ケンカをしていては、いい納豆は作れない>

大友さんは13歳から納豆を作りはじめ、そして24歳にときに結婚。
その当時は何人もの作業員がいた作業場に、今では綿密に調整された大きな道具が置かれています。

ケンカばかりしている従業員に頭をかかえ、また、商売が軌道に乗ってきたこともあり、大友さんは思い切って納豆作りの機器類を導入することに決めました。
納豆作りの機械。でも、それは道具にしかすぎないもの。それを操り使う、納豆作りのプロの長年の感があってこそ役に立つ道具です。
大友さんは、納豆菌という「生き物」を相手にした日々を重ねてきましたが、今でもごくまれに「失敗」することがあるといいます。明確な理由はないのに納豆がいつものように出来上がらない・・・。
そんな納豆菌の微妙な活動は、作業場の入り口に書かれた言葉の意味にもつながっているようなのです。
そこにはこう書かれています。

 私と女房は生まれる前から
 小指と小指が納豆の糸で結ばれていました

菌というものの微妙さは、人の動きに敏感だと大友さんは言います。
「女房とケンカをした日には、納豆がおかしくなるんだよ。ちょっとしたことで何かが変わってしまうんだろうな。だから女房とはケンカするのは止めたんだ。うちの息子は夫婦喧嘩を一度も見たことがないはずだから、聞いてみろぉ」

出先から帰って来た息子の大友亨さん(現社長)に聞いたところ、その言葉に嘘はない、とのお答え。

おいしい納豆を作る、ということをきっかけに、「ケンカする従業員」や「女房」「家族」とも、いっさいケンカをしないと決めた大友さん。
(伊達納豆 社長 大友亨さん)
納豆菌やパン酵母など、菌類は全て人の感情などにも影響されながら成長する、というような記事をどこかで読んだことを思い出した私は、この話を聞いて、微妙な手加減の狂いだけではなく、本当にそんなことがあるんだろうなあ、とつぶやきつつ、さて、納豆を作っている作業場へと案内してもらうことに。

<納豆を作る行程>

納豆作りの朝は早く、早朝のAM2:30、大豆を水に浸す作業からはじまります。

ピカピカに磨かれた巨大な蒸し釜は、上部のハンドルを回すと重たい密閉蓋がゆっくりと持ち上がります。

その中で浸された3キロの大豆は、AM10:00、すっかり水を切ったあと、高温の蒸気で蒸されはじめます。

その後、蒸し上がった大豆は、クレーンのような運搬台で、パッケージする機械のほうへと運ばれます。

パック容器の乗ったベルトが流れ、パックの中に蒸し上がった大豆と納豆菌が順に入れられてゆきます。

パックに収められた納豆菌の入った大豆は、低温室で寝かされ、菌の成長を促されます。一昼夜たつと納豆のできあがり!


<達人が思う納豆の食べ方>

納豆の食べ方にも、大友さんの持論があります。
「うちの納豆は、5、6回かき混ぜるだけがいい。真っ白くなるまでかき混ぜるもんじゃない。ちょちょっと混ぜたら醤油をたらして食べれば、それでうまいんだ」
納豆は香りと柔らかさが命だ、と大友達人。
達人は、納豆を1日3回、食事のときには必ず食します。だからほんの少しの「違い」も分かるのだと。
商品の出来をチェックするという意味もありますが、大友さんは自分の中心に「納豆が好き」という基本を持って、毎日、納豆を味わっているのです。

「なにしろ納豆は健康にいい。毎日食べてもらうのが納豆というもの」
健康な自分がその見本なのだ、と笑います。

そしてまた、納豆には、こんな良いところもあると言います。
「急に飯を食う人数が増えても納豆がひとつあれば、大根おろしなんかいっぱい入れてさ。そうすれば、何人でもみんなで食べられるっしょ!」



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