|
|
伊達市錦町ののみ屋街の中に、「旭湯」は昔っからある顔をしてなにげなく佇んでいます。
現在は荻野克子、栄子さんの二人の仲良し姉妹で経営。昔ながらの銭湯は伊達ではここ1軒になってしまいました。
|
お風呂屋さんの朝は早い。毎朝6時頃からお掃除をして、お昼頃にはボイラーにスイッチをいれるそうだ。営業開始は午後3時からだけど、近所の常連さんたちが午後2時40分ころには集まってきているとのこと。ゆっくりお湯につかって、それからはおしゃべりタイム。ひとり暮らしのお年寄りたちの小さなサロンになっているようだ。お年寄りがひけたあと、夜には近所に下宿する高校生達が入りにくるらしい。
|
旭湯の歴史は古い。荻野さんたちのご両親が昭和17年に旭湯を買われる前も、同じ屋号で4代くらいはつづいていたらしく、正確な開業時期はわからない。現在のお風呂の建物は増改築はしてあるもののの、タイルの湯舟やなんかは当時のものをそのまま利用している。
|
|
お二人は、かっちゃん、しげちゃんと呼び合いながら、昔のお話をあれこれしてくださった。「昔はうらにタンゴヤがあってね・・・」 タンゴヤ?と聞くと、「石炭小屋のことを略してタン小屋って呼んでたのよ。石炭と下駄工場からもらってきたおがくずで焚いていたんだよ」とか「その当時は釜たきさんっていう専門の人がいてね。ほら、千と千尋の神隠しにでてくる釜爺さんっているでしょ、あれよあれ」「釜焚きさんやおそうじの人が住み込みでいたころは、私たちの父親って人も左うちわだったよねえ」などと楽しそうに昔語りは続く。「オイルショックのときは、重油の値段が10倍にもなって大変だったんだよ」値上げしたんですか?の問いに「いいやしなかった。値段は組合で決まっていたしね。でも当時はまだまだ家に風呂がなかったから、みんな入りにきていたんだよ」。時代は代わってどの家にもお風呂がついてきた、でも家庭風呂よりあったまる、と通うお年寄りたちが旭湯を支えている。
|
|
|
|
のれんをくぐって銭湯にはいると、木のげた箱に竹の脱衣篭、頭からすっぽりかぶるドライヤーも健在。常連さんのおばあちゃんがつくってくれた手編みの座ぶとんに、古い鏡の上にはいろんな時代の看板がずらりと出迎えてくれる。古いものはガラスで、3桁の電話番号が時代を感じさせる。
脱衣所で目に留まったのは竹の篭。3種類の篭があって、一番古い、戦前から使われていたものはちょっと深めにつくられていて、ちょうど開ききったチューリップの花のような形。どれもこれもよく使い込まれていて、つるつるになっている。
|
|
赤ちゃんの着替えをさせるたたみの寝台の上にのせて撮影していると、うしろにSTOP AIDSのポスターがさがっていた。ここにいると古い時代のなかにいるような気になるけれど、ちゃんと時は刻まれていて、時代が交差したかのような不思議な気持ちになった。普段使っていない篭も脱衣所の隅にでんと積み重ねられていて、ほほえましい。
|
旭湯さんのお湯はけっこう熱い。以前熱くて長いことお湯につかっていられなかったんだと伝えると「うちは昔から熱めでね、45度くらいあるかしら、でも自分で水を入れてうめられるようになってますよ」とこたえてくれた。
|
今度はあのすっぽりかぶるドライヤーに挑戦するために、旭湯さんにいってみよう。あったまったあとは、もちろん「びん牛乳」で決まり。
|
|
|
SHOP DATA
旭湯
伊達市錦町109
0142-23-3233
15:00〜21:00
月曜定休
入湯料
大人(中学生以上)370円
小学生140円
0〜7歳 70円
『武者なび』内の「旭湯」のページ
|
1960年の旭湯 (写真提供 明光堂)
|
|
|