毎年2月に行なわれている「だてのみらい展」の出展者を中心に、
地元のアーティストを順に紹介する「アートするひと」。

第一回目は、この方、
荒井修(あらい・しゅう)さんを紹介いたします。
荒井修さんは洞爺湖町(虻田)に工房を構える木彫作家。
不思議な深海魚や、噴火湾の魚たち、そしてサンショウウオなど、ノミ跡を残した力強い作品を作り続けています。
力強いタッチなのに、命あるもののようにやわらかく、動き出しそうに見えるサンショウウオたちには、つい触れてみたくなります。
実際に触れてみても、やはり生き物のように思えました。
「手がかわいいでしょ」
と荒井さん。
爬虫類、魚類、虫なども荒井作品のモチーフとして登場します。
飼っていた猫をモデルにした作品郡は、
猫だなあ!と思わせるいくつかのポーズをとっており、かたわらに置かれたネズミはこのあとどうなるのだろうと想像せずにはいられません。
このモデルの老猫は、
「ポーズをとらせたらそのまま動かない良い猫でした」と荒井さんは笑います。
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荒井さんが木彫をはじめたのは、
70年代。安保闘争、カニ族の時代。
東京に生まれ育ち、当時20歳だった荒井さんは「ぽんこつ自動車」で日本を巡る旅に出て、やがて北海道の地に立ちました。
「知床が良くてね」と荒井さんはいいます。
知床にいた画家の知人を訪ねたときのこと、一人の無頼な木彫作家に出会い友達になりました。
その家の周辺の木を切り出して来て作品を彫っている木彫家の横で、荒井さんも一緒に木を彫り始めます。これが荒井さんの最初の彫刻体験でした。
荒井さんが作ったもの、そしてその真っ直ぐな性格を見て、

「才能がある。やってみるといい」
と、その人は言いました。
「そう言われたものだから、その気になって、この道に入ってしまいました」と荒井さん。
その頃作っていたものは、荒井さん曰く「血染めのアクセサリー」。
ノミで傷だらけになりながら作っていたからだそうです。
(左の写真は現在の作品)
その木彫家は荒井さんと出会った次の年に他界してしましたが、
「色々なことを学んだ」といいます。
年月の長さではない深い絆があったようです。
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薪ストーブの炊かれた作業場。ここから作品が生まれます。
ラジオや、古いレコードや、落語のテープを聞きながらの創作です。
心の師は、かつて交流もあった「砂澤ビッキ」氏。
抽象的な作品は、「どんな形がおもしろいだろう」と考えながら、思いついたままに彫り進めてゆきます。
考えすぎると「おもしろいとはどんなものだろう」とわからなくなってきて、
「どんどん削って、なにも無くなってしまう」こともあるとか。

工房の隣に、奥様の荒井禮子さんが一昨年の7月にオープンした「
カフェギャラリー杢MOKU」があり、木彫の作品を見ることができ、購入することもできます。
このカフェの内装は全て荒井氏が手掛けたということで、店の扉から、椅子やテーブル、ブックスタンドなど、全てがまるごと作品と言えます。
メニューには、
「季節の野菜カレー」「おまかせランチ」(いずれも600円前後)など、地産の食材を意識した料理、また、こだわりのあるおいしいコーヒーや、こっくりとしたミルクティーなどがあります。
店内にはピアノがあるのですが、これは荒井氏が趣味のサックス演奏をするときに一緒に演奏したいと考え置かれているもの。まだ実現していないそうで、ジャズピアニストの来訪歓迎とのこと。また、ライブをしたい人には場所を貸したい、とのお話でした。
木彫工房Syu・カフェギャラリー 杢 MOKU:
北海道洞爺湖町高砂116−60 /
ホームページ
電話・FAX 0142-76-3597
営業 11:00〜18:00(火曜定休)/ 席数 15席前後
●グループ、団体の場合、ご予約いただければ助かります。
※記事の内容は取材時の情報に基づいています。
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