今回の「アートするひと」は、
フィールドで水彩風景画を描く正岡博さん。
正岡さんは、アトリエではなく、フィールドで絵を描き上げます。
気に入った風景を見つけると、
どの位置から描くのがいいか、など、
つねに下調べしながら、
その風景の一番いい季節になると、画材いっさいを積んだ大きな車で目的の場所に出かけます。
この日、正岡さんが出かけたのは、
石蔵ミュージアムの石壁と、
その向こうに伊達紋別駅の渡り階段が見える場所です。
画材は、透明水彩、不透明水彩、製図用のインクや、専用のマスキング液も使います。
「海とかよく描くけど、寒いときなんかは車の中で描くんだよ」
画材を積んだ車は、正岡さんの経営する看板製作の会社でも使っているもので、中にはハシゴや大工道具なども積んである。
「車の中だとなんだか落ち着くんだよね」
移動仕事場と言えるのかもしれません。
とは言え、本当の仕事場のほうもとても広く、様々な用途ごとにスペースがあり、探険したくなるような所で、絵を描くための画材を置いてある一角も。
現在「だてのみらい展」代表の正岡さん。
伊達に来る前は札幌に住んでいました。
札幌のデザイン学校を出て、そのまま札幌の看板屋さんに就職したそうです。
「そのころは絵を描きに小樽運河によく行ってたな」
それから独立して伊達に来たんですか?
と聞くと、
「いや、社長が伊達に仕事があるから行けっていうからさ。それで支店を作って伊達に来たんだけど、会社がつぶれて。でもお客さんがいたからね、独立とかそういうつもりでもなかったんだけど続けるしかないよね、途中で止めるわけにいかないし」
という、肩に力の入らない内容と語り口。なんともかっこいいです。
水彩画は学生のころからずっと手がけており、現在に至るまでには油絵を描いていた時期もありました。
「水彩が好きなんだよね。
油絵って、いくらでも重ねで描き直せるから、何のために描いているのか分からなくなってくるんだよ。それに油絵の世界は賞をとるために描いてる人も多くて、そういう風潮を知っているから油絵は描かない。水彩画は一発勝負で楽しいよ」
何かのために描くのではなく、描きたいから描く。
正岡さんは今日もどこかの空の下で潔い一発勝負をしていることでしょう。
正岡博(工芸社「看正」):
伊達市北稀府町133-4 / 電話 0142-24-1529
※記事の内容は取材時の情報に基づいています。
《他の特集を読む》