アートするひと(6)木工家具 奥田忠彦/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび


◆ アートするひと(6)木工家具 奥田忠彦 ◆
掲載日:2011.09.19 [1562]


 
人の肌に柔らかさを感じさせる家具。座るとほっとする椅子。 
それを作るのは家具職人の奥田忠彦さん。 
中折れ屋根の牛舎の2階を利用した工房で製作します。
 

 
奥田さんは、信州の安曇野在住のころに知り合った建築家の中村好文さんの注文をうけて椅子やテーブルを作ったり、また、作品を直接見た人からの依頼でオーダー家具をはじめ色々なものを作ります。 
 
「(自分は基本的に)職人だから、デザイナーから以来されて作るのが仕事」と、奥田さん。自分は作家ではなく「職人」なのだといいます。 
 
デザイナーと職人、 
2人の専門家の手によって作られた家具は、安曇野の「いわさきちひろ美術館」で使われている椅子「ちひろ」をはじめ、中村氏の建築と共に色々な人に使われています。>ちひろ美術館  
 
また、胆振近郊では真狩のパン屋さんBoulangerie JIN (ブーランジェリー ジン)の作業場の家具工事を手掛けています。作業場なので残念ながら見ることはできませんが、ひとつだけ触れることができるのは店の入口ドアの取っ手。パンを買いに行ったときには取っ手に注目してみてください。 
 
仕事の喜びは、使う人によろこんでもらったとき感じる、と奥田さんは言います。 
 
たとえば最近では、歩行補助のための手すりを作り、個人宅に設置しました。 
 
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奥田さんは様々な場所で木工を学んできました。 
 
木工の専門の学科がある大阪の高校を卒業した後、別注家具の製作所「大阪木材工芸」に就職し6年間勤め、退職した後、大好きな登山のためにアルプス山脈へ出かけ、マッターホルン、モンブランなどに登ります。 
 
日本に帰ってきた奥田さんは「むくの木(一枚板の木)で家具を作りたい」という以前からの思いを実現させようと考えました。 
 
その思いに叶った場所を飛騨高山の「アリスファーム」に見つけます。木工の仕事でアリスファームの共同体に加わり、シェーカー家具を作りはじめます。 
やがてアリスファームの移転と共に北海道の余市、仁木町に移住します。 
 
アリスファームの後は「東急ハンズ」の工房に2年半勤め、独立の準備を整えました。現在使っている電動工具や機械類はほとんどこの時期に揃えたもの。
 

 
独立した奥田さんの工房は、安曇野(信州・長野県)の山の中にありました。 
 
「本当に山の奥で、家は「わらぶき」だったし、いろりがあって」 
ーーーそれは、、、国の文化財? 
「いや、一般の家で、わらぶきの上をトタンで覆ってあるんだよ」 
ーーーそれが一般の? いろりの煙が天井の上へ抜けてゆく仕組みになっている? 
「それが、煙くて煙くて(笑)。本当にもくもくで、ひどかった」 
 
この時代に、知り合いの紹介で建築家の中村好文氏と出会い、中村氏の家具を手掛けはじめます。 
 
それから8年後、子供の教育環境を考え伊達市に移転。今から約12年前のこと。 
 

 
さて、現在、黄金地区にある作業場は、斜面に寄りそって建つ、元牛舎の2階部分。裏から地続きで出入りができて、まるで秘密基地の入口。そして中は、まるごと大きな道具箱のようです。 
 
「組手(くで)」の技法で作るボックス(写真左)、「曲げ」の技法は椅子の背もたれの部分を作るときに使いますが、ストーブで沸かした湯から発生させた蒸気を手製の蒸らし器に集め、木材をその中で蒸らし、曲げます。(背もたれ・写真上) 
 
 
こんなものを発見。ポリタンクのふた!「ふたがなくなって」と奥田さん。このふた、木なのに、開けるときに「ぽん」と音がするほどぴったり。たまたまピッタリなのではなく、このために作ったそうで、なるほど。 

 
ナラ、タモ、栗、桜、メープル、トネリコなど、材料の木は特性を生かし、適材適所で使用。「理にかなった場所に使います」 
固くて頑丈な木もあれば、ほんのり赤っぽい風合いのもの、また柔軟で粘りの強いトネリコは折れにくいので細い部分に。 
杉は殺菌力が強いなど、強度や色味以外の要素も製作する上で頭の片隅にあるようです。 
 
「家具の中でも、椅子は、(人の)全ての感覚で感じられる面白い家具だよね」 
と奥田さん。 
 
この椅子に座ると、椅子と身体の密着した面から、すうっと体に馴染んでくるような感触があります。 
 
「自分と椅子」ではなく「あれ? これ、自分の椅子?」と思えてきてしまいます。 
 
木の固さを感じないばかりか、木というのはこんなに柔らかなものだったのか、とおどろきます。
 
そしてこの椅子、草の上が似合います。 
 

 

 
奥田さんの手で作られた家具は、樹木として地面に立っていたときの記憶を、 
今も忘れていないのだと思えました。
 

 

奥田忠彦 奥田家具製作所:電話 080-5594-0471 
参考:椅子1脚 5万〜9万円/テーブル(大)38万〜 

※記事の内容は取材時の情報に基づいています。  

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