人間力! 大滝の人・白戸和夫さん/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび


◆ 人間力! 大滝の人・白戸和夫さん ◆
掲載日:2017.04.29 [1611]

 
伊達市大滝区在住の白戸和夫さんは、 
アイスプラントやオイスターリーフを独自の方法で栽培しています。 
 
 
アイスプラントもオイスターリーフも、 
まだ栽培方法が確立していないため市場では貴重な、珍しい野菜。 
 
白戸さんが試行錯誤でこの植物の栽培方法を見つけたのは、 
その生き方から導かれた積み重ねの結果だとも言えそうです。 
 
白戸さんは若い頃、組子職人として修行しました。 
組子細工は、日本建築特有の装飾技法で、 
欄間や障子、飾り戸などの建具に施される伝統の細工。 
設計力や、それに従った細やかな正確さ、そして根気のいる仕事です。 
 
 
富良野市で職人として独立してからの約30年間は、 
「何でもやったよ。自営業だからね。建具を作ったり、御用聞きみたいなことや、包丁研ぎとか」。 
またそれだけではなく高山植物が好きだった白戸さんは 
山野草の栽培と販売も始めています。 
 
 
新感覚の野菜と言われるアイスプラントとオイスターリーフも、 
実は、昔から自生する野草で、今もその姿を変えていない植物。 
 
 
アイスプラントは、 
日本に自生するツルナの仲間で、 
南アフリカ原産の多肉植物。 
海岸などに自生し、耐塩性が高く、種(実)は海に浮かんで離れた島に渡り芽を出して繁殖。海水に強く、塩を含んだ水をそのまま体に取り込み、独自の細胞で塩分を隔離。 
その薄膜の細胞の様子は、葉の縁や表面にきらきらした水泡のように見えてきれいです。 
 
体に塩分が入ってきたり、地面の乾燥が進むなどのストレスを受けると、一般の光合成とは違う型の光合成の能力が発動され生き延びるという力も持つ、スーパー植物なのです。 
 
葉を食べてみると、思ったより、かなりしょっぱい! 
サクサクとして良い歯触り。きらきらが弾けるプチプチ感もあります。 
 
津波などで塩害を受けた畑での栽培の可能性など、この特殊な生態は学術的な注目も集めているそうですが、 
白戸さんがこの植物を育てようと思った理由は、 
 
「血糖値が高くてね」。 
 
自分自身が食べたかったから、という動機。 
単純明快!純粋です。 
血糖値を下げる効果があるピニトールや、中性脂肪を制御するミオイシノトールを含むのだといいます。 
 
「富良野ではうまく育たなくてね。気候や気温のせいだろうね。こっちに来てからは、有珠の海岸に行って海水をくんできて水やりしてるんだよ。土も普通の土はダメだね。海岸の荒い砂や軽石を混ぜたり、ホッキの貝殻を拾ってきて砕いたものを混ぜて作ってる」 
 
地道な観察と、独自の工夫で挑戦を続けているアイスプラントの栽培は今年で8年目。
 
 
オイスターリーフは、 
スコットランド海岸沿いに自生する、ムラサキ科の多年草。「寒さに強いから、ここでも越冬するよ」と白戸さん。 
 
日本では山野草として有名どころのハマベンケイソウとほぼ同種。青みを帯びた葉も、咲き始めピンク色でブルーへと変わる、その花の美しさも日本のものにそっくりです。 
 
そしてオドロキの点は、やはりその葉の味。 
葉をちぎって「食べてみな」と渡されました。オイスターリーフは牡蠣の味、というのは知識として知っていたので、どんな味なのか少し予想ができました。 
だが、しかし! 
 
それは「ちょっとそんな風味がある」などという程度ではなく、全く本当に、予想をはるかに超えてオイスター!噛んでいると、野菜を食べているはずだという感覚が狂ってぐるぐるコンフューズド! 
もうそれはナマモノでありナマグサさを感じるほど揺るがぬ牡蠣味なのです! 
いやあ本当にびっくりしました。 
 
野生のきびしい環境で生きている植物なので、種ができても発芽率は低く、何年も経ってから発芽する種もあります。それを根気よく発芽させ繊細に育てる過程は山野草と同じ。その経験があってこその栽培です。
 
栽培メモを見せてもらうと、その細かいこと! 
白戸さんならではの工夫と、そして根気強い実践・・・。 
 
それは植物に対してだけではありません。 
白戸さんのアート作品にも同じことがいえるのです! 
 
上部の黒い小さな点々は黒タンの木がはめ込まれたもの。 
吊り下げられた球や、四角いもの。 
曲線と直線。規則正しさとランダムさ。 
この同居がなんて美しいのでしょう! 
どことなく、不思議な植物のようでもあり、生き物や細胞を連想させられます。 
 
エゾマツを使用した作品。同じ形の木片を配置して。瞳のよう。 
 
どちらも川底から引きあげた泥流木を使用。 
大きな作品。組み立て式!(普段は小さくまとめてあるそう) 
 
北海道十勝岳の泥流推積物と、 
川底の地下から出木した埋木石化する前のナラの「神代木」を使用。 
木製なので火をつけると、これ自体、燃えてしまう!というユーモア。 
 
たくさんの「雪の結晶」は、組子細工を思わせる。 
 
年月をかけて自然が作り上げたものに限りない興味を持つ白戸さん。 
作品ほぼ全てに自分で見つけた自然材料が使われています。 
 
 
 
白戸さんは山や川に行った時、そして海岸でも、興味をそそられる素材があると持ち帰ります。 
 
アイスプラント栽培のために通っている有珠の海岸で見つけた流木や、波で研磨された石が、ハウスの隅に積まれていました。 
これらは新作に使われる予定。 
 
作品に使われている埋木(うもれぎ)のほとんどは富良野川の水底に眠っていたもので、河川の工事などが行われると出てくるのだと言います。 
 
作品の発想はどんなときに生まれるのかたずねると、 
 
「夢で見たり、何かの拍子に思う浮かぶんだよ。 
夢で見たときは起きたらすぐに広告のウラに設計図をメモしておくんだけど、最近ウラが白い広告が少ないから全部使ってしまって」 
 
実際に作品にするときは改めて図面を書き、細かく寸法を計算します。 
 
「設計図がないと作れるものじゃないからね」。
 
独自の工夫と、設計力と、根気ある実践。 
それがオモシロ人間・白戸和夫さんの、力。 
 

このページに掲載したアート作品は全て販売することにしたそうです!
ここに掲載していない作品もありますので興味有る方は下記まで連絡を。

白戸さんの新作「渦潮の浜辺」(立体造形)が見られます。 
10月9日 カルチャーセンターロビー(シルバー人材センター主催「趣味の会」展示会) 

匠の大地 白戸和夫
北海道伊達市大滝区優徳町73 
電話0142-68-6747 

 
※記事の内容は取材時の情報に基づいています。(取材2016年)  

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