空師のしごと 三浦真悟さん/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび


◆ 空師のしごと 三浦真悟さん ◆
掲載日:2017.04.29 [2181]

 
 
「空師(そらし)」とは、 
林業の仕事の中でも、 
ロープを使って木に登り樹高で伐採や枝打ちをする人のこと。 
「空に近い仕事」がこの言葉のゆえん。 
 
豊浦林業(株)の三浦真悟さんは 
林業の通常業務に比較的余裕のある冬の間、 
特殊伐採を手がける空師として仕事をしています。 
(写真:伊達市清住町「NPO法人いきものいんく」の林にて)
 
 
<特殊伐採> 
 
立木を横倒しにしない方法で伐採するのが特殊伐採。 
狭い敷地の民家や、電線などがあるため簡単に木を倒すことのできない場所で、この特殊伐採の技は生かされます。 
 
大きな木となれば枝とはいえ一本でも200キロを超えるものもあります。狭い場所ではその枝が落下すると家屋などを破壊してしまう恐れもありますし、電線などがあれば切断してしまいます。倒さないだけではなく落とさないことも肝心です。 
 
三浦さんの仕事で使うものはロープと道具だけ。 
 
 
三浦さんがまずはじめに行うことは、狙いをつけてスローウエイトを放り投げ、目的の場所にガイドとなる紐(スローライン)を引っ掛けることからはじまります。 
一見簡単そうで、子供の遊びのように見えましたが、もちろんそう簡単ではありません。 
 
「これもかなり練習したんですよ。有珠山の林なんかで」。 
 
このスローウエイト、自分でも活用できそうな気がして無用にじっと見つめてしまいました、、、とどかない枝の栗を穫るときとか。 
 
さて、次に、ガイドをたぐり、木に固定するクライミングロープなどをかけます。 
 
解けたりズレたりしてはならない木の幹に固定するこのロープ、 
幹の根元に固定する箇所をボトムアンカー、上部をトップアンカーというそうで、ロープの種類なども加え専門用語がいっぱいです。
 
 
もちろん体を支える命綱もロープ。 
三浦さんの腰まわりにはランヤード(胴綱)や、 
必要な装備が。
 
 
 
倒さず落とさない伐採では切った幹や枝が落ちずに吊り下がるよう配慮したロープも張られます。 
遠くに見えるのが三浦さん。手前にいる方のところまで斜めにロープが張られており、切り離された枝はこのロープに吊り下がって、ロープウェイのようにこちらに滑り降ろされます。 
 
 
木肌に傷をつけたくない白樺の枝打ちでは、スパイクのついた道具などは履かず、ほぼ完全にロープで吊りさがったような、別の手法で登ります。 
 
<力学> 
 
木の幹、枝、空師は、何本かのロープでつながっていますが、 
これらのロープワークには力学が応用されており、時には周辺の樹木も利用して安全で効率的な伐採を目指します。 
 
「ロープや、プーリー(滑車)の使い方で、力がなくてもスルスルっと登っていける方法もあるんですよ」と三浦さん。「加えた力が何倍にもなって働きます」 
 
ロープの結び方は位置や用途によって違います。 
体を支えたり、昇り降りするための重要な箇所、クライミングロープと胴綱をつなぐのは「プルージック」という結び方。 
体重によってがっちりときつく締まって動かない結び目は、ある一点の箇所を指で少し操作することで簡単に緩み、ロープを滑らせることができます。(下の写真左) 
ロープと結び目の特性と体重を利用した、これも力学なのです。 
 
力学的に重要な役目を果たす滑車などの点検を、三浦さんは怠りません。たった小さな不具合でも命に関わることがあるからです。 
 
「道具はGMクライミング社のものを使っています。無骨ですが信頼性があります。欧州安全規格というものがあって、それをクリアした用具なんです。使用して気になることなどフィードバックしてもらうこともあり、お世話になっています」
 
 
 
ロープの結び方や、これらの用具は、ロッククライミングや消防・レスキューなどで使われるものとほぼ共通しています。特にヨーロッパでは「ツリークライミング」「ツリーイング」がアウトドアスポーツとして流行っているそうです。 
 
<高いところに登ると> 
 
現在伊達市在住の三浦さんが、大工さんの仕事を見かけて心を惹かれ見習いに入って仕事をしていたのは室蘭でのこと。そんな頃に林業事業体との縁があって、もともとアウトドアが好きだった三浦さんはフィールドでの仕事が多い林業の道へ。 
 
豊浦林業(株)に入ってから、通常業務と並行して、特殊伐採について独学で勉強しはじめました。 
 
木に登ることが好きなんですか?という問に、 
「好きですね。登るのは楽しいですが、高いところでは思考が鈍るんですよ。どうしてかわからないんですが。だから地上で計画し、何度もイメージトレーニングしたり安全確認してから登ります」。 
 
高いところが好き過ぎるのか、それとも人間の本能的、肉体的な何かの反応なのか? 体の中で何かが起きていることは間違いないようで、 
「よくパイロットが「飛行時間〜時間」で熟練具合をはかったりしますよね。これはそういうことなのかもしれないと最近思うんですよ。もっと経験を積むと何かが変わってくるのかもしれないです」。
 
 
 

 
三浦真悟 豊浦林業(株)  
北海道虻田郡豊浦町大岸135-19 
TEL: 080-7837-6610 
むしゃなび内発信のページ
 
こちらの動画では 
スローウエイトを放り、登り、枝を払う様子を見ることができます。
 
 

CM、特集制作、うけたまわり中! 
※記事の内容は取材時の情報に基づいています。(取材2017年)  

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