むしゃなび特集/2006年1号/伊達市室蘭市を含む西胆振のポータルサイトむしゃなび

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■ むしゃなび特集 2006年1号 ■
むしゃなびお正月特集 お雑煮を楽しもう! [2/4]
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亘理伊達藩伝来のお雑煮

 北海道は、さまざまな地域から開拓に伴って人が集まってきたという歴史をもつ。人が移動するということは、それぞれの地の文化も一緒にもってくるということ。伊達のお雑煮には、塩鮭の汁に角餅が入り、車で20分程の隣町の壮瞥では、四国は阿波から来た人たちがあん入りの丸餅のお雑煮をつくるという。これも北海道ならではのユニークな食文化といえそうです。
 ところで、伊達のお雑煮ってどんなのだろう?
 伊達ならでは、亘理伝来のお雑煮の味を教えていただくため、亘理伊達家の菩提寺である大雄寺に伺いました。

 大雄寺は伊達市内の中心地にある曹洞宗のお寺。伊達家の菩提寺として知られ、亘理藩の開拓にまつわる仏像や遺品を数多く展示する歴史的資料の豊富な宝物殿や、どなたでも静かに参禅できる座禅堂があり観光ルートのひとつになっています。境内には、地元の人々に愛される湧き水があり、いつ訪れてもこの水を求める人の姿を見かけます。
 
 今回、大雄寺の奥村孝善住職のご紹介で、伊達市長和町にお住いの、宮城県人会伊達会会長の清野一夫さん、敏子さんご夫妻にご協力いただき、伊達に伝わる亘理のお雑煮を作っていただきました。
清野さんは、宮城県知事に認定された宮城夢大使のお一人。宮城との地域交流に長年力を注がれています。
 その清野さんによると、亘理地方はかなりの「餅好き」なお国柄。新米がとれる頃になると、餅をつく音が響き、一軒がつき始めると、次々と近所の家々が餅をつき始める様を「はやりもち」と言ったとか。何かある時には餅をつき、青畑豆の打豆(ずんだ)、小豆のつぶ餡、こし餡、納豆、きな粉、くるみ、ごま、川魚のはぜ、などで餅をあえるそう。
 これらが小皿にのって一度に出されるので、餅のフルコースと呼ばれています。すぐにおなか一杯になりそうですね。

ずんだ餅
 清野さん宅では夏のうち青い豆を冷凍しておき、年中ずんだ餅を楽しまれるそうで、取材時にももってきてくださった。豆の香りとつぶつぶとした食感が美味。

かために茹で上げた青豆をすりこぎでたたくことから打豆(ずんだ)と呼ばれる。

 さて、亘理伝来のお雑煮は、かなりの具だくさん。塩鮭、豚肉、鳥肉、大根、人参、ごぼう、糸コンニャク、しみ豆腐、かまぼこを細かく切って、昆布と鰹のおだしでやわらかく煮ます。トッピングにイクラを乗せて、見た目も豪華。たっぷりの大根など根菜類の甘味と、塩鮭、お肉などの味が複雑にからみあって、じんわりと心温まるお味です。
 たっぷりの昆布に鰹で出汁をとり、具をたくさん入れて煮込みます。野菜を加え塩鮭を加えたところで「ここで神仏のお供え用に取り分けておくのを忘れずに」と清野さん夫妻。その後お肉を加え、煮続けます。
 
 調味料はお醤油のみ。清野さんのお宅では、お醤油にもこだわって、伊達成実公ゆかりの亘理城趾にある味噌醤油蔵からお醤油を取り寄せていらっしゃるそう。
 この城趾の土地を味噌蔵に売ったお金を、伊達の開拓にあてたんだ、と清野さんからお聞きして、遠い開拓の話がぐっと身近に感じられました。ちなみに、このお醤油は黎明館で販売されているそうです。
 つくつと煮えてきた大鍋にこのお醤油を加えながら、「塩鮭から塩味がでてくるので、薄味に仕上げる事が大切ですよ」このお雑煮づくりのポイントを教えてくださいました。敏子さんは、何度も何度も味見を繰り返し、その都度夫の一夫さんに意見を求めます。毎年毎年この光景を繰り返してきたんだろうなあ、とほほ笑ましくも印象的な一時でした。
 「この雑煮はね、後になればなるほどうまいよ」と一夫さんがおっしゃるように、さまざまな具より味が出て、日に日に変化していくのも楽しめます。作る時は大量に作ってみてはいかがでしょうか? ちなみに、清野家では元旦、二日、三日の朝はお雑煮を七日の朝には七草がゆをいただくと決まっているそうです。
 もうひとつ、清野夫妻に、簡単でおいしいお餅のいただき方「お湯餅」を教わりました。
 まず、塩鮭のアラを塩をつけたままよく焼き、どんぶりに入れます。そこにお湯を注いで、焼いたもちを入れ、醤油を少々たらすだけ。昔のインスタント雑煮?のようですね。
 みなさんも伊達の味を楽しんでみてくださいね。
亘理伝来のお雑煮
材料
<だし>
昆布 削り節 
大根、人参、ごぼう、糸コンニャク、しみ豆腐、かまぼこ
塩鮭、豚肉、鳥肉

セリ、イクラ
しょうゆ
作り方
1 だしをとる。(昆布をつけしばらく置き、火にかける。沸騰する前に昆布を引き上げ、削り節を入れ、しばらくして濾す)
2 すべての材料(塩鮭、肉も)を細かく千切りにする 
3 1のだし汁に千切りにした野菜を加え、やわらかくなるまで煮る。
4 塩鮭を加え煮る (神仏にお供えする場合はここで取り分けておく)
5 豚肉、鳥肉を加え煮る
6 醤油を加える。
7 もちを焼き、汁にくぐらせ、やわらかくした後、腕にもる
8 汁を加え、セリとイクラをトッピングする
●ポイント
豚肉は肩ロースすきやき用を、鳥はもも肉の皮と脂は取り除いてつかう
 塩鮭から塩気がでてくるので、少し薄味に仕上げておくこと

DATA
宗教法人曹洞宗 大雄寺
伊達市 元町18
TEL/FAX 0142-23-2171
むしゃなび内 大雄寺


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