■ゾンビ
私の中で、ドラキュラに噛まれて死ぬ、フランケンシュタインに首を捻られて死ぬ、狼男に首筋をかっ切られて死ぬ、ゾンビに襲われて死ぬの中で、一番避けたいというか、嫌なのはダントツに”ゾンビに襲われて死ぬ”なんですが、皆さんはいかがでしょうか?(笑)たぶん同意見がかなり多いと思うんですけど?それくらい、映画のゾンビというか、「ドーン オブ ザ デッド」のインパクトは強烈だった訳で…。そもそも、私たちが抱くゾンビのイメージって、”半分体が腐っていて足を引きずるように歩き、唸り声を上げながら人を襲う”といったものですよね?
実はコレは映画やゲームの世界でのスタンダードなイメージであって、ヴードゥー教のいうところのゾンビとは、定義がかけ離れているらしい…。実際はヴードゥー教の法体系によると、ゾンビとは刑罰の一種で、殺人罪等の重罪を犯した者やコミュニティの掟を破った者への制裁処置だったようなの…。
ヴードゥー教は、元々アメリカ開拓の際にアメリカおよびカリブ海地域に奴隷として売られたアフリカ人と共に渡って来たナイジェリアのヨルバ族の精霊信仰「ジュジュ」とカトリックとの習合によって出来た民間信仰のようで、強制連行先でカトリックと出会ったジュジュは、徐々にカトリック化して行き、キューバではサンテリア、ブラジルではカンドンブレとして、カトリック的な要素を組みつつ広まって行って、ハイチに定着してヴードゥー教となった。ブードゥー教の教えは霊的なものに対する信仰のほか、生活習慣や道徳、教育、哲学、法体系にまで及んでいるんだけど、このヴードゥー教で信じられているものがゾンビですよね。このゾンビ死者が蘇る!ちゅうのは、ちょっと違うみたいでさ、ゾンビは”ゾンビパウダー”なる劇薬で作るというか、生きた人間を廃人状態にするものらしい…。

さて、ヴードゥー教社会で人間をゾンビ化させる事は、「空気の術(クー・レール)」あるいは「粉の術(クー・ブードゥル)」と呼ばれており、その際に使用するのが、ゾンビを作るゾンビパウダーなんだけど、術を執行する”ボコール(魔術師)”を兼ねるウンガンによって作られるこの”薬”は、トンベ・ルヴェやティレ・ボナンジュ等、いくつかの種類が存在しているらしいのだけど、基本的な効果や製法は、ほ同一とされている。
この劇薬というか毒薬の材料は、昆虫やトカゲ、ムカデ、タランチュラ等の実際に目にした時にあまり歓迎出来ない生物のほか、毒性の強いフグが用いられる!これらをすり潰して混ぜ合わせ加熱した後、仕上げにトゲや針、毛を持つ植物(ママン・グエペ、マシャシャといったもの)を加えて(代替品にムクナ・ブルリエンスという豆や細かく砕いたガラス片を加える事もあるという)完成!となるんだと…。
その使い方は、飲ませたりするのではなく、顔や体に吹きかけられる事のほうが多かったようで、ゾンビパウダーは成分、製法から見ても解るように、非常に毒性が強い!食べさせたり飲ませたりすると、わずか17分ほどで死亡したという例があるほどの劇薬!ゾンビ化させる対象者の体にトゲ等で傷をつけておき、そこに目がけてパウダーを吹きかけたり擦り込んだとされている。
前述のように、ゾンビパウダーの主成分はフグの毒(テトロドトキシン)だから、フグ毒中毒に酷似している。毒が効力を発揮し始めると、軽度の麻痺を発症し、すぐに激しい痺れに移行して行く。麻痺は全身に広がり、触角が機能しなくなって、浮遊感を覚えるようになると、次には呼吸困難に陥り、手足の先から血の気が引いて、全身が青白くなって行く。声も出せなくなり、全身も動かなくなって、ついには、脳死の状態になるそうだ…。

ゾンビに襲われるのはえらい怖いけど、ゾンビにされるのもかなり怖いですね。