■♪秋の夜長はクラシックで(3)~チャイコフスキーの名曲を聴く(試聴付)。
今週になり,急に寒くなりました。 秋を超えて冬がやってきそうですが…。
今日は聞いていて暖かく…いや,熱くなるチャイコフスキーの交響曲をご紹介します。
チャイコフスキーは,名作と駄作の落差の激しい作曲家だと思います。
例えばきっと皆さん一度はお聴きになったことがある,
ピアノ協奏曲ですが,「第1番」ばかりが演奏され,
CDでも発売されます。
「第1番」ということは,「第2番」も?
ということになりますが,実は「第3番」まで作られていますが,もっぱら「第1番」のみが脚光を浴びています。
「第2番」は一度ライブで聴いたことがありますが,
生演奏でこそ派手派手しい曲で聴き応えがあるものの,
CDなどで繰り返し聴く音楽ではないように思えました。
また,時代を先取りしていた作曲家であるのかも知れません。ピアノ協奏曲第1番も,また有名なヴァイオリン協奏曲も,また今日ご紹介する,交響曲第6番「悲愴」も初演の際には酷評され,「演奏不能」などと言われることもしばしばでした。
…と言う訳で,チャイコフスキーの交響曲と言えば,
もっぱら,後期の3曲が注目されます。
そして,彼の交響曲は第3楽章が変わっていますので,これもポイントです。
まずは「4番」。ほとんどがピッチカート(弦楽器の弦をはじく)奏法で演奏される第3楽章から,これぞオーケストラ!と言う感じのフィナーレが圧巻の曲です。
この曲のお勧めの演奏はエフゲニー・スヴェトラーノフ指揮のロシア国立交響楽団の演奏です。
迫力満点,オーケストラを鳴らすだけ鳴らしきったという演奏です。AMAZONで比較的安価に入手可能です。
そして一番演奏される機会の多いのが「第5番」。
「絶望から歓喜へ」というベートーヴェンの第5番「運命」や9番の「合唱付き」と共通のテーマを持っているように思われます。この第3楽章は5拍子で,イマイチ乗り切れないいびつなワルツです。
そして迫力の第4楽章が聴きものです。
この曲はワレリー・ゲルギエフとウィーン・フィルによる,1998年のライブ録音がお勧めです。
ウィーン・フィルは世界で1,2を争う名オーケストラですが,団員の団結力と自己主張が激しく,指揮者との相性によって,演奏の良否が極端に出てしまうオーケストラと言われています。(そこが,誰が指揮しても名演にしてしまうベルリン・フィルとの違い)。
この演奏が素晴らしいことは,聴衆の盛大な「ブラヴォー」が物語っています。
YOUTUBEで探したのですが,ゲルギエフが音楽監督を務めるマリンスキー劇場管弦楽団の演奏のものがありました。この映像では,ゲルギエフのダイナミックな指揮もさることながら,演奏が終わるに近づくにつれ「名演」を確信したコンサートマスターがニコニコと笑顔になっていくのが見ものです。
彼は札幌で開催されるパシフィック・ミュージック・フェスティバル(PMF)で,2004年と2006年でも,この「第5番」を用いて指導,演奏しています。彼の十八番なのでしょう。
そして最後は第6番「悲愴」。
これは第3楽章が勇壮なフィナーレであり,
第4楽章は沈鬱なメロディがつぶやくように終わっていきます。
この曲の初演後,チャイコフスキーはわずか9日で,彼は亡くなっており,
「死を予期したのか?」,(死因はコレラと思われる),
「スキャンダルの発覚を恐れて,自ら命を絶つことを意識してこの曲を書いたのか?」,
など様々なことが言われていますが,
明確なことは分かっていません。
これは,エフギニー・ムラヴィンスキーのレニングラード・フィルハーモニーの演奏がお勧めです。
正確無比,カミソリのような切れ味の鋭い演奏です。
レニングラード・フィルハーモニーは1977年に室蘭で演奏会をしています。(会場は新日鐵体育館)。
コンサート・チケットが子供のわたしからすると信じがたいほどに高額で,さすがに「行かせて」と親に言えなかった記憶があります。確か一番安い席が7000円だったと思います。
今からすると世界で超一流のオーケストラが室蘭で演奏会をすることなど信じがたい事ですが,
それだけ70年代の室蘭は活気があったのですね…。
蛇足ですが,バブル景気後期のころには,ロンドン交響楽団が室蘭文化センターで演奏会を開いたことがありました。当時はNHK交響楽団,日本フィルハーモニーなどが,毎年のように室蘭で演奏しており,生演奏を親に聴かせてもらったので,今,音楽好きになったのだと思います。今は札響すら滅多に来ません…。
話がそれましたが,この「悲愴」の録音は,1960年のヨーロッパ楽旅の際に,ウィーンで録音されたもので,今聴いても音は新鮮です。
当時,社会主義国のオーケストラの演奏は「鉄のカーテン」の背後で,一部のマニアにしか知られていないものだったようです。
考えてみると,わたしは,チャイコフスキーのスキャンダルやら,社会主義の矛盾などを,レコードのジャケット裏の解説からお勉強していた大変な「ませがき」(1977年当時12歳)だったと思います。
これからの時期,暖かいストーブを背に,じっくりと聴くのにふさわしい三曲です。
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