■川俣温泉の旅(2)
宿の近くに間欠泉がある。
歩いても15分くらいと聞き、朝食前に行ってみた。
前夜の宿の主人の話で、「間欠泉は1時間に1度ほど吹き上げる。
でもその時間もハッキリしない。もっと時間が掛かる時もある」と聞いていた。

現地でかなりの時間を待つ覚悟で、寒さ対策で厚着をして出掛けた。
午前6時5分に現地に着いたら間欠泉の展望台があり、そこから見下すように出来ている。2ヶ所くらいから蒸気が上がっているのが見える。
「あそこから吹き上げるんだな」と思い、カメラを構える。

いつ吹き上げるのか分からないので、油断が出来ない。
20分も経った頃に地元のオヤジが散歩のついでに立ち寄って、私に話し掛けて来た。
オヤジ「吹きあがったか?」
私 「20分くらい待っているが、まだです」
オヤジ「あなたの狙っているとこは違うよ。その隣のコンクリートの上の鉄格子の真ん中だよ」

私はてっきり蒸気の上がっている場所だと思っていたので、このオヤジの助言はありがたかった。
オヤジは去って行ったが、まだまだ吹き上がらない。カメラの焦点を外してしまった時に吹き上がったら、今までなんの為に待ったのか分からない。寒いのを我慢しながら、ひたすら待つ。

45分くらい経った時に急に蒸気が出て、一気に間欠泉が吹き上がった。カメラのシャッターを連写する。 画像を横から縦にする。
高さが20メートル以上にもなった。固定焦点にセットしなかったことを悔やむ。
5分くらいで間欠泉ショーは終った。でも、誰も見に来ていない。

旅館に戻り、朝食後にもう一度、帰り支度のスタイルで間欠泉に行く。
間欠泉の吹き上げを見てから、バスで終点の女夫渕まで行く計画である。
40分待ったが間欠泉は吹き上がらなかったので、仕方なくバスに乗った。終点の女夫渕は駐車場とトイレだけで、何もない。
この先は一般車は通行止めである。

通行止めの道からマイクロバスがやって、気が付いたことがあった。
マイクロバスは「八丁湯」と「加仁湯」の車だった。
50年以上も前に、小学校の友人達と八丁湯に行って、3日間も麻雀をして過ごしたことがある。
その頃は「ランプの宿」と言われていて電気も無く、歩いてしか行けない秘湯だった。
日本中から秘湯が無くなり、温泉好きの私としては寂しい限りである。

(おまけの話)
前夜は疲れていて、午後8時30分に寝てしまった。
国民宿舎という宿は布団は自分で敷く方式なのであるが、それも億劫になるほど疲れていた。
いつもの習慣で、6時間も寝ると目が覚めてしまう。
そして午前3時に目が覚めた。

こんな早くに起きてしまうと、家と違い全くやることが無いのが困る。
仕方ないので、露天風呂に行く。
節電の為に真っ暗で、通路も自分で電気を点ける。
風呂場に行って電気を点け、その先の露天風呂への通路の電気を点ける。

山の夜は寒い。冷たい外気で、真っ暗の中で1人静かに露天風呂に浸かる。空を見上げたら、満天の星だった。
温かい湯、冷たい外気、満天の星。こんな気持ちの良いことは無い。
夕食は冷たくて不味い。夜具は煎餅布団。PCくらいの大きさのテレビ。
これ等をみんなすっ飛ばすくらいの、上出来の宿だった。
