■引退して良かったこと
仕事から引退して、既に16年が過ぎた。
もう仕事のことは、夢にも出て来ない。
今は人生の残り時間を、あと1年、あと2年と数える境遇になっている。
最近の私の心配事は自分のことではなく、これから人生をやって行く日本人のことである。
政治、経済、社会など、なにを取ってもあまり明るい話題が無いように見える。
晴海ふ頭に停泊している巨大な自動車運搬船「MARVELOUS ACE号」
私の子供の頃は欲しいものは何も手に入らず、欲しいものだらけだった。食べ物もそうで、「お寿司を食べてみたい」、「すき焼きを食べてみたい」など今なら無理をしないでも食べられるものばかりだった。
麦の入らない白米を食べられるようになった時は、「銀シャリだー!」と喜んだものだ。
海上保安庁 巡視船「いず」
引退して良かったことに付いて、改めて考えてみた。
今の状態が当りまえになって長いので、あまり深く考えたことが無かった。
一番良かったことは「嫌な人と付き合わないで済む」で、これがなにより嬉しい。仕事をしている時は嫌な人にもお愛想を言い、心にも無く笑顔を振りまいた。
「いず」の操舵室。
次に良いことは、「いつでも、どこへでも行ける」であろう。
私は写真が趣味なので、現役の時のような週末の混雑の時を避けて、一番良い時期に出掛けることが出来る。雨が降れば、翌日に延ばすことも出来る。しかも宿泊を伴う場合は、旅館やホテルが安い。
船上劇場「STU48号」は見学不可。公演チケットを買った人だけ入船。
・・・と良いことを書き並べている時に、晴海ふ頭で「海の日」のイベントがあることが分かった。
時々、マンション裏の運河で東京消防庁の港湾消防署の署員が水上バイクで運転の練習をしているのを見掛けていたので、この日の為の練習だったのかもしれない。これは船の火災で海に落ちた人を救う訓練のようだ。
JAMSTEC 学術研究船「白鳳丸」。
この日も相変わらず梅雨は明けず、最近は太陽を見る日がほとんど無い。曇り空の中を歩いて晴海ふ頭に向かった。
晴海ふ頭に近付くと、巨大な自動車運搬船が停泊しているのが見えた。
隣には海上保安庁の巡視船「いず」が見える。
白鳳丸の操舵室。
身分証明書を確認されて、「いず」に乗船する。
かなり老朽化している感じがする。隣は「船上劇場STU48号」で、AKB48の姉妹グループのSTU48というのが瀬戸内海の船の上だけで公演しているのだそうだ。
その隣は学術研究船「白鳳丸」で、この船がマリアナ諸島南方で鰻の産卵地点を発見したのである。
非常時脱出用のボート。
(おまけの話)
このイベントは毎年、行われているが、その中で商船三井所有の自動車運搬船である「EMERALD ACE」の一般公開があり、今年はこれを見に行くのが最大の目的である。
この船は時々、大井ふ頭に停泊しているのを見掛けていた。
「船内はどうなっているのか?」がとても興味があった。
晴海ふ頭の端から端までの巨大な自動車運搬船。
イベントの日にちが近付いて来たので、HPを開いて自動車運搬船を再確認した。そして驚いた。
なんと「事前登録受付終了」と出ているではないか!
私が以前に見た時には、「事前登録が必要」とは出ていなかった。
腹が立つが、それをどこでぶつけていいか分からない。腹が立つなー!
巡視船「いず」の操舵室から見た「自動車運搬船」。
もしかして現地に行けば入れてくれるかもしれないと思い、他のイベントはつまらないと分っているのに出掛けて行った。
受付で「気が付いたら、事前登録が締め切られていた。欠席の人もいるだろうから、特別に入れてくれ」と頼んだが、聞き入れられなかった。
引退して「いつでも行ける」のに、これは「いつでも」というわけにはいかなかった。仕方ないので乗船して行く人達を遠くで眺めながら、写真だけを撮ったのである。
指をくわえて乗船する人達を見る。