■秩父路ひとり旅(1)
『小人閑居して不善をなす』とは昔の人はうまいことを言ったものだ。まさにその小人とは私のことである。 時々、不善をなしている。
不善をなさない為には自立しないといけない。
その為には自分のことは自分でするのは基本として、空いた時間の使い方を自分で考えないといけない。
最近、引退して時間を持て余しているY君を誘って秩父の長瀞に蝋梅を見に行く計画を立てた。
北海道には無いかもしれないが、狼狽ではない。
その旅で私はY君に老後の自立の生活をレクチャーしようと考えていた。
ところが、私と天気予報の都合に合わせて日程を組んだら、Y君はその日は都合が悪いと言う。
決めたことなので、仕方ないが1人で行くことにした。
国分寺駅から西武線を4回乗り継いで、西武秩父駅に出て、そこから歩いて秩父鉄道のお花畑駅に出て、そこから長瀞駅に出る予定だった。
秩父夜祭(西部秩父駅)
お花畑駅に行くと改札口に『三十槌の氷柱が今が見頃です。』と書いてある。
私は駅員に聞いてみた。『三十槌(みそつち)の氷柱とはなんですか?』
駅員『ここから三峰口駅まで行き、そこからバスで20分くらいのところにある素晴らしい氷柱です』と言う。
そこで急きょ目的地を変更して、先ずは氷柱を見に行くことにした。そこへ行くには最初の目的地である長瀞とは反対方向である。でも、そんな気ままな旅も一人だから出来る。
現地には何人かのカメラ愛好家が来ていた。
今は日本のどこにでも生息している。
三十槌の氷柱
この氷柱は川の北斜面の崖から湧き出る清水が寒い冬に凍って出来るそうだ。
『今年の冬は寒いので、特に綺麗に出ている』と素人カメラマンが教えてくれた。
目的地を変更して、思いがけず素晴らしい光景に出合えた。
三十槌の氷柱
(おまけの話)
三峰口駅から三十槌の氷柱を見る為にバスに乗った。
バスの運ちゃんに『降りる停留所になったら知らせてくれ』と頼んでおいた。
『ここですよ』の声で降りると、そこは停留所ではなく、三十槌の氷柱の前だった。
『帰りはどうすればいいの?』と聞くと、『ここで待っていて手を挙げるか、少し先に停留所がある』と言う。
写真撮影を終ったが、バスの時間表を持っていないのでバスの時間が判らない。
仕方ないのでバス停まで歩く。そこへ丁度、バスが来た。
乗ったらなんと、往きのバスと同じ運転手だった。
運ちゃん『早いですねー』
私 『写真を撮るだけだし、次を急いでいるので・・』
運ちゃん『私もカメラをやっていてねー』
ここから延々と運ちゃんのカメラと旅の話になる。
左手に見覚えのある蕎麦屋があった。
それは私が以前に財布を持たずに入ってしまった店であった。その時は既に注文をした後だったが、忘れたことに気づいてオヤジに『すみません。財布を家に忘れて来てしまったので、キャンセルして下さい』と頼んだ。あの時は恥ずかしかったなー。
その話を運ちゃんに言ったら、『それより西武秩父駅前の2軒ある内の左側の店の方が私は美味しいと思う』と言っていた。田舎のバスはのどかでよろしい。