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2025/01/30(木) - 暮らし
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あいつとの32年間の空白を埋めるために(2)
(2023年3月執筆) その後僕は父の期待を裏切り、 自分に正直に生きる道を選ぶと、 苦労する中で自分の視野がいかに狭かったかに気付かされた。 するとあいつがどうにも可哀想に思えてきた。 あの父親のもとで自分らしく生きることを否定され続けたあいつは、 異国の地に逃げて未だ彷徨っていたからだ。 また以前の自分のことを思うと、 なんか自分のことが嫌になった。 あいつと父の間に入って助けるどころか、 父と一緒になって批判していたのだから。 あいつが日本を出てから5、6年くらい経った頃、 仕事でアメリカに行く機会に久々にシアトルで会えた。 あいつはホームレスになっていた。 歯を痛めてひどく腫らしていたのに、 金がなくて治療もできないほどの状況だった。 僕はわずかばかりのお金をやったものだが、 このままじゃダメだなと思った。 しかし帰国を勧めても、 「自分には帰るところがない」 「アメリカの方が自分に合っている」 「いつかミュージシャンで成功するんだ」と 相変わらず強情で、聞く耳を持たなかった。 いつもどこかで現実逃避しているあいつを不憫に思いながらも、 その時僕は心の中で静かに応援することしかできなかった。 (つづく)
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2025/01/29(水) - 暮らし
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あいつとの32年間の空白を埋めるために(1)
(2023年3月執筆) 5歳下の弟とは 小さい頃によく一緒に遊んだものだが、 僕が中学生になる頃には、 友人たちと遊ぶ時にいつもついてくるあいつがだんだんとうっとうしくなってきた。 ベッド下に隠していた僕のエロ本を、 なぜかあいつが盗み読んでいるのを見つけてひどく叱りつけたのはその頃のことだ。 そうやってだんだんと生意気になってくる弟とは、 歳をとるうちに少しずつ距離が離れていったような気がする。 長男だった僕は父親の期待を受けて育った。 厳格な父は学歴至上主義の価値観で凝り固まった、 ある意味とても視野の狭い人だった。 僕はどこかで父の価値観に疑問を感じながらも、 彼の敷いた路線を走るしかなかった。 その結果、 僕はそれなりの学校を出てそれなりの会社に就職したことで、 父の期待に応えることができたと思う。 一方、弟は僕よりもずっと学業に向いていなかった。 中学時代に既にドロップアウトをしていたのに、 父に学業を強いられ、 結局3浪して受験に失敗。 そしてアメリカに逃げて行き、日本には帰ってこなかった。 その後不法滞在のままアメリカに居座り、 ミュージシャンを目指したあいつは、 しかしなかなか花開くことはなかった。 そんなあいつを、 僕は努力の足りない落ちこぼれだと評価し、 半ば軽蔑する感情さえ持っていた。 しかしそれは、 どこかで疑問に思っていた自分の生き方を正当化するためだったと思う。 (つづく)
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