■聴いてから見るか,見てから聴くか・・・。試聴できます。
おはようございます。 きょうは穏やかで暖かい一日になりそうです。
さて,何か大正漢方胃腸薬みたいなタイトルですが。
大好きな映画,「ラウンド・ミッドナイト」(1986年)の話です。
これは,パリに渡った伝説のジャズ・ピアニスト,バド・パウエルと彼の芸術性を理解して支援を惜しまなかったイラストレーターの実話がベースとなっています。
1960年代に入ってから,アメリカでのロックン・ロールの台頭,麻薬過による活動範囲の縮小(クラブで演奏するための「キャバレーカード」を没収される)などにより,大物ジャズ・ミュージシャンがフランスや北欧に大勢移住します。
この映画で主演を務めるジャズ・サックスの巨人,デクスター・ゴードン(ディル・ターナー役)もその一人です。
そして音楽の本質に迫るセリフの大半がデクスター・ゴードンのアドリブだというところがまた凄い。
印象的なシーンでは,ジャズ・クラブから逃げ出して,ゴミ置き場のようなところで,ディルが「ニュー・ヨークの秋」を吹いていて,そこで,「この続きの歌詞,なんだったかな?」って尋ねるところがあります。
当然なんですが,ホーン奏者も「歌詞」を大事にしなければならない,ということをこのシーンは言っているんだと思います。
字幕もないですがYOUTUBEでそのシーンがありました。
そう言えば,ドラマーのアート・テイラーのインタビュー記事(97年)でも,初めてチャーリー・パーカー(ジャズ界では「神」と称される)と共演したときに,
「君がしなきゃならないことはすべてのスタンダードの歌詞を覚えることだ。歌詞が分かればプレイしている間に自然とその歌詞の内容を考えるようになる。つまり,曲の内容にそぐわないプレイは間違ってもやらないですむ。歌詞を知っていれば,音楽に対して無礼なプレイはできない。他のミュージシャンたちも気持ち良く思えるプレイができる」
と言われたそうで,彼は頑なにそれを守っているとのことでした。
と言うことは,チャーリー・パーカーもそうしていたわけで,一聴,超難解な高速アドリブフレーズの中にも,「歌心」が溢れているのかも知れません。そういう耳でバードの演奏も聴いてみたいと思います。
この映画で印象的に演奏されているデクスター・ゴードンの印象的な名曲「ソサエティ・レッド」,これはブルーノートの「ドゥーイン・オールライト」(4077)でも聞く事ができます。
この映画は,(役者ではないジャズ・マン),ハービー・ハンコック,ボビー・ハッチャーソン,ウェイン・ショーターなどの「役者ぶり」も見事で,見所,聴き所満載です。もう30年位前の映画ですが,年に何度かは見たくなる映画です。