■マタギと稲を刈る
仏像展の時にイコロ農園のTさんから『9月30日に稲刈りをします』と言われた。 今年の作付品種は『ななつぼし』である。
その日の朝を迎えたら、絶好の稲刈り日和であった。
空は快晴で、気温もほどほどの暖かさで、頬に当たる風が気持ち良い。
9時にイコロ農園に行くと、既に大勢の人が来ていて、準備をしている。
オーナーのTさん、ガソリンスタンドのKさん、本職農家のSさんとお母さん、そして見知らぬ年配のオヤジがいた。
その後、Tさんの奥さん、イコロ農園メンバーのK女史も加わった。
今年は農家のSさんからお下がりの中古のコンバインが来ている。
昨年はあまりに古いコンバインであった為に、作業中に故障が多くて、その日の内に刈り取りが終らなかった。
その上、田んぼの小石を巻き込んでしまったので、食べた時に戦後の米不足の時のことを思い出して、嫌な気分になったのを思い出した。
今回は順調である。
3条刈りのコンバインは、正確に稲を刈り取って行く。
途中で運転手Tさんに後退したら、すぐに故障した。
これは操作ミスであることが分かり、すぐに直る。
そこでまた専門家のSさんに交代する。昼食を挿み午後からまた刈り取りをする。
順調に刈り取りが進む。
3時間で4反の田んぼの稲刈りが終った。
刈り取りが終ったところで、その米を長和のTさんの乾燥機に掛けてもらう為にトラックで運ぶ。
今年は豊作で、トラック輸送も2回となった。
米を乾燥機に投入すると、あっという間に機械に吸い込まれて行く。
これがなんとも言えず快感である。
これがひえ取りの辛さも忘れる一瞬だ。
乾燥が終ったことで計量したら、今年の収穫は1510キロであった。
昨年よりも600キロ多い。これだから米作りは止められないのである。
(おまけの話)
昼食となり、室内に入りテーブルに着く。
同じテーブルにあの年配のオジサンがいた。無口である。
紹介されたら、なんとそのオジサンは棟梁であり、マタギであると言う。
そして熊撃ちを得意としていたMさんであることが分かった。
私は聞いた。『今までに熊を何頭仕留めましたか?』
オジサンは『24頭だ』と言う。
無口なオジサンは熊撃ちの話になった途端、饒舌となった。
『若い頃は3回連続で1発で熊を仕留めた。その時は、自分は天才ではないかと思った』そうだ。
それが、次からは外し放しになったという。
動いている熊にはそう簡単に弾は当たらないそうだ。
その前に、そう簡単に熊に遭遇出来ないという。
そのオジサンから熊の肉をもらって食べたTさんは、『熊肉を食べた夜は元気、元気で燃え盛る火の前でイヨマンテを踊っている夢を見た』と言っていた。本当かねー?
来年は農業を卒業して、このオジサンの弟子になり熊撃ちに行きたい。