■海に異変が起きている
私が伊達市に滞在しているこの5年間、毎年のことだが鮭の定置網漁に行っている。 嘘か本当か定かでないが、有珠漁港のYさんは、『橋本さんが船に乗ってもらうと大漁になる』と言ってくれるから嬉しい。
午前5時45分に有珠漁港の岸壁に行くと、そこでは既に出港準備の最中だった。私が船に乗るとすぐに漁船が岸を離れた。
そこから10分ほどのアルトリ岬の沖合の定置網の脇で船が止まる。
いつものように、5人の海の男達は無言で作業を始める。
誰も指示など待たずに自分の持ち場の仕事をする。
さすが、海の男だ。
ブイに吊るされた網を機械を使って引き寄せる。
船の脇に引き寄せられた網の中にはあまり鮭の姿が見えない。それを大きなタモを使いクレーンで引き揚げる。
網は2ヶ所に仕掛けてあるので、同じ作業を繰り返す。
鮭も入っているが、イカやソイが多い。
マンボウやエイも入っている。
約1時間の作業で約300匹の鮭が獲れた。
船長に聞いてみた。私、『例年より、ずいぶんと少ないですねー』
船長、『こんなことは初めてだ。北海道はどこも獲れていないようだ』
私、『これからもっと寒くなれば鮭は来ますか?』
船長、『こんなことは初めての経験なので分からない』。
9月29日に仏像展の人達を豊浦のインディアン水車に案内した時には、海でも大漁だったそうだ。
それっきりあまり来なくなったそうだ。
何か海で異変が起きているのではないか?
帰りには貴重な鮭を断り、イカとソイをお土産にもらった。
それを女房が捌き、刺身と煮物と天ぷらにして昼食の用意をした。
折角だからと、東京から移住したHさんをコテージに呼んだ。料理は大勢で食べる方が美味しいに決まっている。旨かった。
(おまけの話)
鮭の定置網漁というのは、川に上がって来た鮭を捕獲して、卵を取って受精させて、それを稚魚に育てて、また川に放流する。
その鮭が3年経って故郷の川に帰って来るところを待ち構えていて、海に網を張って捕まえる漁法である。
そうすると、大体だが3%くらいの鮭が故郷の川に戻って来る。
ある時、有珠漁港のYさんに聞いてみた。
私、『どのくらいの数の稚魚を放流するの?』。
Yさん、『有珠で100万匹です。だから毎年、3万匹の漁獲になります』。
私、『北海道のどこでもやっているの?』。
Yさん、『北海道の海岸線では、どこでもやっています』。
私、『どこでも同じくらいの漁獲高ですか?』。
Yさん、『いや、北に行くほど多い。鮭は北の方から海岸沿いに南下して来るらしいので、途中で捕獲されてしまうのかもしれない。特に噴火湾は入り口が狭いので、入口にある室蘭が漁獲が多い』。
私、『なんか不公平な感じだなー』。
Yさん、『昔からこうやって漁をしている』。
さすがに海の男は心が広いなー。