■秋刀魚の塩焼き
テレビのニュースで、「今年の秋刀魚は昨年の3倍の水揚げになりそうだ」と伝えていた。 私は秋刀魚の塩焼きが好きなのだが、マンションに越して来てからはオール電化でガスも無いし、無理して焼けば部屋中が煙だらけとなってしまい、しばらくは匂いが消えないので家では食べられないのが残念である。
小金井に住んでいた時は、秋刀魚のシーズンには女房が庭に七輪を出して炭火で秋刀魚を焼いてくれた。あれは美味しかったが、隣の家は迷惑だったに違いない。
ニュー新橋ビル地下一階「魚の家」の「秋刀魚の塩焼き定食」880円
*定食内容・・・秋刀魚、冷ややっこ、ネギトロ、茶碗蒸し、ポテトサラダ、ご飯、みそ汁、漬物、コーヒー。
この年になると残り時間が少ないので、旬の物はなんとしても食べたいと思うようになる。
だが近年は秋刀魚の不漁が続き、最盛期の10分の1にまでになってしまったそうだ。その理由は定かではないが、韓国、台湾、中国の漁船による乱獲がかなり響いているようだ。
日本のサンマ漁は沿岸漁業で、小さな漁船で沖合のサンマを獲る。
「日本のサンマの漁獲量の推移」
ところが外国の漁法は母船方式で、大型船が日本の経済水域の外で待機して、小型船がサンマを獲っては母船に運ぶ。これでは日本が釣り竿で、外国が網くらいの違いがある。
年々、秋刀魚資源が枯渇して来ているのに、こんな方法で遠くで秋刀魚を獲られたら、日本沿岸に回遊して来る秋刀魚はいなくなってしまう。
日本はこの点でも、本当に近所の国に恵まれていない。
マンション1階のスーパー「マルエツ」では1匹158円と安い。
愚痴っていても仕方ないので、近所でサンマの塩焼きを食べられる店を探しに行った。築地3丁目交差点角にある「竹若」という鮮魚料理店なら、サンマの塩焼きがあるのではないかと思った。
そしてテレビニュースで見た翌日に、私は竹若に聞きに行ったのである。
店の入口で女将が愛想良く私に、「今日のランチから、秋刀魚の塩焼き定食を始めました」と言った。
「値段は?」と聞くと、女将は「ランチは1500円です」と答えた。
生け簀料理屋「竹若」(築地店)
そこで、その次の日(8月30日)に女房を誘って、竹若にサンマの塩焼きを食べに行ったのである。女房はサンマがあまり好きではないが、私が気の毒になり付き合ってくれているのを私は知っている。午後7時に予約をしておいたので席は確保されていたが、ランチと違いディナーは値段が高くなる。
夕食では秋刀魚は一品料理となり、値段はグーンと上がり2030円だった。高い店だからといっても所詮は秋刀魚なのであって、食べた味は普通のサンマだった。
「竹若」のサンマの塩焼き・・・・2030円。(秋刀魚、ざる豆腐、ご飯、みそ汁)。
まだ時期には少し早い。旬になり油が乗ると、口ばしの下が黄色くなる。
その少し後に用事があったので、新橋に行った。
昼時なので新橋ビルの地下の食堂街に行ってみた。小さな店が30軒くらいあったが、驚いたことにその中の7軒の店がサンマの塩焼きのメニューを出していた。今の時期は秋刀魚が売りなのだろう。
安い店で650円、高くても880円だった。やはりサラリーマンの町は同じサンマ塩焼き定食なのに、値段が築地の半値以下だった。私は「一番安いのものなー」と思い、一番高い880円の店に入った。
食べた感想は、築地の竹若の2030円と同じだった。
吉野家の「サンマ炭火焼き牛定食」のポスター。
新橋の帰りに牛丼の吉野家の前を通り掛かったら、大きなポスターが貼り出してあった。そこには「サンマ炭火焼き牛定食」が690円とデカデカと書いてあった。安過ぎるよ!
翌日にマンションの知り合いのFさん会った時に、「サンマを食べに行った」と話したら、「私も行きたいので、付き合って!」と言われた。
断わり難いので、勝どき駅の近くの炭火焼き店「たい将」にまたサンマを食べに行った。こうもサンマが続くと、もうしばらくはサンマは結構と思った。
新宿・小田急ハルクの鮮魚売り場で見たサンマ・・・・1匹290円。
次に伊勢丹に行って見たら、1匹880円で驚いた。
(おまけの話)
また北海道に夏の間だけ滞在した時の話である。
ある時、地元・伊達市の建設業のKさんが私に言った。
「橋本さん、根室のサンマは立つというのを知っているか?」。
私は聞いたことはあるが、詳しくは知らなかった。
根室の大黒サンマは手に持っても立つ。(2008年8月、伊達市で)
私 「詳しくは知らない」
Kさん 「根室のサンマは尻尾を手で持って上に向けると立つんだよ。それではイコロ農園で、みんなを集めてサンマ・パーティをやろう」。
・・・ということになり、ある時、30人くらいの町の友人達を集めてサンマを食べることになった。
Kさんが手配して、根室から発泡スチロールの箱に入ったサンマが大量に届いた。
「イコロ農園でサンマを焼く」(2008年8月)
Kさんは届いたばかりのサンマの尻尾を持って、自慢気に上に向けた。
すると、根室のサンマは曲がらずに真っすぐに立ったままとなったのである。これは新鮮だから出来ることで、東京では同じことは出来ない。
その後に自分達で作った釜戸でサンマを並べて焼いて、みんなで盛大に食べたのである。
あんな美味しいサンマの塩焼きを食べたのは、あの時が最初で最後だった。でもあの時のKさんは、もういない。
「サンマの刺身」(伊達市の寿司屋の文七で・2008年)
みんなは美味しいと言うが、私はどうしてもサンマの刺身は好きになれなかった。