■時間とお金の使い方
「時は金なり」という諺があるが、これは現役の人だけに通用する。
若い頃は「時間が有限」なんて考えたこともなかった。
またお金は無かったが、「これから稼げば良い」と考えていた。
それが引退してしまうと、考え方が全く変わって来るのだから私も分かっていなかった。しばらく前には時間は有限だから、「人生の終りは80歳」と決めていた。

ところが80歳に近付いて来たが、今の調子だとどうも終りそうもない。困ったものだ。お金も80歳までと決めていたから、そのように使って来た。
これが想定外にもっと長いとなると、ここらで考え直さないといけなくなった。「お金は使わない」が「時間は使う」となると、どうしたらいいのだろう?

そこで最近になり、そのことに付いて考えてみた。
それは「お金を使わないで、時間を使う方法」で、毎日の行動をすることである。
ただ「言うは易し、行うは難し」という言葉があるように、これがなかなか難しい。周りの先輩方を見て、具体的に自分なりの方法を考えてみた。

先ずは「出掛ける」。その時はシルバーパスが使える交通費の掛からない場所に行く。次に「どこに行くか?」を考える。これが難しい。
頭に浮かぶ無料の場所を考える。頭に浮かんで来るのは、神社仏閣、公園、デパート、図書館、ビックカメラ、写真展、皇居、百円均一ショップなど色々とある。

一方で家にいる時の時間の使い方は、最近になって良いものを見付けた。私は子供の頃から「字が下手」で、かなりの劣等感を持って生活して来た。
「字が下手」=「勉強が出来ない」、「教養が無い」、「育ちが悪い」と他人から思われる。それなのに字が上手になる努力もして来なかったし、ペン習字を習いに行ったことも無い。

それが中央区の教養講座である「写経教室」に女房と一緒に行ってみて、一挙に目覚めた。母は生前に子供達に、よく言っていた。
「なんでも始めるのに、遅いということは無い」。
そんな母も夫を早く亡くしてから、色々と習い事を始めた。
しかし遂に、彼女は最後までモノになったものは無かった。
でも亡き母の言った「なんでも始めるのに、遅いということは無い」は今でも心に残っている。

さて、いつも交通費ナシ、入場料ナシのところばかりでは飽きる。
私が行きたいと思うところは、大体において交通費が掛かり入場料が必要である。それを我慢してケチ臭いことばかりしていると、本当に人間性までがケチ臭くなってしまう。
だから時々、家族を連れて旅行に行き、大盤振る舞いをしてしまい「元の木阿弥」となっている。そして今でも結局は、「時間とお金の使い方」が分からずにウロウロしている毎日である。

(おまけの話)
私も年齢のせいか、体のアチコチに故障が起きるようになった。
そんな時は、近くの聖路加国際病院に行くことが多い。
ある時、病院で毎月第2金曜日に「お昼のコンサート」というイベントがあるのを知った。
やっとその日と私の時間が合い、コンサートを聞きに行ったのである。

病院の本館の2階の1室が「トイスラー・ホール」になっていて、そこでコンサートが行われる。「トイスラー」というのは人名で、聖路加国際病院の創立者の名前である。
12時から始まるコンサートには、50名くらいの人達が来ていた。
プログラムによると、2時間の間に16人の音楽家が登場する。
なんとも贅沢だ。

「聖ルカ」を漢字の「聖路加」に当てた。
音楽はピアノ、ヴォーカル、サックス、弾き語り、尺八、合唱と色々なメンバーが入れ替わり立ち代り登場する。みんな素人ではないように思う。
私の推測では音楽大学を卒業し、プロにはなれなかったが、今でも音楽を愛して続けている人の発表の場ではないか?
みんな1曲か2曲で入れ替わるので、飽きない。
こんな素晴らしいコンサートを2時間も無料で聞かせてもらえる場所を発見して、これは「お金と時間の使い方」の最高の出会いだった。
