■人間
お笑い芸人で、芥川賞を受賞した又吉直樹の第3作目の作品である「人間」を読んだ。
内容に付いてはここでは述べないが、その5ページ目に「踏むことのなかった犬のクソみたいな人生」という変な言葉が登場する。
又吉直樹の作品は、文章表現が凝り過ぎているように感じるのは私だけか?
「人間」・・・★(築地本願寺の本堂で)
それでは私の人生は、どのように表現したらいいのだろう?
又吉直樹風に書けば、「誰にも知られることもなかった猫の欠伸のような人生」になるのかもしれない。
多くの名も無い日本人は世間的には誇れるものはないだろうが、それが普通でありガッカリすることもないと自分を慰めている私だ。
Sさんのアメリカ土産のマグカップ。
熱いコーヒーを入れると、熱で星座が浮かび上がる。
女房の従弟のSさんがアメリカからやって来て、私の住むマンションのゲストルームに4泊した。彼は日本の大学を卒業後、有名な建築設計会社に就職した。
それがどうしたことかUCLAに留学し、そのままアメリカの設計会社に就職した。そして45年が過ぎて行き、アメリカ国籍を取得したのである。
Sさんはアーティストでもある。彼の書いた「羅府36景」をお土産でもらった。
彼は私と違い、ゼロから自分の人生をアメリカで切り拓いて来た。
ハリウッドスターの家を設計したりして、自分の足跡をアメリカに残している。私はその彼の人生を本にしても面白いだろうと思っている。
彼は日本に来ると、古い街並みや昭和の香りのする家などを見て廻る。
それで自分のアイデンティティを確認するためかもしれない。
清澄庭園では植木職人が冬支度をしていた。
今回は比較的に自由な時間があったので、私達と行動を共にすることが多くあった。
ある日の行動である。朝食は我が家で純日本風、午前中は近くの清澄庭園でスケッチ、その後、森下へ行って「チャーシュー・ワンタンメン」を食べた。
その後に佃から月島の裏通りを見て廻り、夕食は銀座で少し名のある寿司屋で、そして銀座珈琲でお茶をして家に戻った。その2日後には歌舞伎を見て、日本を満喫していた。
「キリンビール」の「キ」が落ちて無くなったままの古い建物風景。
こういう風景がSさんのお気に入り。(佃で)
彼から面白い話を聞いた。それは「Calvin Klein (カルバン・クライン)」である。Calvin Klein と言えば、アメリカの有名ファッション・ブランドである。
しかしロスの一部の日本人の間では、これを隠語として使っている。
CはChaina、KはKoreaである。アメリカで中国人と韓国人のことを「カルバンクライン」と言って、日本人同士で陰で批判する時に使っている。
住吉神社で(佃)
飲食店などに入ると、よく見掛ける文字がある。
「つまづいたって いいじゃないか にんげんだもの」である。
これは詩人で書家の「相田みつお」の作品である「にんげんだもの」の詩集の題名で、私はあまり好きではないが、今回の題名「人間」でそれを思い出した。
私流なら「いろいろな人生があって いいじゃないか にんげんだもの」となる。
銀座4丁目の夜景。
(おまけの話)
毎月第3金曜日には、築地本願寺では「ランチタイム・コンサート」が開催される。お寺にしては珍しく本堂にパイプオルガンが設置されていて、その演奏を参拝者に聞かせている。
これは一般に公開されているので、この日は広い本堂に入り切れないほどの聴衆が集まり、立ち見も出るほどだ。
勝鬨橋近くの和食店「天竹」
コンサートを聞いた後に、近くの和食店「天竹」にお昼ご飯を食べに行った。午後1時を過ぎているのに、どうしたことかいつもと違って50席が満席だった。
空いた席に座り周りを見渡したら、みんな同じものを食べている。
それは「ふぐ天丼」である。この日は29日なので、数字の語呂合わせで「ふぐ」で、通常1980円の「ふぐ天丼」が1200円で食べられる。
「ふぐの日」の古い看板(現在は1200円に値上げした)
私はこの店の「かき揚げ天丼」が好きで来たのだから、「ふぐ天丼」は食べず「かき揚げ天丼」を注文した。50人の中で1人だけ違うものを食べるのは、ケチと思われないかと恥ずかしい。なにしろ「かき揚げ天丼」は770円と安いのだから。
私の人生なんて、こんな些細なことで他人との違いを示して頑張って来たのかもしれない。「人間」は色々な人がいるから、面白いのである。
私の好きな「かき揚げ天丼」(紋甲イカのかき揚げ)・・・770円(税込み)