■登山家から動物カメラマンへ
私をインドのベンガルトラの撮影に案内してくれる大谷計介君は、50年ぶりの再会であることは以前に書いた。 デジカメクラブの忘年会に飛び入り参加した大谷君は、その後、暫くして彼の老後の生活の場であるバンコクへ戻って行った。
そこで、その後は私と大谷君はバンコクと小金井でメールで毎日のように情報交換をしている。
雪の少ないキリマンジャロ(環境・温暖化の象徴)
(写真は全て大谷計介君から提供)
そのメールの交換の中で、少しずつ彼の半生が見えて来た。
彼は高校時代も山岳部に所属していたが、その後、プロの登山家になりたくて16歳で日本のトップの山岳会に参加した。
そして、19歳で栄えある第2次RCCのメンバーに選ばれたという山男で、先輩登山家に「大谷計介は天才クライマー」と本に書かれたこともある。
夕陽の中のシマウマ
今はもう高齢者なので、山登りを止めて動物写真家になっている。
彼がライフワークとして取り組んでいるその目的は、素晴らしい地球の環境保全の為だと聞いて、納得である。
世界中を駆け巡り、自然の中の動物の姿を撮り続けているという、私から見たら全く規格外の男なのである。
彼からはメールに添付されて、動物達の写真が送られてくる。どれも素晴らしい写真ばかりだ。
チョベ川を泳ぐ象
私は今回のインドでのベンガルトラの撮影旅行で、その大谷君の指導で、素晴らしい写真が撮れるのではないかと思っている。(多分)
この年になり旧友と再会し、インドまで一緒に行くようになるとは思ってもみなかったことであり、だから生きていれば人生は面白のである。
これで、ボケても長生きする言い訳が出来た。
ベンガルトラ
(おまけの話)
私はその辺の丘のような山以外の山登りはしないので、山に関しては素人である。そんな私に大谷君が山に関して長文のメールをくれた。
それがかなり格調高く、素人にも判り易いので、大谷君の承諾を得て、そのメールの中から抜粋して少しだけ紹介したい。
『エベレストの話を取り上げますが、それはあくまで5大陸とか7大陸の山の中では突出して難しく、それらを完全踏破とか、全登頂のタイトルは意味がなく、エベレストを除き他はそれほど難しい登山でなく、健康で元気なら誰でも登れます。
エベレストの難しさは前進キャンプが必要な為、遠征の規模が大きくなり、金がかかり、誰が頂上に立ってもおかしくない時点で多くの隊員の中から選ばれる確率は、その人間の技量を越えて、その時の体調や状況次第で、隊長の決断でサミッターが決ります。
リッフェルホルン西壁を登る大谷君
エベレストはサミッターに指名されるか否かの運頼りのもので、その他の山は素人でも立てる頂です。
センセーションを作り、スポンサーを得るためその様な冠を欲すれば、アルピニズムとは違う分野のものになりかねません。
山の良さは記録だけではなく、不変の友情とか、綱に結ばれたパートナーシップが優先されるべきで、今のクライマー達には敵対意識が優先しています。
ライバルは無論必要ですが、そこに相手や先人に対する畏敬の念が欠けているように感じます。』