■医療の内外格差
私が特別顧問をしている会社のベトナム駐在員のS子さんから電話が来た。 『ベトナム人の政府関係者の奥さんが脳腫瘍になり、その手術を医療技術の進んでいる東京で受けたいと言っている。どこか良い病院を紹介して欲しい。また、概算費用を知りたい』。
私の友人達は癌の専門家はいるが、脳の専門家はいない。仕方なく、都内の有名なX大学病院に出向いて手術費用に付いて聞いてみた。
『検査もしていないし、状況がよく分からないのでなんとも答えようがないが、800~1800万円です』と、言われてしまった。
ホーチミン市の覆面ライダー
そこで、そんなべらぼうな金額では話にならないので、伊達市で私の主治医をしてもらっているI医師にメールを出した。
その結果は、『私の同期の脳神経外科医のS医師からの連絡によると、金額は200~250万円、入院日数は2~3週間です』とあった。
併せて伊達市で知り合った名古屋のY医師にも同じことを問い合わせたら、同じような回答だった。
ホーチミンの日本語学校の女生徒達
でも、この料金は健康保険に加入している日本人の、政府が決めた点数によって計算されたもので、全てを自費で支払う外国人は自由診療になってしまうので、その5割増しくらいになりそうだ。
だが、大学卒の初任給が2万円に届かないベトナムでは、300万円とは天文学的金額である。
手術で日本に来る為のビザが取れるかどうかも分からない。
ホーチミン市の高級床屋
日本に来るためには、まだまだ難問は山積みである。
その後、ベトナムから連絡があり、「手術が時間的に間に合わないので、ベトナムですることになった。でも、日本からの医療情報が大変に役に立った」とあった。
このケースとは違うが、日本政府は外国の金持ちを相手に「医療ツーリズム」を考えている。これも色々と問題がありそうだ。
(おまけの話)
今回のことで、医療の内外格差に付いて考えさせられた。
メコン川の夕陽
ベトナムではどうなっているのか気になり、S子さんに聞いてみた。
彼女の話では、『国民皆保険となってはいるが、大怪我とか重病以外は病院に行かず、薬局で薬を買って飲むのが普通です。
本人の負担率は20%ですが、国会議員、軍人とその家族、6歳以下、留学生は無料です。
健康保険に入ると、各自に指定病院が決められます。
また、病院は不衛生だし設備も悪いので、お金のある人は自費で病院に行きます。病院は保険を使わない人を優先しますし、その方が丁寧だし、親切にしてもらえます』。
ベトナムの田舎で見掛けた美人
そして、『ベトナム人は医者と看護師は怖い人』というイメージを持っているので、なるべく病院には行かないようにしているとのことだった。
こんな話を聞くと、病気になった時には、日本人で良かったと思う。