■窓から覗く2人の男
居間でテレビを見ていたら、ガタガタと窓の方から音がした。東北大地震の余震にしては大きいと思った。 それにしては揺れがないのて、「変だなー」と思った。
少し経つと、窓の外から先ほどより大きな音がした。
窓を見ると同時に、男2人がこちらを見ているのが見えた。これには私もビックリした。
ゴンドラが下りてくる
窓の外から部屋の中を見るということが、理解出来なかった。
なにしろ、ここは41階なのであるから・・・・。
それはまるでホラー映画の一場面のようだ。
そして少し落ち着いたら、その理由が分かった。
その2人の男は、外から窓を拭き掃除していたのである。
窓を拭く2人の男
ガタガタという音は、彼らの乗っているゴンドラが壁面に当たる音だったのである。
彼らはワイパーのような道具を使い、手際良くガラスを拭きながら下の階に移って行った。
そこで私はすぐにカメラを持ってエレベーターに乗り、1階に下りて外に出た。
マンションの屋上から垂らされたロープにゴンドラが付いていて、30階の辺りのガラスを拭いているのが見えた。
下の階に下りて行く
2人は窓を拭いて下の階に移る。
計ってみたら、その間が約5分くらいだ。
角部屋はそれを7回上下して、磨き上げる。
だから、私の部屋は彼らに7回も覗かれることになる。
大雑把な計算で、58階分のガラスを全て拭き上げるのに1週間くらいは掛るようだ。
かなり危険な仕事であるが、作業員の確保に苦労は無いのだろうか?・・・と他人事ながら心配になった。
30階の辺りのガラスを拭く
(おまけの話)
1階の広場で通行人の安全確保の係の男がいたので聞いてみた。
私 『かなり危険そうですねー。どんな時が危険ですか?』
男 『風が吹くと危ないので、中止となる』
私 『高い所で怖くないですか?』
男 『怖いが慣れた。10メートルを越すと、落ちれば死ぬ。だから58階でも同じだ』
ゴンドラ
私 『給料はいいんでしょう?』
男 『今は競争相手も多いし、不況なので普通の給料である』
私 『気を付けることは何ですか?』
男 『物を落下させないこと。落下させたら、出入り禁止となるので、全ての持ち物は紐で体に留めている』
私 『部屋を覗くことになるので、たまには面白いこともある?』
男 『殆ど無いが、たまには・・・』