■人形浄瑠璃の黒子になる(3)
淡路島は人形浄瑠璃でも有名である。 歴史的な背景は専門家に任せて、我々はただ楽しめばよいと割り切る。この島では若者から年寄りまで浄瑠璃の物語の一節くらいは誰でも語る。淡路の人は教養人である。
淡路人形浄瑠璃館という常設の会場があり、そこで人形浄瑠璃を見た。今までにも何回かテレビで人形浄瑠璃を見たが、本物を見るのは初めてだ。
始める前に劇団員が人形を持って現れて、人形の使い方を説明してくれる。その後に希望者には人形を持たせてくれて、扱いを試させてくれる。このサービスはなかなかいい。
私も前に出てやらせてもらったが、黒いセーターを着ていた私は本物の黒子のようだったとHさんの奥さんにおだてられた。
演目は『傾城阿波鳴門』という話の中の『巡礼歌の段』であった。
三味線と謡の伴奏で、話は進んで行くが、人形が生きているように動く。黒子が全く気にならない。1体の人形を3人の人形師が扱うが、その意気が合った動きには驚くばかりだ。
30分くらいの公演はあっという間に終った。
南あわじ市人形浄瑠璃
浄瑠璃とか歌舞伎の困るのは、物語を知っていないとなんだかよく分らない。謡や喋る言葉が不明瞭のせいもある。この後に行ったお祭りでも人形浄瑠璃を普通の男が語っていた。淡路島には私の知らない歴史がある。淡路はただの田舎とは違うと感じた。
(おまけの話)
神社やお寺や旧家の屋根の瓦は芸術品である。
獅子の頭に尻尾はシャチなんてのもある。
Hさんの家の近くにそんな淡路島の名産の瓦を使った橋がある。以前はこの橋の反対側に飲み屋街があった。
Hさんが檀家になっている寺の住職は大酒飲みで、毎晩飲み屋に入り浸り、まじめにお経を上げない。そこで、ある時、檀家が集まり、この住職をなんとかせねばならんということになった。
そこで住職を呼び付けて、『あの橋を渡ったら、もうこの寺から追放する。この誓約書にサインをすれば、置いてやる』と詰め寄ったそうだ。住職も追放は困るので、誓約書にサインをして、二度とその橋は渡らなかったそうだ。なんだか、日本昔話みたいな話だが、本当の話だそうだ。淡路はのどかでいいなー。