■200メートルの熊野古道
パックツアーの2日目で、やっと私の希望する熊野古道へ行けると思ったら、ことはそう簡単には進まない。 朝一番に「真珠店」に案内される。
もうこの年になると、女房さえ真珠など欲しがらない。
30分も無駄な時間を過ごして、次は瀞峡観光だ。

これは関東でいえば長瀞みたいなものである。
ウォータージェット船という、要は浅い川底でも走れる船で、天井が開いて両岸の岩々が見られるようになっている船での観光である。

それが終ると、次は熊野速玉神社である。
それもそこそこに切り上げて、次は熊野那智大社である。
ここは本殿までが500段の石段となっていて、かなりきつい。

上まで行ったら、遠くに那智の滝が見えた。
これで終りかと思ったら、今度は那智の滝に行く。
「もう見たからいいよ」と言っても、団体なので許されない。

那智の滝を見学して、やっと私の目的地である「熊野古道」に着いた。
テレビや雑誌で何回も見ているので、期待に心が躍る。
ガイドに案内されて行った先は、なんのことはない。
ただの石畳の道である。

これは箱根の関所や、日光の杉並木に比べても大した差は無い。
熊野古道というのは熊野から伊勢神宮、高野山、吉野、大阪まで続く古代の道だそうで、今は残っている道も少なくなってしまった。

今回はその中の、なんと「たった200メートル」を歩いただけだった。
この為に東京から来たのかと考えたら、なんだかバカバカしくなってしまった。
年寄り相手の団体旅行というものは、「こんなものか」と知ったのである。

(おまけの話)
この旅行にはバスガイドが付いている。
女性の年は分かり難いが、還暦は過ぎていると思う。
髪はクレオパトラ風で、目には強いアイシャドウで、整形もしているかもしれない。関西人だけあって、話を面白可笑しくしようと頑張っている。

中には面白い話もある。
だが、切れ目なく話し続けるのには参った。
話というのは、適当な間合いというものが必要である。
観光名所の無いところでは、自分の家のローンの話まで持ち出して笑いを取ろうとするところは関西人だ。

3日間をズーとこの調子で話し続けたのには驚いた。
これが無ければ、もう少し疲れが違ったかもしれない。
最後のアンケート用紙提出の時に、そのことに少しだけ触れておいた。
