■老舗料亭の老画伯
岡本忠士画伯から個展の案内が来た。 そうかといって、私が特に芸術に造詣が深いわけではない。
この画家は私が小金井市に住んでいた時の知り合いで、水彩画を得意としている。 暇人である私は会場が有楽町の交通会館ということもあり、近いので出掛けてみた。
個展会場の岡本画伯とお客様
1年ぶりに会う岡本画伯は、私より年上だが変りはなく元気だった。
今回は「武蔵野の四季」というタイトルで、小金井公園の木々の四季の移り変りを4枚組で描いてある。
私も彼の「小金井公園の桜の木の四季」を描いた作品を持っていたが、マンションでは飾る場所が無く、お世話になった方に差し上げてしまった。
でも、それは画伯には内緒である。
小金井公園の桜の木 (春)
画伯は言う。『この個展は来年で止めることにした。実は実家の奈良の料亭を引き継いだ自分の兄が高齢で、仕事を続けられなくなった。
そこで自分が1ヶ月の半分を奈良に行って、経営をやることになった』。
画伯の実家が奈良の老舗の高級料亭であることは聞いていたが、そんな展開になるとは思ってもいなかった。
それより、画伯が奈良に行って料亭経営ができるのかなー?
小金井公園の桜の木 (夏と秋)
料亭の名は「菊水楼」といい、奈良の登録有形文化財にも指定されている古い建物は、今では貴重なものとなっている。
料理も宿泊も今の時代としては、かなり値段が高い。
私は、『年金生活者には高過ぎるので行けないなー』と言ったら、『電話をくれれば、年金生活者でも食べられる値段に割り引く』と、芸術家らしからぬ答えが返って来てビックリした。 いつかは行ってみたい料亭である。
小金井公園のクヌギ林 (秋)
(おまけの話)
老画伯の個展を見に行く前に、いつもの新宿の床屋に行った。
もう35年以上も通っているので、技術者のオバちゃんとは親しい。
私はいつもCコースを注文する。
これは整髪の後に、クリームで顔のマッサージをするコースで、普通のコースからみれば1100円も高い。
オバちゃんA 『最近、よく眠れないのよー。』
私 『年のせいだろ。』
オバちゃんA 『4時には目が覚めてしまい、寝ていられない。』
新宿住友ビルのエントランスホールから上を見た。
私 『いいじゃないか。もうすぐ寝たきりになれるのだから』
オバちゃんA 『上手いことを言うわねー。』
私 『でも寝たきりでも、息をしない寝たきりになった方がいい。息をしている寝たきりは嫌われるからねー。』
オバちゃんA 『全くあなたの言う通り。ピンポーンよ!』
・・・というような話を床屋でしているようじゃ、私もお迎えが近いかもしれないなー。