■早とちりか、オリジナルか?
私は若い頃から色々な場面で早とちりをしていた。気が早いというのと早とちりは違う。 善意の友人は『頭の回転が速い』と言ってくれるのだが、そうではない。
早とちりとは判断をする時に信号が脳の回路の少し違う場所を通過するらしい。だから到着点が少し違う場所に行く。ボケとも違うと思っている。
そんな経験が多いので、今回は恥ずかしい話である。
『仏像 in ハワイ』に出展する為に私は阿弥陀如来像を彫った。ハワイでは出展者の全作品の撮影を頼まれているので、家で自分の作品を撮影して、それを見本にと思い先生にメールに添付して送った。
すると先生から返信が来た。『写真の台座の蓮華は返り花と言って、下の蓮華は向きが逆になってしまっています』という驚きの指摘であった。
『蓮華の花びらはハート状で橋本さんのオリジナルのようだが、上下が逆というのはオリジナルというわけにはいかない。この場合は間違いです』と言われてしまった。もう直すしかない。
私も出来あがった作品を見て、なんだか違和感があった。でも、なにか判らなかった。
これには参った。もうボンドで接着してしまっていたからだ。どうしたら良いか悩んだ。
先生は『水に浸してゆっくり外せば』と言うが、それをやっても駄目だった。熱湯にも浸けてみたが駄目だった。
もう台座だけは壊して作り直すしかないかと思った。
ところが、早とちりをする人は巧い具合に神の救いもある。
ハタと気が付いた。中から接着しているのだから表面を濡らしても駄目だ。それなら中から溶かすには電子レンジという便利なものがあるではないか。
そこで台座を電子レンジの中に入れて30秒をセットしてみた。
中を覗くと台座が回転しながら湯気を上げている。チンという音で出してみた。
私の考え通りに台座は簡単に外すことが出来た。
そして、正規に積み重ねられた仏像と誤りの写真を添付したので、比較して欲しい。
もういい年なんだから何事も落ち着いてやろう。でも、早とちりというのは性格なんだよなー。
同じ仏像だが、光の当て方によっては、こんなに上手に見える。
(おまけの話)
過去に何回も早とちりで失敗をして来た。でも、幸いに大事には至らなかった。会社の経営を左右するような大事な時にはジックリと考えていたらしい。
ある時、業界の集まりで熱海に行った。夕方3時に旅館に集合という案内書をもらっていたのだが、その紙を家に置いてきてしまった。それを熱海駅に着いてから気が付いた。
どこの旅館か分らないのである。女房は出掛けてしまい家に居ないし、今のように携帯電話も無いので連絡する人も居ない。どうにも困ったが、ハタと気が付いた。
駅の改札口で待っていれば、誰か見た顔の人が来るのではないか。案の定であった。
また、ある時は業界のゴルフ・コンペで2時間もかけて千葉県の奥の方のゴルフ場に行った。
早朝にフロントでチェックインをして、着替えてからコンペの受付デスクを探したが無い。再度、フロントへ行きコンペの会の名前を告げて聞いてみた。
その答えに驚いた。『その会のコンペなら明日ですよ!』。
仕方ないので、その日は会社に戻り何気ない顔をして仕事をし、次の日にまた出掛けた。
『よくそんなんで社長をやっていられたねー!』と言われそうだが、誰でもあるのに言わないだけだと私は勝手に思っている。