■伊達で東京を食べる
『人生の最後に何を食べたいか?』と聞かれれば、躊躇なく『うなぎ』と言うだろう。 しかも、出来たら野田岩のうなぎが望ましい。
野田岩は麻布に本店があり、私は何度か伊達の人達を案内した。
でも、伊達の人はそれほどうなぎを食べたいと思っていないようだ。私はどうも北海道にはうなぎ文化が無いように感じるが、どうか?
ある日のことである。私の女房の友人が冷凍ではあるが、野田岩のうなぎを送ってくれた。
友人3人で伊達市を訪問する際の事前のお土産だそうだ。
彼女達は私の大好物を知っていて、わざわざそれを選んでくれた。
その日の夕食は、久し振りに魚沼産コシヒカリの米で、野田岩のうなぎという贅沢をしようと思った。
でも、夕食が2人では寂しいので、壮瞥町のIさんを電話で呼んだ。
暫くしてIさんから電話があり、『女房も行きたいので、1人前を半分ずつでいいので、食べさせて欲しい』と言って来た。
その日の夕食は『伊達に居て東京を味わう』という究極のグルメである。
でも、こういう贅沢をしていると、東京が恋しくなっていけない。
野田岩のうなぎを初めて食べたIさん夫妻は、大して感激はしていなかった。『うなぎは普段はあまり食べないので、これが美味しいのかどうか分からない』と言う。
私が人生の最後に食べたいほどのうなぎも、Iさんにはそれほどでもない食べ物であった。
好みとはそういうものなのである。でも、少しガッカリ。
(おまけの話)
1年前に東京から伊達市に移住してきたHさんから東京土産を頂いた。
クイーンアリスのマカロンと花園饅頭のぬれ甘納豆で、『これぞ東京』というべき物で、私は久し振りに東京に触れた。
どちらも高級品で、伊達ではお目に掛かれない品である。
西麻布にあるクイーンアリス・レストランは私がまだ現役で、金まわりの良かった頃に何度か行った高級フランス料理店である。また、花園饅頭の工場は私が現役の頃に、私の工場の隣にあった。
会社でお使い物に使う時に、時々、直売所に買いに行った。
この会社の製品は同じようなお菓子屋と比べると、驚くほど値段が高い。
直売所に買いに行っても、全然割引はしてくれなかった。
思い掛けない東京土産で、そろそろ東京に戻りたくなった。
こういうのを『里心がついた』というのかな?