■乙女峠から見る富士山
伊達のRさんは富士山が大好きだ。 私もRさんに負けずに好きなので、機会があれば、富士山の近くに行って写真を撮り、それをメールで送信している。
するとRさんは喜んで返信をくれる。Rさんと私はいわば富士山仲間である。
未曾有の金融危機の中で疲れ果てているRさんに、私から送信される富士山の写真が少しは彼の心を癒してくれれば幸いである。
箱根のラリック美術館に行く時は中央高速道路で富士川口湖ICで出て、山中湖経由で御殿場に出た。
だが帰りには、箱根仙石原からまた乙女峠経由で御殿場に出て、そこから東名高速道路に乗って都心まで行った。
乙女峠に差し掛かったところの茶店で大勢の人がカメラを構えているのが見えた。その方向を見ると、なんとも美しい富士山の夕焼けが見えた。
すぐに車を停めて仲間に加わる。
黒いシルエットとなった富士山の両サイドの空が赤く燃えている。なかなかこんな場面には出会えない。
そこから少し下ったドライブインでは更に美しい景色が見えた。暗くなった御殿場の町に火が灯り、それはそれは美しい光景だ。
富士山は明るい中でも良いが、シルエットもまた良い。
更に暗くなり、富士山が見えなくなるまで、私はそこに佇んでいた。これもリタイアした男の特権であろう。
伊達のRさん、シルエットの富士山に満足して頂けましたか?
その内にRさんに時間が出来たら、一緒に富士山の近くに泊まり、語り明かしたいものだと思っている。
でも、私はRさんと違い、酒が飲めないが大丈夫か?
(おまけの話)
富士山の写真を撮る私は残念ながら富士山に登ったことがない。今までにも登る機会はあったが、なんだか踏み切れなかった。
富士山は遠くから見ているから美しいのであって、登れば『ただの山』である。
登山の時は誰でも自分の足元を見て登る。
だから、どの山もそんなに違いはないと思う。頂上に立てば、富士山は見えない。見えるのは他の山々である。
そんなわけで、富士山が好きな私は富士山に登らないと言い訳をしている。
2~3年前にカトマンズに行って世界一高い山のエベレストを見た。地上から見ても見上げるほど高い。
遊覧飛行のチケットを買って、上空からも見た。そしてエベレストより高い位置からも見た。それはとても美しかった。
伊達の山女のKさんは『山は苦労して登るからこそ、そこから見る景色が素晴らしい』と言う。
批判を覚悟で言えば、楽をして頂上に立っても、見えるのは同じ景色である。
『違うわよ!』と言うKさんの声が聞こえそうだ。