■上高地の秋(1)
年齢と体力を考えると、「そろそろ限界かな?」と感じる時がある。 ランチの時はレストランで「ご飯は少な目にね」と頼むし、外国旅行は行きたくない。
暗くなる前に家に帰りたくなるし、万歩計で1万歩も歩くと疲れ果てる。
そんな時に、家族から「秋の上高地に行きたいねー」と呟かれた。
上高地バスターミナル(背景に穂高連峰がそびえ立つ)
そう言われりゃ、行かないわけにはいかない。
そこで日程調整をした上で、11月4日から2泊3日で上高地の帝国ホテルを予約した。
上高地には何度か行っているが、素晴らしい場所である。
帝国ホテルでお茶をしたことはあるが、泊まったことは無かった。
上高地帝国ホテル。
新宿駅から、午前9時発の中央本線の特急「あずさ7号」に乗った。
この特急はデュオの「狩人」が歌ってヒットした「あずさ2号」の走る路線である。
特急列車というのは新幹線と違い、スピードが遅い。これがまた良い。
車窓から見える景色もゆっくり流れる。「旅に行くなら特急列車に限る」と思った。
部屋のベランダから見た穂高連峰。
松本駅から電車を乗り換えて、更にバスに乗り、やっと上高地に着いた。ここへ来たのは、なん年ぶりだろう?
高原特有の肌を刺すような冷気と、新鮮な空気。思わず深呼吸をした。
帝国ホテルに荷物を置き、梓川と河童橋の見物に行く。
散策路はカラマツの落ち葉で埋まっていた。
観光客が河童橋に鈴なりになって、穂高連峰を背景に写真を撮っている。ここでも中国語がアチコチから聞こえるが、中国人ではなく台湾人か?香港人か?
ほとんどの観光客は日帰りのようで、せわしなく写真を撮り、ソフトクリームを食べて去って行く。
梓川右岸から見た「河童橋」と「穂高連峰」。
今の時期は紅葉には遅く、白樺は葉を落とし、カラマツの最後の茶色の葉が風に揺られて降って来る。その様は逆光の中で、キラキラと輝く宝石のようだ。
木道にはそのカラマツの葉が絨毯を敷き詰めたようになっていて、とても綺麗だ。我々の泊まる「上高地帝国ホテル」はカラマツ林の中にひっそりと佇んでいる。
冬が近付き、カラマツの葉も残り少なくなっていた。
2階の部屋のテラスに出たら、穂高連峰が目の前に広がっている。絶景である。上高地帝国ホテルは11月10日で営業を停止し、従業員達は東京の帝国ホテルで働くそうだ。
夕食の時にレストランに行ったら、最後の上高地を楽しむために帝国ホテルに泊まっている金持ち風のお馴染みさんが多いように感じた。
林道を進む路線バスはカラフルだ。
(おまけの話)
日にちが近付いて来たら台風19号が関東地方を襲い、各地に大変な被害をもたらした。その中で困ったのが、中央本線が崖崩れの為に不通となってしまい、復旧の目途も立っていないことだった。
帝国ホテルに連絡したら、「上高地は全く台風の被害は無い」という。
11月4日までに特急「あずさ7号」が開通しなければ、長野経由で行くしかない。
運休と再開の2回のお知らせ(JR東日本のHPから)
ハラハラしながら待ったら、28日に中央本線が復旧し「あずさ号」が運行した。上高地は不便な場所にあり、経路としては「新宿から松本に出る」、その次は松本電鉄で「松本から新島々に出る」。
更にそこからシャトルバスに乗り、上高地に着く。
我が家から6時間の旅である。
バスターミナルから河童橋への道を歩く観光客たち。
上高地は「マイカー乗り入れ禁止」である。
豊かな自然を守るために、観光バスも土日の乗り入れを禁止している。
この規制は1975年に始まったのだが、私は規制が行われる以前の若い頃に1回だけマイカーで上高地に入ったことがある。
いま考えると、貴重な経験だった。
夕暮れとなり、穂高連峰に雲がかかって来た。