■本物の価値ある男
中学・高校時代の同級生に塚本君という男がいる。 彼は学生時代は体操選手で、オリンピックの候補選手にもなった。
見るからに真面目で信頼できそうな感じが体から発散している。それは彼がクリスチャンであることから来ているのかもしれない。
塚本理事長
その塚本君が八王子の外れの都市整備機構が開発したニュータウンの『みなみ野シティ』に特別養護老人ホームを開設した。
ホームの名前は『丘の上レジデンス』という洒落た名前である。
丘の上レジデンス
5月1日の開所の前にその施設を見せてもらった。
見晴らしの良い丘の上に29室の地域密着型のホームがある。
「丘の上レジデンス」左から2棟目
個室のワンルーム全29室に、3交代で24人の介護の専門家がいると言う。
個室
1ヶ月の費用は介護保険を使って、食事や入浴などのサービスを受けて、総額で20万円弱だと聞いた。
これなら厚生年金受給者の私でも入れそうだ。
とりあえずは、なんとなく安心した。
ドイツ製機械式バスタブ
私は塚本君に聞いた。
『なぜその年になって莫大な金額の借金までして、こんな事業を始めたの?』
塚本君は言った。
『日本の戦後の経済発展に貢献してきた人達が老後になり、いまは行く場所も無く、色々な施設をたらい回しにされている。そんな人を1人でも救いたい』
私は彼のその言葉に感動を覚えた。彼こそ本物の価値ある男だと思う。
その後、老人ホームや介護保険や介護士のことなどの話を聞いたが、あまりに問題が多いと感じた。
私が介護を受ける時までには問題解決は間に合わないかもしれない。
『塚本君、君の力で小金井市にも介護施設を作ってくれ!』
(おまけの話)
伊達のK会長にまた『橋本さん、弱気だねー』と言われそうなおまけの話だが、私がいま一番恐れていることは死ぬことではない。
今までの人類の歴史上で死ななかった人はいないのだから、早いか遅いかだけの違いで、この年齢になると、それはもう大した問題ではない。
私の父は56歳であっけなく亡くなってしまった。
母は86歳まで生きたが、それもある朝、ベッドの脇で亡くなっていた。
両親とも子供には全く世話をかけないで、あちらへ逝ってしまった。
私が恐れているのは、私に介護が必要になった時のことである。下の世話を誰かにしてもらうのは、私のプライドが許さない。
地元のOさんがゴルフのお誘いの電話のついでに、私に言った。
『前立腺癌は進行が遅いから大丈夫だよ。あと5年ももてばいいんだろー。そうすれば72歳だから、それで十分だろう?』。
そこで私はOさんに言った。『その時は私の葬儀の委員長をやってくれ』。
Oさんは、『俺もあちこち具合が悪いから、そこまでもつかなー?』。
年をとると、暗い話題も明るく語るようになる。