■北海道の仏師「木定」
雨の降る6月の少し寒い日に伊達市の大雄寺のO住職から携帯に電話があった。 住職が檀家でもない私に、わざわざ東京まで電話をしてくることは珍しい。
話というのは次のようなことであった。
『札幌に住むXさんという人が、仏像に関して聞きたいことがある。電話番号を教えてもいいか?』ということであった。
私は伊達市では、今やすっかり仏師扱いなのである。
光背(制作途中)
OKを出すと、暫くしてXさんから電話があった。
先ずは自己紹介で、『私は札幌でサラリーマンをしている。実家はニシンで有名だった江差でニシン漁の網元をしていた。その実家から受け継がれた仏像がある』。
『北海道には仏師である円空や木喰の作品が多く残されている。私の所有している仏像は木定(もくじょう)という人の作品で、円空と同じくナタ彫りである。この仏師のことを以前から調べているのだが、全く歴史に登場して来ない。
台座(制作途中)
松前のなんとか先生が研究しているので、訪ねて聞いてみたが、よく分からない。あなたは仏像展をするくらいの人だから、木定に付いて知らないかと思い電話した』と、いうことであった。
私は正直に、『私は仏像を彫る方で、歴史に付いてはあまり知識が無い。そこで私の先生に聞いてみるが、北海道の仏師となると、先生も分からないかもしれない』と言って電話を切った。
聖観音像本体(ほぼ完成)
後日、私の先生から回答があったが、やはり分からなかった。
そういう話があるとなると、100年も経てば、私の作品も「誰か名前は分からないが有名な仏師の作である」と、いうことになるのかもしれない?そんなことはないかー。
(おまけの話)
現在製作中の聖観音立像を完成させることが出来ずに、伊達に行く日となってしまった。
伊達に来て完成させた「聖観音立像」
6月18日が伊達に行く前の最後の教室だったので、先生にいつもより詳しく教えてもらった。
あとは台座の仕上げだけなので、そう問題は無いだろうと思った。
次の教材の聖観音坐像をもらい、それを伊達に持参する。今年はあまり農作業ばかりしていないで、本を読んだり、仏像を彫ったりと本来の静養の目的を果たすつもりだ。
次回制作課題「聖観音坐像」(先生の見本像)
そうでないと、『なにしに、わざわざ北海道まで来ているの!』と女房に怒られそうである。
でも、今年も大勢の友人達が来るので、農作業はしなくても、忙しいことには変りはなさそうだ。