■久しぶりのちびっ子レッスン♪
ちょっと修学旅行レッスンから離れたお話です。 先日久しぶりに「キッズスクール」のレッスンをしました。
「キッズスクール」とは未就学児を対象にしたスキースクールです。
基本はスキーレッスンですが、休憩時間に氷の滑り台をしたりタイヤのチューブを使った橇で遊んだり、雪合戦をしたりと、冬ならではの遊びをして楽しんでいただきます。
入校した子供たちは8名でした。
スクール受付に集まった子供たちを見ると、実に個性豊か。
年齢は4~6歳でした。
親御さんと一緒にいる時のその子供の様子や、ウェア・小物の身に着け方で、大体はレッスン中の様子が想像できます。
そしてそのあと親御さんと別れ、キッズパークへ向かう途中の歩き方で「この子はすぐ滑れるわ」とか「この子はじっくり教えなくちゃ」というのが大体は読めます。
「スキーしたことある人~!」と声を掛けると、スキー場に行ったことがあるとか、橇をしたことあるという子でも、ほとんどの子は手を上げるのですが、あまり当てにならない・・・。
でも、これでやる気のほどは分かります。
さてこの日、8名の内7名はやる気は十分で直ぐに滑れるようになりそうな子供たちでしたが、1名まったく協調する気もなく、やる気もない子供がいました。
集合場所にお父さんとやって来たT君5歳。
もう既に不満たっぷりの顔で、身に着ける物は何一つまともに着いていません。
手袋を履くのに10分以上も掛かっていました。
なかなか履けないので、お父さんもT君もイライラ。
お父さんはT君をなだめすかしながらこう言いました。
「お父さんも側にいて見ているから頑張ろうね。」
こんなに嫌がっているのに、スクールに入れる必要があるのかしら?
側にいるならお父さんが一緒に遊んであげればいいのに・・・。
私は疑問を感じました。
実はこういう光景はよく目にします。
親御さんが自由に滑りたいために、嫌がる子供を無理やりキッズスクールに入れてしまう。
もちろん、スクールには我が子が滑れるようになることや、他のお友達とも仲良く遊んでくれることも期待します。
結果的には「楽しかった!!」と喜んで帰る子供がほとんどなのですが、中には初めから終わりまでず~っと泣いていたり、ずーっとグズグズしている子供もいるのです。
今回のインストラクターは若い男性二人と私の三名でした。
う~ん・・・、この子は私の担当ね。
私は腹を決めT君親子の側へ行きました。
「こんにちは♪T君♪」
もちろんT君は私のことなんて見もしません。
「どれどれ。先生が手袋履かせてあげるね。」
触ろうとしたらパッと手を払いのけます。
私はタイミングを計りながら、少しずつT君に触れました。
ようやく手袋が着き、名前が入ったビブを被せようとした時、またもやT君は激しく拒否をしました。
「これはキッズスクールに入っているお友達がみんな着けるのよ。」
すると、「みんなと同じものなんか絶対したくない!!」とT君。
今まで色んな子供を見たけれど、そういう理由でビブを嫌がった子供は初めてでした。
我儘ではあっても、彼なりの理由がしっかりとあるのでした。
「そう!分かった!じゃ止めよう!しなくていいよ。」
私は独断でパッとビブを外し「さあ!遊びに行こう!」と手を握りました。
すると、またまた激しく拒否。
「スキーなんて大嫌い!!だからスキーの先生も大嫌いなの!!僕は保育所の先生の言うことしかきかないの!」
そういい放すとピューッと走っていってしまったのです。
よほどお父さんやお母さんと一緒にいたかったのでしょうね。
私は遠めにその様子を見ていたのですが、こりゃどこまでも行ってしまいそう・・・と、T君の側へ駆け寄りました。
その頃には「側にいる」と言ったはずのお父さんはいなくなっていました。
お父さんは、自分がいると甘えるからいないほうがいいと判断なさったのでしょう。
でも、T君はそのことにも怒っているのです。
私はT君の肩をそっと寄せて言いました。
「T君はお父さんとお母さんと保育所の先生だけが好きなんでしょ?」
「そうだよっ!!」
「そう。T君がこんなことをしていると、大好きなお父さんやお母さんが悲しむわね。それでもいい?」
「やだ!!やだけどスキーの先生は嫌いなんだ!」
まいったなあ・・・・こりゃ・・・よし!
「そう!でも先生はT君が大好き!!」
私はそう言って、スッとT君を抱き上げました。
ブーツを履いた5歳の男の子はさすがに重い・・・。
「放せ!」
案の定手足を激しくばたつかせたのですが・・・、バタバタと抵抗したのはものの30秒でした。
あれ?大人しくなった…と思ったら、両腕を私の首にくるっと回して来るではないですか。
なーんだ(笑)
クスッと笑いたいのをこらえて、T君に問い掛けました。
「どうしてそんなにスキーが嫌いなの?」
すると、またムッとした顔で「68回も転んだの!!だからスキーは嫌いなの!!」という答え。
回数はもちろん嘘なのですが、きっとその位転んだ気がするほど辛くて嫌な体験だったのでしょう。
理由はきちんとありました。
初体験の状況は、こんなにもその後を左右してしまうのですね。
「じゃあ転ばなくなるようになろうよ。みんなと頑張って練習したら、必ず滑れるようになって楽しくなるから♪」
返事はありません。
キッズパークが近づいたところで、こう言いました。
「よし!この辺で降りようね。これ以上抱っこしてたら、みんなに見つかっちゃうからね。」
ご機嫌はだいぶ良くなって来たわ…と思っていました。
それなのに・・・、既に始まっていた準備体操に、「みんなと一緒に体操しよう!」と声を掛けた途端、「みんなと一緒に体操なんかしない!体操はお家しかしないの!!スキーなんかしない!頑張っても出来ないことがあるんだ!!」
そう叫ぶなりキッズパークのゲートから、またピューッと逃げ出してしまいました。
「はあ……せっかくここまで来たのに…。」
どうやら、”みんなと一緒””頑張る”というフレーズが嫌いなようです。
う~ん・・・理解できないわけではないけれど、簡単に許されることでもないし・・・。
そしてこの後、もう一人のインストラクターと連携しながらもかなり手こずりましたが、結果的には滑れるようになり、ニコニコと機嫌よく無事レッスンは終了したのでした。
スキーなんか大嫌い!
頑張っても出来ないこともある!
そう言ってきかなかったT君。
それでも少しはスキーが楽しくなって、努力は必ず報われるということを知ってくれたとしたら、振り回された四時間も意味があったのだ思えます。
翌日、お父さんと楽しそうに滑るT君を見かけたと報告を受けました。
私はホッと安心し、良かったー!!と嬉しくなりました。
恐らくは、再び会うことはない様々な出会いがあります。
殊に子供との出会いは、少なからずも将来を左右してしまう可能性もあると思うと、とてもプレッシャーを感じます。
個々の個性に、どう関わっていくかを考えながら対応する難しさ。
う~ん・・・日々勉強ですねー☆