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[2007.04.11]
■実はお煎餅が好きでして...。
カフェなんてやっているのだから、「珈琲にクッキーが好きなの...うふっ」とか言いたいのですが、実はお煎餅にお茶の方が好きです。 
 
「な~んだ、やっぱオバサンだね!」って? 
そうじゃなくて(ちょっとそうだけどサ)、子供の頃からの好みなのです。 


それは多分、江戸っ子だった父の影響だと思います。 
父は、東京は蒲田の生まれでした。 
高校生になって大阪へ出て行くまでは、昔の羽田空港の側に住んでいたと聞きました。 
 
今はどうかは知りませんが、私の子供の頃、蒲田の駅前にずらっと並ぶ縁日に、よく連れて行ってもらいました。 
あまり、「あれが欲しい。これが欲しい。」とは言わない子供だった私は、ところ狭しと並ぶ色々な店を見ているだけでワクワクと楽しく、ただ一つ水飴の中に杏が入った「あんず飴」だけは、「あれ食べたい」と言って買ってもらいました。 
 
蒲田へ行くと、父はそこに住んでいた頃の話をしてくれました。 
その話の中で、私の興味を一番そそったのは、”穴森煎餅”の話しでした。 
父の煎餅好きは、よく知っていました。 
お酒も甘い物もダメな父のおやつといえば、煎餅か果物でした。 
 
味にうるさかった父は、スーパーで買ってくる煎餅でも、「どこどこの何じゃなきゃ!」みたいなところがあり、お気に入りはどこかのメーカーの”品川巻”でした。 
細くて小さくて固めの煎餅に、浅草海苔がくるっと巻いてある物です。 
全てにおいて拘りの強い父は、「何だっておんなじよ~」と大らかに言い放す、八重ちゃんとは実に対照的でした。 
 
そんな父が、もっとも好きで憧れに近い存在の煎餅が、”穴森煎餅”だったのです。 
私も、小さい頃に一度だけ家にあるのを見たことがあったのですが、「これはお父さんのだから」と言われ、食べさせてもらえなかったのです。 
代わりに「あなた達はこっち」と、違うおやつを与えられました。 
でもその時、ちらっと横目で見たら、栗のような形をした薄い煎餅で、高級感をかもし出す缶に入っていました。 
 
その後も、何度か”穴森煎餅”の話題を耳にしましたが、なかなかお目にはかかれませんでした。 
 
父が病床に臥した時、「穴森煎餅が食べたいなあ」と言いました。 
私はどうしても食べさせてあげたいと思い、東京へ飛んで行きました。 
初めて訪れた店の戸を開け、「お煎餅をください」と言ったのですが、支店も持たなければ地方発送もしないその店は、完全予約制だったのです。 
どんなに事情を説明しても、とうとう売ってはもらえませんでした。 
仕方ありません。 
予約分しか焼かないのですから...。 
 
その話を聞いた横浜に住む弟が、後日”穴森煎餅”を持ってお見舞いに来ました。 
でもその時は、食事もままならないほどに衰弱していたので、憧れの煎餅を目の前にしながら、一枚食べるのもやっとでした。 
あの時とは違い、しきりに家族に勧め、それを食べる私達を黙って見ていている父が悲しかった...。 
 
大切に大切に食べていたのですが、あと10枚ほどになった時、とうとう父は亡くなってしまいました。 
残されたお煎餅は、弔問に来てくださった極親しい方に、供養ということで食べていただきました。 
 
私の食の好みは、かなり父の影響が大きいと思うのですが、殊に「煎餅好き」は舌と思い出がそうさせるのだと思います。 
 
あ~なんだか、パリッとボリッとしたくなってきました。 
確か居間にまだあったはず。 
ちょっと探してきます...。 
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Rietty
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☆ブログの解説 
日々の暮らしの中で、出会った「いとをかし」な人・動物・物・風景などを綴ります。 
「いと」 
1)非常に。大変。事態が並々でないさま。本当に。  
「をかし(おかし・い)」 
笑いたくなるような面白さがある。滑稽である。普通でなく奇異な感じがする。異常だ。変だ。興味深い。おもしろい。風情がある。情趣がある。優れている。立派だ。ほほえましい魅力的なさま、心をひきつける趣深いさまを表す意。 
(大辞林より抜粋) 
さて今日は、どんな「いとをかし」に出会えるかしら...。 
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