■レトロなカップ&ソーサー 三客目のご紹介
これは、宮城県の石巻から連れて帰ってきた、東洋陶器製のカップ&ソーサーです。 東洋陶器株式会社は、現在トイレ用陶器などを作っているTOTO株式会社の前身です。
この会社は、旧日本陶器合名会社(現ノリタケカンパニーリミテッド)から、衛生陶器部門として分離独立した会社で、昭和20年代までは食器を作っていたのです。
「れん」を始める前、ネットで見つけた仙台のアンティークショップと、石巻の蔵出し商品を扱っている食器屋さんを訪ねて、食器探しの旅をしたことがあります。
まず初めに行った、仙台のアンティークショップには、アールデコ調のデザインの食器が多く、目移りするほど私好みの物ばかりで感動♪
でも、予想通りとても高くて手が出ない、予算オーバーの物ばかり。
ここでは結局、泣く泣く目の保養に留めてしまいました。
この時は、一泊二日の旅でしたので、スケジュールは押しています。
その日のうちに、あと2軒行きたいところがあったので、次の店を目指し、大急ぎでバスに乗り込みました。
二軒目の店は、イギリスアンティークの物を多く扱う店でした。
ここには、ランプシェードと家具が多数あり、そのほとんどが重厚な雰囲気の物でした。
食器も扱ってはいたのですが、スージークーパーのお高いものばかり...。
わあ...素敵☆
でもムリムリ、ゼロが一つ多い...。
ここでも諦めかけていた頃、広い店内の隅のほうに置かれていた、お手ごろ価格の薔薇柄の四角いお皿を見つけて一枚購入し、ちょっと満足してその店を後にしました。
さて、次に目指す三軒目は、石巻の蔵出し食器の店です。
予定通り、仙石線の鈍行列車に乗り込み、石巻を目指しました。
石巻駅に到着し、その日の宿の駅前旅館に荷物を預け、観光協会で店の位置を確認し、またもや早足で歩き出しました。
そこは、今回一番大きな期待を寄せていた店だったので、自ずと足早になってしまったのです。
ようやく店に着き、意気揚々と店内に入り、1階・2階と見て歩いたのですが、何かが違う。
確かに、昭和初期の蔵出し物が多く並び、見ごたえ十分なのですが、何故か私のイメージにヒットするものが無いのです。
残念...。
この旅のメインとも言える店が、私にとってはイマイチだったことで、旅館へ戻る足取りは、すっかり重くなってしまいました。
旅館に戻った私は、部屋に入り今日買った物を、テーブルの上に並べてみました。
薔薇のお皿一枚と、偶然見つけた骨董屋で買った、印判の赤絵の皿が五枚。
はぁ~これだけのために、ここまで来ちゃったの?私。
なんだか力が抜けて、ガックリしてしまったのですが、「いやいや、感じのいい喫茶店にも数件入って勉強できたし、買えなくても良いものを見て、目の保養をしつつ感性も磨けたわ!...と、自分の気持ちに折り合いをつけることにしました。
さて、一夜明けて翌朝、朝食を摂る旅館の食堂で、私は感動の出会いをしてしまったのです。
ご自由にお飲みくださいと置かれた、ネスカフェとカップ&ソーサー。
私は、そのカップ&ソーサーに一目ぼれをしてしまいました。
もう目は釘付け。
私は、う~ん...と迷ったのですが、思い切って厨房で仕事をしていた、女将さんにお願いをしてみました。
「あのー、このカップとソーサーを売っていただけないでしょうか?」と。
女将さんは、「えっ!!?」と言って、だいぶビックリしていましたが、事情を知ると快く「こんな古いものでいいなら、お金はいらないからあげるわよ」と、言ってくれたのです。
モー感激!!
私は、心ばかりのお礼をして、大喜びで有難く頂戴してきました。
お陰様で、前日わざわざ目指してきた店が、期待はずれだった時の落胆の気持ちや、気に入ったものを目の前にしながら諦めざるをえなかった悔しさなど、全てどこかへ吹き飛んでしまいました。
それは、今回の旅はまさしく、このカップ&ソーサーに出会うためのものだったんだわ♪と、思えるほどに嬉しい出来事だったのです。
ネスカフェ用に使われていたこのカップは、実は珈琲よりも紅茶を入れるのに適しているため、「れん」での出番は少ないのです。
ですから、いつもカップボードの後ろの列に並んでいます。
どうぞご来店の際には、ちょっと背伸び気味で、後ろの方を探してみてくださいね。
宮城県石巻からやってきた彼が、静かに座っていますから。