「いとをかし」な日々

今日は八重ちゃんの76回目の誕生日だ。 
 
先日、『最近、駄菓子の計算を間違えてばかり…。だいぶ頭が悪くなってきちゃった…。』なんて言って、ひどく凹んでいた。 
『これ以上間違えるようになったら辞めなくちゃ』とも。 
 
『そんな日もあるわよ。私だって間違えるもん。』と言って慰めたものの、その日はだいぶ落ち込んでいた。 


詳しく聞くと、お客様がカゴに入れて番台に持ってきた駄菓子の代金を暗算するところまでは、完璧（？）らしい。 
そして、『〇〇円です。〇〇円お預かりします。』と言った後、引き算で間違えることがあるらしい。 
だから、釣銭を間違えることがあると言うのだ。 
しかも少なく渡してしまう。 
でもそこのところは、子供達は大切なお小遣で、しっかり計算しながら買い物をしているので、『おばさん、違うよ~！』と優しく教えてくれるらしい。 
そんなことが最近重なり、すっかり自信をなくしてしまったのだ。 
 
けれども、暗算で代金を計算するだけでも素晴らしいことだと、我が母ながら感心している。 
 
 
八重ちゃんは小学生四年生の時に父親を亡くした。 
同じ頃、戦争が激しくなって来たこともあり、母親と子供達四人で三重県に疎開した。 
 
第二子だった八重ちゃんは、病弱だった母親を支えるため、学校へ通いながら本家の農業を手伝って家計を支え、年が離れた弟と妹の面倒をみた。 
中学を卒業すると、近くの真珠工場に就職し、姉と二人で家計を支えた。 
 
当時としては珍しくはない話しであるけれど、そういう苦労を乗り越えて来た八重ちゃんは、逆境に強い。 
苦境に遭うと俄然闘志を燃やしてしまう。 
 
少なからず、私もその可愛いげない血を受け継いでいるような気がする。 
我ながら『なんでこんなに自分を追い込んでがんばっちゃうかなあ。』と思うことがあるからだ。 
 
まあ私のことはさておき、そんな八重ちゃんだから、凹んだようなことを口にしても、内心では『ナニクソ！負けてたまるか！』と思っているはずである。 
実はそこんところが、私達親子が時々喧嘩を引き起こす所以で、私が母親に対してイラッ！と来る原因なのだ。 
でも実はそこんところが八重ちゃんらしく、大好きであり尊敬するところでもある。 
 
この人には敵わない。 
まったくもってそう思う。 
でも私だって負けない。 
いつもそう思っている。 
この人に血をもらったのだから。 
 
 
あの“ナニクソ根性“で、いつまでも駄菓子ルームの番台にいて欲しいと心から願っているドラ娘から贈ります。 
 
『HAPPY BIRTHDAY TO 八重ちゃん☆　ずっと駄菓子屋のおばちゃんでいてください。』