■15年前のあの日とダブった出来事。
一昨日、通院で出掛けた母の代わりに駄菓子ルームの店番をしていた時のことです。 近所に住む小学4年生の男の子がドアを開けて入って来ました。
その男の子はどの子も皆するように、奥の部屋をチラッと覗きました。
八重ちゃんを探しているのです。
カフェルームで仕事をしていた私が、「いらっしゃいませ!」と近くへ行くと、なんだか様子がおかしい。
すると彼は「鍵を落として家に入れない。」と、こぼれそうな涙を必死でこらえながら言いました。
お金を持って買い物に来たわけではなく、番台の周りを目を真っ赤にしながら歩いて気を紛らしているようでした。
どうやら八重ちゃんが居ると思って来たと見えました。
その姿を見て、私は一瞬で15年前のあの日に戻ってしまいました。
娘にも息子にも同じような出来事がありました。
二人の性格を良く表すエピソードです。
娘の場合。
家の鍵を持って行くのを忘れ、中に入れないと気が付いた彼女は、「仕方ない。」と家の前でランドセルを背負ったまま遊んでいました。
その様子を見た近所の方が、ご自宅に招き入れてくださり、私が帰るまで預ってくださったのです。
散々おやつをご馳走になり、たくさんお話をした娘は「お友達になった。」と言ってニコニコ帰って来ました。
一方息子の場合。
同じく鍵を持ち忘れ、家に入れないと気が付きパニックになった彼は、グルグルと家の周りを歩いてどこかのロックが開いてないかと探しました。
どこも開いてないと分かると、途端に悲しくて怖くて寒くて泣きだしてしまいました。
私が帰った時、彼は点けっぱなしにしていたFFストーブの排気口のところで手を温めながら泣いていました。
「家の鍵がない!」と分かった時の子供達のショックはどんなに大きかったことか。
誰もいない家に入ることすら不安なのに、それすら出来ないのですから。
そんなことを思い出している間もずっと、彼は自分を落ち着かせようと番台をグルグル回っていました。
「お母さんやお兄ちゃんは何時頃帰ってくるの?」
「お母さんは真ん中のお兄ちゃんの入学式で学校へ行ったし、4時ごろに帰って来るって言ってた。上のお兄ちゃんは部活で遅い。」
そう言いながらも彼はヒックヒックと肩を揺らしていました。
「泣かなくても大丈夫よ。お母さんが帰ってくるまでここにいなさい。」
すると、「大丈夫です。」と言って走って帰ってしまったのです。
少しして、私は心配になり男の子の家に走って行きました。
すると、玄関フードの中の土間に座って泣きながら宿題をしていたのです。
15年前のあの日も、我が子はこうして泣いていたのかな?
そう思ったら、男の子と一緒に泣いてしまいそうになりました。
「おばさん、お昼ご飯まだだから一緒におにぎり食べよう!宿題も『れん』でしなさいね。」と声を掛けると、男の子は黙って頷きついて来ました。
おにぎりを食べている間も、宿題をしている間もしばらくは泣いていたのですが、次第に落ち着いてきたのか心を開き色々な話をしてくれました。
私は、近所のおばさんというよりも、ほとんど母親のような気持ちになっていました。
子育て中、何かと寂しい思いをさせた罪滅ぼしをしているような思いでもありました。
4時ごろ、お兄ちゃんの入学式を終えたご両親が迎えに来ました。
彼は、嬉しそうに照れくさそうにペコっと頭を下げて帰って行きました。
良かった。
私にとっては楽しい3時間半でした。