■さて、問題です。
これ何だか分かるかなあ?
わっかんないだろうなあ?
イエ~イ♪
うわっ!古っ!!(古いことすら分からないかな...(笑))
いえいえ。でもこれは、もっともーっと古いのです。
答えは、「柳行李」=やなぎごうり。
実に趣深いたたずまいをしています。
50年以上前、父はこれ一つに衣類や道具を入れて、東京から三重県に、真珠の養殖場の仕事をするために赴任してきたのです。
その頃、八重ちゃんはミキモトの真珠島で、真珠の核入れ作業の仕事をしていました。
のちに二人は結婚をしたのですが、父は八重ちゃんより13歳年上でした。
そしてその昔、肺を患っていたため、片方の肺は機能していませんでした。
ですから、病気の東京もんに八重ちゃんをとられてなるものかと、親戚・仲間から猛反対されたのですが、父の人柄を知る八重ちゃんの家族は、もちろん賛成してくれました。
新居に越すときも、やはり父は、この柳行李一つにに衣類と道具を入れ、母もまた自分の柳行李一つと着物用ケース二つに、嫁入り道具を入れて、新生活を始めました。
残念ながら、母の行李はボロボロになってしまって、3年ほど前に処分したのですが、父の物は今も健在なのです。
このような二人の物語を知っている、思い出入りの柳行李をもらった私は、その時々の状況に合わせて、色々と用途を変えながら、大切に使わせてもらいました。
ひっくり返した蓋に毛布を畳んで入れ、山形の「いずめこ」のようにして、赤ちゃんを寝かせたこともあります。
そして、今は私の部屋の押入れで、プラスチックの衣装ケースに混ざり、異質な存在感をかもし出しながら、着物地や帯地のはぎれを保管しているのです。
独身の頃からの父を知り、その最期を見届け、今の私の背景をも知っているこの柳行李は、きっと私の歴史のピリオドまで、静かに見守ってくれることと思います。