■線路
伊達に移住して、今年で21年目になりました。 今は弄月に住んでいますが、越してきた当初は、西浜の道営住宅(今はありません)に住んでいました。
そして、その住宅の目の前には、室蘭本線の線路がありました。
私は、子どもの頃から鉄道が大好きでした。
若い頃の一時期、時刻表が愛読書だったことがあります。
新宿○○時発の列車に乗り、松本に△△時着。松本電鉄に乗り換えて...。
といった具合に、架空の旅プランを考えては、机上で楽しむといった、ちょっとした「おたく」のはしりでした。
ですから、昼間でも夜中でも聞こえてくる、ガタンゴトンガタンゴトンという、線路の繋ぎ目を列車が通る音や、警笛の音が聞こえることがとても嬉しく、私にとってはこの上ない癒しになったのです。
癒し。何故なら、親戚も友達も誰もいない、まるで外国のような北海道の、デパートもコンビ二もな~んにも無い伊達に来てしまった事を、毎日とっても悔やんでいたからです。
神奈川や東京が恋しくて寂しくて、心底落ち込んでいるときに、列車が奏でる線路の音を聞きながら、この線路は神奈川まで続いているんだわ...、両親や友達ともこの線路で繋がっているんだわ...と思い、少し安心して「頑張らなきゃ」と思い直したりしていたのです。
そうそうある時、私は小さな子ども達の手を引いて、「スタンド・バイ・ミー」よろしく、線路の上を歌を歌いながらお散歩をしていました。
すると、近くを通りかかったご婦人が、とても慌てふためいて「あなた!やめなさい!やめなさい!」と、腕をブンブン振り回しながら走ってきました。
その様子に子ども達共々、とても驚いたのですが、どうも彼女の目には、私達が心中をするように見えたらしいのです。
私達は、「あ...すみません」と言って、仕方なく線路から降りました。
楽しかったんだけどな...。
まあ、やってはいけないことでしたけどね。
こんな調子で、いつも線路に励まされながら、初めの頃の辛い時期を乗り越えてきました。
いまではもちろん、伊達がお気に入りです。
まさしく「住めば都」です。
そうだ!教えちゃう。
「れん」からは、線路の音は聞こえないけれど、近くにとっておきの場所があるのです。
それは、「湯らん銭」の露天風呂。
ここからだと、裸で夜汽車の明りと線路の音が楽しめます。
あれっ!?これってもしかして、向うからも見えるのかしら...?