■「あなたは何色ですか?」
「あなたは何色ですか?」 「私はピンクです。水を入れてみてください。いっそう優しくそして艶っぽく見えますよ。それにきっと水も美味しく感じるはず。」
「そうでしょうか?あなたは本当にピンクですか?今のあなたは到底ピンクには見えません。どう見てもグレーとも黄色ともつかない怪しげな色です。これで水を飲んでも美味しくないし。」
「なんてことを。それは光源の違いによって、あなたの色の知覚が変わったに過ぎません。私は何も変わらないのに、見え方が違っただけで私を嫌がるなんてひどいですね。もっと私の本質を見てください。私はあなたの口に飲み物を運ぶグラスです。あなたの手にしっくりと持ちやすかったでしょう?口元のあたりも良かったでしょう?容量だって丁度良かったはずです。私を照らす光が自然光や白熱灯であっても、蛍光灯であっても、私自身に何も変わりはないのです。」
小樽の北一硝子で買い求めた1個のグラス。
これも湯里から引越して来ました。
白熱灯の光の下、ずっとピンクだと思って使っていました。
それなのに蛍光灯の我が家に来て以来、グレーとも黄色ともつかないような奇妙な色になってしまいました。
いえ。
正確にはそう見えるのです。
あんなに気に入って使っていたのに、グラスを口に運ぶ私の手に愛情が薄れていたことを、どうやらグラスは気付いていたようです。
諭されてしまいました。
ごめんなさい、あなたは何も変わってはいません。
ピンクであってもグレーであっても。
物事、本質を見なければいけませんね。