オジサンはきょうもクタクタ
オジサンはバブルの時代に学生だった。北海道の片田舎から横浜に移り住んだのだから、楽しくて仕方がないと言えば理解しやすいかもしれないが、どうも自分の居場所が無いという妙な孤独感があった。
結局、話しかける相手もなく、かと言ってアルバイトもせず、ダラダラと過ごし、とことんダメになるという目標を設定したことがある。
テレビばかりを見続けたり、近所の八百屋さんが30円で売れ残りのモヤシを山ほど売ってくれたので、数日間とモヤシ炒めとモヤシの味噌汁で過ごしたりした。駅より遠い銭湯へ行くのが面倒で、3カ月風呂を我慢するといった具合だ。
ダメになるのも大変で、親の仕送りだけでは生きていけない。それまで、労働は就職してから死ぬまで続くのだから学生時代は、勉強だけして働かないと粋がっていたが、このままじゃ飢え死にすると体が理解し、コンビニでアルバイトすることに。しかし、ダメ人間に接客などできる分けもなく、さらに夕方の2、3時間、週に2、3回のシフトでは到底食べていけないとう現実に突き当たる。
世間はバブルで盛り上がっていたが、優しくしてくれたのは八百屋のオヤジだけ。5円、10円でモヤシや大根の売れ残りを分けてくれた。親から電気釜を買いなさいともらった5千円はウイスキーに化けていたので、いつも中華鍋で米を煮て食っていたから、芯の固いおかゆみたいなものを大量のモヤシ炒めで味わっていた。どうしたらうまいご飯ができるのか、それが悩みだった。
結局分かったことは、ダメ人間は金がないと生きていけないという教訓だ。そして、ある日腹が痛くてたまらない状況に。
一晩中苦しい思いをして助けを呼ぼうにも、50メートル離れたタバコ屋の赤電話まで行けるわけもなく、このまま死んでも大家さんが家賃を取りに来るまで誰にも発見されないという現実に愕然とした。仮に北海道に電話しても助けは間に合わない。
そうだ、ダメ人間が生きていくには、最低でも身近に友達が必要だということが身に染みた。あぶら汗をにじませながら、生きていたら友達をつくろうと心に決めて、体を丸め痛みに耐えたのだった。
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