むしゃなび編集部
街に活気を取り戻すのが夢!『室蘭ブルーノート』公演直前インタビュー
6月18日に室蘭市民会館で上演されるミュージカル『室蘭ブルーノート』。
1970年代の室蘭を舞台に、現代から迷い込んだ二人の姉妹が、若き日の母の夢「ジャズシンガーになりたい」を叶えるために奔走する人間ドラマ。40年前の賑やかな商店街がステージの上によみがえります!
東京の劇団 Unit Blueju(ユニットブルージュ)と、地元の実行委員会によって制作され、プロの出演者と共に、室蘭・伊達の市民キャストが登場します。歌あり、踊りありのお芝居の劇中歌は、全て書き下ろしのオリジナル曲。そのほとんどを室工大オーケストラが生演奏します。
脚本・演出を手がける広光美絵さん(ユニットブルージュ主宰)は5月17日から、室蘭出身の女優・小俣彩貴さんは6月1日から市内に滞在し、公演に向け市民キャストと稽古に励んでいます。輪西会館で行われた稽古を訪ねました。
歌って踊る市民キャストの皆さん。結構ハードな動きです。でも楽しそう! 演出の広光さん(左)と、主演の小俣さん(右)。いかに観客に「魅せるか」、指導に熱が入ります。Unit Blueju(ユニットブルージュ)のこと
ユニットブルージュが結成されたのは、2010年のこと。もともと俳優養成所の同期生だった広光さんと小俣さんは、お互いにミュージカルが好きなことで意気投合したそうです。
会社勤めをしながら演劇を勉強していた広光さんですが、「いちばん好きなことをしなくていいのかな?」と思ったことを機に、小俣さんと一緒に劇団を立ち上げることに。
以来、お芝居と歌とダンスを融合させたオリジナルなエンターテイメント作品を発表しています。
(画像提供:劇団ユニットブルージュ)
女性ばかりの劇団で、20代〜30代の華やかで綺麗で個性的な女優さんたちが活躍するユニットブルージュ。日本舞踊や殺陣(たて)、着物といった日本の伝統文化を舞台に取り入れていることも特徴のひとつ。日本舞踊というと「古い、よくわからない、年配の人のもの・・」といった印象を持つ人も多いと思いますが、ユニットブルージュでは、レディー・ガガのような最新の音楽に乗せ、派手な着物を着て現代的に踊るのだそう。今回の公演では第二部で日本舞踊や殺陣が披露されます。
演出・脚本の広光美絵さん。物語はどこから??
『室蘭ブルーノート』執筆にあたり、1年半かけて室蘭に通い取材を重ねたという広光さん。物語はどのように生まれたのでしょうか。
市民キャストの柴田龍さん(右から二人目)。演技初挑戦ですが、迫力あるダンスと笑顔が素敵でした。柴田さんの見せ場は「プロポーズの場面」。楽しみです!「輸入ものの多いミュージカルの中で、日本舞踊や殺陣を取り入れ、日本の歴史上の偉人や、素晴らしい日本人の姿をテーマに扱うなど、オリジナルな作品を東京で作ってきました。「何か新しいね」、「楽しかった」など反響が広がる中、2011年の東日本大震災のことは、私にとってとても大きかったです。
それまでは、お客さまを楽しませること、ダンスや華やかな衣装でびっくりさせたり、わくわくさせることばかり考えていたのですが、一瞬、立ち止まりました。
震災が起きたのに、エンタメばかりやっていていいのかな?と。
そんな時、ある方から本当にいい舞台、いい芸術というのは必ず社会と結びついている、と言われて。
芸術と社会の結びつきって何なのだろう?と、考え始め、演劇に限らず勉強するうちに、優れた芸術は観た人が日常や自分の行動を振り返ったり、人生観がちょっとだけ変わる力を持っているということに気がつきました。
〈楽しい〉も大切だけれど、そういう視点をがないと劇団として続かないのでは、と考えていた時に、おもしろい活動をしている人が沢山いるからと誘われ、愛知県岡崎市に取材に行ったんです。
東京では常に人と比べたり、お金だとか、いいマンションといった価値観ばかりですが、岡崎では私と同年代の30代の人たちが、自分のものさしで生きていました。
この人たちの生き方を東京で教えてあげたら、と思い、出会った人たちをモデルに脚本を書き、愛知と東京で上演したのが昨年のことです。(ユニットブルージュ第8回公演「天使の森からの贈りもの」環境省後援)
モデルとなった人たちの作ったお茶や八丁味噌などの物産展も同時開催し、大変好評でした。いちばん嬉しかったのは、私たちもこんなことをしてみようと思った、という感想をいただいたこと。楽しさだけではなく、次の行動につながる何かが提示できたのかなと思います。
じゃあ次はどっちかの故郷だねということで、小俣さんの故郷である室蘭で上演する運びとなりました。室蘭に通って1年半かけて取材する中で、いろんな方に会ってお話を聞いたのですが、皆さん口をそろえて言うのは、「あの頃はよかった」。
だったら、素晴らしかった頃を再現して、またお店を開けようかなと思ってくれたら最高だなと思ったんです。
舞台を観てハイ終わりではなくて、終わったらみんなで商店街になだれ込んで、室蘭やきとり食べて飲んで、街が盛り上がる。そんな公演になればいいなと思います。
極端な話、ミュージカルは誰でも作れますが、大切なのはその先で、お客さまが何を感じたかということ。
この舞台をきっかけに、地域の人の間で、「この街をどうしていこう」という話し合いや交流が生まれてくれたら。その中で商店街の人たちがまたシャッターを開けたり、若い人たちが来て新しくお店を始めたりして、街に活気を取り戻すのが夢ですね。」(広光さん)
女優・小俣彩貴さん。故郷・室蘭の人たちへの思い
「おはようございます!」
輪西会館の空気が一瞬で変わったような、パワフルな声。
稽古に現れた『室蘭ブルーノート』主演の小俣彩貴さんの、写真で拝見していた華奢で可憐な印象とのギャップに驚き・・。声だけでなく存在感もきりっとして大きい。美しさと力強さを兼ね備えた方だなと感じました。
小俣さんはお芝居だけでなく、ジャズ、コンテンポラリー、日本舞踊を踊り、殺陣もこなす女優さん。日本舞踊ではギリシャで行われた公演に出演するなど、世界的にも活躍しています。
踊りは子供時代に始めたのかと思いきや、東京に出てからなのだとか。
休憩中、柴田さんに稽古をつける小俣さん。「私が子どもの頃の室蘭は、今よりももっと、踊りを習えるような環境は少なかったですから。東京に出てミュージカル学校を卒業後に、仕事の現場で叩き上げられて身につけました。
周りは小さい時からいろんな舞台を観て、習い事をして芸を積んできた人ばかり。スタートが遅い劣等生でした。
もしも小さい頃にそういう機会があったら、感性も今よりも変わっていただろうし、仕事にも生かせただろうと思います。だから地元の若い子達と一緒にすることで、彼らの感性に響くものがあったら嬉しいですね。」
「子どもの頃は早く室蘭を出たいと思っていました。田舎だし、何にもないしって(笑)。上京後も3年に一度くらいしか帰っていなかったのですが、帰省の度に人が少なくなって、街が過疎化しているのが、目に見えてわかる。
昔あいさつしてたおじさん、おばさんの顔が思い浮かんで、みんな元気で笑って過ごしているのかな?って。お世話になった人たちに、何か楽しんでもらえる機会をつくる側になれないかな、と思ったんです。
劇団の仲間の力を借りて楽しいショウを届けたい、みんなに笑ってほしい、そんな気持ちです。きっかけは街というか、やっぱり人ですね。」(小俣さん)
率直に話す小俣さん。室蘭で出会ったアツい人たちの姿と重なりました。
舞台に立つ彼女に勇気づけられるのは、都会で活躍したいという夢を持つ子どもや若者だけでは、きっとないはず。
商店街のおじさん、おばさん。地域のおじいちゃん、おばあちゃんも。
お疲れぎみのお父さん&お母さんや、毎日がなんとなくつまらないお兄さん。
もちろん、地元大好きでハッピーなお姉さんにも、ぜひ観てほしいなと思います。
商店街の人間模様の中に、当時を知る人でなくとも、あっあの人私みたい、と思ったり、過去の自分や友人、または家族の姿が見つかるかもしれません。もしかしたらそこに、自分の人生がミュージカルのように、キラキラと輝き出すヒントが隠れているのかもしれませんね。
公演は続く?目指すはジャズクルーズ!
公演が迫り稽古は大詰めですが、芝居に加え、踊りあり歌ありのステージゆえに、教える方も教わる方もなかなか苦労があったようです。稽古の他にも、地方特有の様々なトラブルに見舞われ、東京と室蘭との意識の差を埋めるような作業だったと話す広光さんと小俣さん。
それでも、この取り組みを一過性ではなく2年に1回ほどのペースで公演を継続してゆきたい、と二人は言います。
目指すは、2010年まで10回にわたり開催された室蘭ジャズクルーズのような、地域の人が楽しみにする「まつり」なのだとか。
出演に向け踊りや芝居の練習に励む人や、おなじみの女優さんに会えるのを心待ちにする人、半券を持って公演後に飲みに行くのがイチバン! な人。それぞれの楽しみ方で街全体が盛り上がる、ミュージカルのお祭り。
今回の公演がそんなイベントに成長することを想像して、わくわくしながら輪西を後にしました。
『室蘭ブルーノート』
2016年6月18日(土) 室蘭市市民会館
昼公演 開場12:00/開演13:00 夜公演 開場16:00/開演17:00
チケット 3000円(税込)全席自由
中・高生 前売り1500円/当日2000円
小学生 前売り1000円/当日1500円
小学生未満 無料
【チケット問い合わせ】
ビューティーサロン・キャンパス (TEL 0143-44-9516)、ぷらっとてついち事務局(TEL 0143-43-5846)、室蘭音楽文化協会(TEL 0143-44-9922)
6月12日(日)には入場無料のプレイベントが開催されます!!
『もう一つの室蘭ブルーノート』
港の文学館(室蘭市海岸町3丁目6-12)
6月12日(日)開場12:30/開演13:00~
広光 美絵 さんプロフィール
ユニットブルージュ主宰、脚本家、演出家
【主な活躍】
- 株式会社リフレ「薔薇の滴」コマーシャル企画・構成・監督
- BS11「祭復活を願って走れ!騎馬武者〜相馬野馬追〜」脚本・構成
- 映画「OYAKOの日」脚本・構成
- TV朝鮮 韓国連続ドラマ「百年の花嫁」脚本構成
小俣 彩貴 さんプロフィール
昭和音楽大学短期大学部ミュージカル科卒業
UPS(ユナイテッドパフォーマーズスタジオ)卒業
ミュージカル、芝居、ダンス公演、ライブ、日本舞踊の舞台にて活躍中。
【主な出演】
- TBS「ウエストサイドストーリー」
- レフカダ国際芸術祭 小泉八雲「おしどり」
- レフカダ国際フォルクローレフェスティバル創作日本舞踊
- コンテンポラリー作品「完璧なお城」
- TBSドラマ「緑川警部補 vs 殺人トランプ」ほか
Unit Blueju ホームページ
※記事の内容は取材時の情報に基づいています。(取材2016年)
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- 開催場所
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室蘭市中島町5番街ビル2階(PPS)
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