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影の主役を選んだ人 『dj_hatass=畑吉晃』にプロ魂を見た

12月28日はディスクジョッキー(DJ)の日

皆様、12月28日は「ディスクジョッキー(DJ)の日」だということをご存知でしょうか?



ラジオでのDJ活動の第一人者であり、ラジオ人気長寿番組「オールナイトニッポン」の最初のパーソナリティである糸居五郎さんの命日にちなみ、日本では12月28日は「ディスクジョッキーの日」として制定されています。

日本でDJという言葉がメジャーになったのは、ラジオでMC+曲をかけるというスタイルからだと言われています。

ということで、今回の主人公はDJ歴30年、MC無しの音だけでフロアを盛り上げてきた『dj_hatass』こと畑吉晃さんです。
畑さんは1969年生まれの53歳。
DJの世界との出会いは20歳くらいの頃だそうです。
年代的にはちょうどディスコブーム後半の頃になります。



黒服の人に誘われてこの世界に


「当時は室蘭にもディスコが3~4軒あり、ディスコサウンドが好きだったので遊びには行っていました。でもまさか自分がDJを始めるとは夢にも思っていませんでした。大学生だった僕は、頭を金髪に染めてレストランでアルバイトをしていました。その店にはDJや黒服(ディスコ従業員の別称)の人たち、いわゆる業界の人たちがよく食事に来ていました。そしてある日、彼らにディスコで働かないかと誘われたんです。」


畑さんの将来を決定づける出会いでした。
その中には、今でも一緒に活動をしている先輩DJの中居さんや、室蘭唯一のクラブ『Red Hill』の竹内さんもいました。


そしてもう一つ、衝撃的な出会いとなった音楽が “ハウスミュージック”と"テクノミュージック"。
それは、これまでに感じたことのないほどの興奮と感動を与えてくれたと言います。


「ラリー・レヴァンやフランキー・ナックルズのハウスミュージックと、ホアン・アトキンスやデリック・メイのテクノミュージックに出会ったことで、DJ熱がさらに上がりました。一生DJをやり続けたい!と思ったのもこの頃です。」


「25〜6歳の頃は一番調子に乗っていました。調子に乗りすぎて先輩にもよく怒られました。『自分の趣味ばかり押し付けるな!!』って。今は色々なスタイルが確立されているので一概には言えませんが、本来DJの役割って裏方なんです。主役はフロアで踊っているお客様。だから、フロアの様子を見ながら、『今、この曲じゃないな』とか、『今日のお客様ならこちらの曲に変更しよう!』とか、即興で場のアレンジをしないといけない。『オレの好きな曲をかけたい!』はダメなんです。だから叱ってくれる先輩の存在は有り難かったです。あくまでも理想なんですが、お客様を満足させた上で、自分の好きなジャンル、曲を織り交ぜ、浸透させ、一緒に盛り上がる!それが一番難しいのと同時に最大のやりがいを感じます。」

ところで〜
そもそもDJって?と調べてみました。



DJの歴史

第二次世界大戦中から脈々と水面下で培われていた「曲をかけて踊る」という文化。
1960年、ニューヨークにLe ClubというナイトクラブがオープンしたところからDJ文化の原型が誕生していきました。
ただその頃は、曲を繋げるのではなく、1曲が終わったら次の曲をかけるというスタイルでした。
そして1969年、アメリカのニューヨークで、2台のレコードプレーヤーを使って途切れることなく曲を流すというスタイルが生み出されます。
そして1970年代、世間ではディスコが大流行しました。
また、1980年代後半から1990年台にかけてアメリカやヨーロッパなどでレコードプレイヤーを使って音楽を提供するディスコやダンスホール(以後クラブ)が人気となりました。
その空間で選曲し、切れ目のない音楽でフロアを盛り上げていたプレイヤーがいつしかDJと呼ばれる様になります。
そしてDJの演奏スキルやテクニックの向上とともに、DJが使用するレコードプレイヤー、ミキサーなどが進化していくのでした。

現在のDJスタイルとしては、アナログDJ・CDJ・PCDJなどが一般的だそうです。
・    アナログ(レコード)DJとは、昔からの定番スタイルで、曲の繋ぎを考えながらレコード選びをし、音の厚みで勝負するスタイルです。
・    CDJとは、多くを持ち運べないというレコードのデメリットをCDの普及により解消し、PCやCDレコーダー、メモリースティックなどの駆使によって音源の呼び出しも容易にプレイが出来るスタイルです。
・    PCDJとは、より効率的であることを優先した先に生まれた技術です。持ち運びの出来る楽曲量の多さと、音源入手の手軽さにより、現在は主流のスタイルになっています。

「持ち運び」の利便性がKeyで進化していったスタイルの違いですが、結果、利便性だけではないメリットとデメリットが生じたようです。
音楽のジャンルによっては、アナログに勝るスタイルはなかったり、PCDJをやるにはPCや機材の知識が必要になったりとそれぞれに高度な知識とスキルを必要とされます。

怠らぬキャリア積み上げ

このような歴史を持つDJですが、畑さんはこれらどのタイプでも対応できる実力をお持ちです。
素敵!



「今となってはアナログからスタートできて本当に幸せでした。なぜなら、そこにはすべてのスタイルに通じる『DJの基本』があるからです。その上で、とにかくDJに関わることは主流のスタイルがどう変わっても、なんでも対応できる様になりたかった。数年くらいフロアに出ていない期間もあったのですが、その間もレコードを買わずにはいられませんでした。DJのデジタル化も進んでいた時期でしたが、たまたまパソコン好きだったこともあり、ワクワクしながら勉強をしたり、作曲もどきなこともしたりして、改めてアーティストの偉大さに気付かされたりもしました。だからなのか、しばらくぶりにフロアに出た時、自分自身ではまったくブランクを感じませんでした。情報収集や勉強を怠らずに続けていることは、自分にとっては当たり前で特別なことではありませんでした。」


フロアに出ていなくても勉強を続けるとは、まさにプロ魂です。


アイスホッケーの試合を盛り上げるDJの姿を見学させていただきました

この時は室蘭のチーム対苫小牧のチーム。
お隣にいらっしゃるのが先輩DJの中居さんです。


「数年前から、日本製鐵の社会人アイスホッケー部『室蘭スティーラーズ』のホームゲームでアリーナDJをさせていただいています。このチームは、すごくストイックな練習の成果で、全国トップクラスの強豪チームなんです。関わらせていただけるのは本当に光栄です。」

チームの入場曲や得点が決まった時の『ゴールホーン』も畑さんたち、DJチームのオリジナルMIXだそうです。
その甲斐もあり、この日は見事に勝利!


「ところで、他にはどんなところでDJをされているのですか?」



「若かりし頃から憧れていたDJの竹内さんがやっている室蘭中島町にあるクラブ『Red Hill』に月一くらいで呼んでいただいています。ここは若い世代のDJも多いので一緒にプレイできて楽しいです。それから、最近面白いのはバーやスナックで、通常営業とは違うDISCO系のイベントを開催しています。経営されている方々が、昔ディスコに通っていた世代だったりするので、かなり盛り上がるんですよ!」


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楽しそうに話す畑さんでしたが、少し神妙な面持ちにも…。


「コロナで大変な世の中になってしまって…、おこがましいですが、たまたま自分が好きで続けてきたDJで、少しでも人々に、街に、世の中に、笑顔が戻ったら嬉しいなと思うんです。だから、基本的にはオファーをいただければどんな場所や状況でもできる限り対応します。幸いにして大きい会場から小さなお店まで対応できる音響設備は用意できますし、ディスコ・クラブ系のイベントはもちろん、すでにある企画やイベントのBGM、ちょっとしたスペースの雰囲気作りだけでもお役に立てると思います。」

ブログの最後に畑さんのSNSアカウントを掲載しています。
「DJに関するご相談はそちらからどうぞお気軽に!」とのことです♪

意外な本業とは


さてところで。

実は畑さんの本業は、ジオパーク推進協議会の職員さんです。
そして、筆者もとてもお世話になっている『洞爺湖有珠火山マイスター制度』の担当者でもあります。

とても優しく、みんなに頼られる兄貴的存在です。
そして事務所にいらっしゃる時の畑さんはDJとは全く別のお顔です。


「でもね、DJ熱をさらにアップさせてくれたのは、火山マイスターの存在なんですよ。」

なんと!
それは意外!
畑さんが言うには、火山マイスターの皆さんが一生懸命に勉強したり、講師活動をしたりしている姿にとても感動して触発されたのだそう。


「火山マイスターの皆さんは、自分が信じること、やるべきことを日々実践しています。信念を持ってぶれないその生き方に触れ、シンプルにかっこいいなあと思うんです。だから皆さんの力になりたい!活動を盛り上げたい!という気持ちになります。」

そうか…。
共通項はそこなんだ!

正直に書けば、取材をさせていただく前、事務所にいらっしゃる畑さんとDJをされている畑さんは全くの別人だと思っていました。

どちらかが裏で、どちららかが表。
でも、裏も表もどちらも素敵だなあと。

ところが違いました。
畑さんはどちらも表でした。

舞台に立つ人たちを裏方で盛り上げることに喜びを感じる人だったのです。


「話すのはとてもとても苦手です。でもDJでならば(DJでも畑さんの場合MCは一切ありません)表現できる。曲を選んで作業しストーリーが出来上がる。皆さんが気持ちよく踊れる(活躍できる)場を提供する。最適で心地よい空間は、言葉で伝えなくても音で伝えられる。DJをしていて、時に、お客様との(火山マイスターとも)ものすごい一体感を感じることがあります。その時は最高に幸せです。」

なるほど…。
確かに思い当たります。
畑さんは本当に話すのが苦手でいらっしゃいます。
何かを発表される時、「原稿なしでは話せません」と恥ずかしそうにします。
そして超棒読み…^^;

ところが、一旦機材の前に立つと活き活きとした表情で、機材を自由自在に操り、音で意気揚々と皆様に語りかけ、フロアを盛り上げていきます。
ジオパーク推進協議会の職員さんのときとのギャップがスゴい!


人生の終わりまで『影の主役』を


「ところで、畑さんにとってのDJの魅力ってどんなところでしょうか?」


「そうですね…。音楽や機材について豊富な知識を求められることと、場を読むことの難しさでしょうか。たぶんどちらも自分に向いていると思っています。同時に、先ほどもお話しした様に、そのフロアの雰囲気や求められているシチュエーションに合わせて、ストーリーを作り、何千枚ものレコード(時にCDやPC)の中から曲をMIXしていくという、あまりに自由な正解のないアレンジができるところです。それがビシッと決まった時は最高の喜びです。もちろん主役はフロアで踊っている人、曲を作っているアーティストなわけですが…、今この場を作っているのは俺だぜ!という『影の主役』としての存在になれていることに喜びを感じていたりします 笑』

『影の主役』に喜びを感じるところ。
言い換えると、決して出しゃばらず表現して、場を支え盛り上げるところ。
とても畑さんらしいなあと思います。

「それでは最後に。” dj_hatass “として、将来どうありたいと考えていますか?」


「あの…。人生って楽しいこともあるけれど、辛いこといっぱいありますよね。私自身もそうですし。そんな時、皆様はそれぞれのスタイルでリフレッシュしながら過ごしていますよね。私としては、美味しいお酒を飲んでかっこいい音楽で身体を揺らしてリフレッシュすることを楽しみにしている方に寄り添えるのが嬉しい。音を通して楽しみや癒しの時間を共有できること、そんな空間を作れる『影の主役』でいられるだけで嬉しいです。それは、火山マイスターの担当者としても同じ気持ち。だから死ぬまでずっとこのままで居たいんです…。いや、目指します! ケビン・サンダーソン(アメリカのテクノミュージシャン)の”グッドライフ”を聴きながら死ねたら本望だと思っています。」

” dj_hatass =畑 吉晃 ”は、人生の終わりまで『影の主役』を望み、大好きな曲で送って欲しいと願う、DJのプロでした。

ディスコ全盛期を生きながら一度もディスコのドアを開いたことがない筆者ですが、人生初のディスコは” dj_hatass “に踊らせていただこうと思います。


[Instagram]
https://instagram.com/dj_hatass?igshid=YmMyMTA2M2Y=

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