伊達市有珠町のまなびの里パークゴルフ場へ立ち寄ったある日の午後。
売店に海苔や海藻、アサリ、ツブ貝が並んでいるのを見て目が釘付けになった。

おっ「有珠湾産」
と書いてある。値段も手頃だ!
有珠産の海苔が地元で出回っていたのか・・・

まなびの里PG-5
まなびの里PG-1

レジの方に伺うと、親切に生産者に電話をしてくださった。

「はじめまして、そ・ら・み編集部と申します。
あのー、アサリや海苔があんまり美味しそうで・・・」

受話器の向こうで女性が答えた。

「美味しそう、でなくて本当に美味しいよ(笑)。
うちは手作業でやっていて、売り切れ御免だから取材は・・」

というところをお願いして、買ったばかりのアサリ片手にいざ、有珠の海へ!

有珠の海

   有珠・中野水産のおかみさん!

海藻漁師中野さん-15電話の声の主は、有珠湾で「採介藻漁業者」(海藻専門の漁業)を営む「中野水産」のおかみさん、中野智子(のりこ)さん
「今日もアサリ掘りして戻って来たところ」
と言いながら、中野さんは自宅横の作業場で、「マツボ(マツモ)」のごみ取り作業をしていた。
マツボは春先に採れる海藻で、椀物に入れるととても風味が良い。
板状にして天日で干し、室内で仕上げ乾燥をする。
袋詰めの前に、小さなエビなどのごみを払って仕上げるが、細かくて手間のかかる作業だ。

海藻漁師中野さん-18 マツボ(マツモ)

中野さんは積丹半島出身で、有珠の漁師の家に嫁いできたのは22歳の頃だという。
会社勤めをしていた夫の龍一さんに代わり、海藻漁師として長年働いてきた。
3年前、龍一さんの退職を機に漁業の免許の名義を変更し、現在は夫婦で漁をしている。

中野水産では、海藻や貝類、海苔などの加工品を扱うが、一口に海藻といっても、マツボ、イワノリ、ワカメ、フノリ、テングサ、ギンナンソウなど様々な種類がある。 

海藻漁師中野さん-29 ワカメ

海藻の多くは2月から3月にかけて収穫し、その他の主な時期は、
アサリ(2月~7月上旬)、ウニ(6月中旬〜8月)、ツブナマコ(11月~2月)、アワビ(12月)など。

真冬の海には厚さ5ミリのウエットスーツを着て入る。
さ、寒くないんですか?
「寒くないよ。寒いのは顔だけ」

   中野水産オリジナル・海苔の佃煮は絶品!海藻漁師中野さん-06

昨年8月には作業場の向かいに加工部屋を建て、食品製造の許可を取得し、ノリの佃煮の製造も始めた。
これが中野水産自慢のオリジナル佃煮なのだ。
海苔の佃煮といえば普通、イワノリを使う。
しかし中野さんはギンナンソウにつく「耳ノリ」を利用して作ってみたところ、食感がよく美味しく出来上がったそうだ。

こちらがその佃煮。
海藻漁師中野さん-01
実際に食べてみると、とろみがあってスルスルっと口に入る。
風味がよく旨い!ご飯やお酒によく合う。
そして安いのも魅力。まなびの里の販売コーナーでぜひ手にとってみてください。

なんでも手間をかければ美味しくなる、という中野さんだが、佃煮だけでなく、海藻を採るための様々な用具も手作りしたり、既製品に手を加えて自作しているのものがほとんどだ。海藻漁師中野さん-22採った海藻を種類ごとに分けて入れる網もそのひとつ。
収穫した海藻が混ざらないよう、ご主人が考案してステンレスを加工し手作りしたもの。
別々の網を組み合わせて合体させている仕組みで、外すとバラバラになるのだが、何度かやって見せてもらっても「・・・?」組めない。 まるで知恵の輪。
これはぜひ特許を・・・と思うのですが中野さん、いかがでしょう?

  「宝物がいっぱい」有珠湾を熟知するベテラン漁師
海藻漁師中野さん-04

有珠湾には島がいっぱいあって、潮が引くと顔を出すのだという。
海水浴以外で海に入ることのない筆者は全然知らなかった。
手書きの地図を見せてもらうと、確かに小さな島が幾つも幾つもある。島ごとに採れる海藻も違うのだそうだ。
中野さんは長年の経験と勘で、どの島でいつ何が採れるかはもちろん、潮の満ち引きや波の加減、風向きを読んで海藻の生える時期を読む。海藻漁師中野さん-08
潮の満ち引きによって岩場に降りれるところ、降りれないところがあり、深い場所でも命綱なしで岩場にしがみついて海藻を採る。波がどこから来るかわからないから、綱があるとかえって危険なのだ。

「怖い目にあったことももちろんあるよ。波には追いつけないから。迫力が違う。」

一昨年から20代の夫婦に頼まれて、一緒に海藻漁をしながらノウハウを伝授しているそうだ。
中野さんの知恵と技が、若い漁師さんに伝えられているというのは嬉しいことだ。

それにしてもお話を伺って有珠湾の豊かさに驚いた。

「有珠の海には、宝物がいっぱいあるんだよ。」と中野さんは笑った。

有珠湾


その夜、まなびの里で買ったアサリを食べてみた。
中野さんのアサリは砂出しいらずで超新鮮と評判だ。その秘密は、掘ってから砂出しをしてまた海に下げておくから。

「間違って砂出ししてしまった人が、あっちゃこっちゃ跳ねて大変だったって。元気すぎて!」

と言っていたっけ。気をつけて酒蒸しにしよう・・・。
肉厚でプリプリして歯ごたえが堪らない。旨味も濃厚!!

「あ、海の味がするね。」と小学生の息子が言った。

海藻漁師中野さん-30

中野水産の商品は下記の2箇所で販売しています。
売り切れることもあります。
あらかじめご了承ください。

まなびの里パークゴルフ場

北海道伊達市南有珠町141番地2
TEL 0142-38-2151
OPEN 毎年4月上旬〜11月中旬(予定)
※毎月第2・4火曜日休業・芝生養生のための臨時休業あり。
※耳ノリの佃煮はまなびの里のみで販売しています。

道の駅だて歴史の杜 観光物産館

北海道伊達市松ヶ枝町34番地1
TEL 0142-25-5567
OPEN 午前9時〜午後6時
CLOSED 12月31日〜翌年1月4日(臨時休館する場合あり) 


※記事の内容は取材時の情報に基づいています。(取材2017年)  


関連記事

大滝・花Cafe Aivalleyの「赤いはちみつ」

イチゴ狩り7月初めまで@そうべつくだもの村

空師のしごと 三浦真悟さん


sorami1 そ・ら・み 特集

 

 


むしゃなび編集部

アクセス総数:190,254

コメント

コメントを書く
お名前 必須

名前を入力してください。

メールアドレス
(表示されません)

正しいメールアドレスを入力してください。

コメント必須

コメントを入力してください。

コメントに不適切な言葉が含まれています

パスワード必須

パスワードを入力してください。

パスワードは半角小文字英数字で入力してください。

Cookie

むしゃなび編集部からの関連記事

むしゃなび編集部

アクセス総数:190,254

むしゃなび編集部のよく読まれている記事(直近期間)

むしゃなび編集部のカテゴリー

むしゃなび編集部のハッシュタグ

むしゃなび編集部のアーカイブ