■伊達の秋の実りを東京で味わう
伊達のOさんの家にはそれは大きな栗の木がある。 樹齢は50年を超えているらしい。
あまりに大き過ぎて近所迷惑なくらいである。
でも、Oさんはそんなことはお構い無しに、この栗の木を大事にしてることを私は知っている。
この栗の木にはそれはそれは沢山の実がつく。
ある時、Oさんは『10月5日に栗の収穫をするので、それをお土産にして東京に持ち帰ってくれ』と私に言った。
栗が大好きな私はそれが楽しみで、時々、密かにOさんの家の前を車で通って、栗の育ち具合をチェックしていた。
帰る日が段々と近付いて来たのに、栗のイガが一向に茶色にならない。
これじゃ、帰る日までに収穫は無理じゃないかと思った。
そんなある日のことである。
それは確か7日の夜だったと思う。
夜になって強風が吹き荒れた。
その風でOさんの家の栗が地面に落ちた・・・らしい。
それをOさんは朝の5時から起きて、他人に拾われる前に自分で収穫して、わざわざコテージまで届けてくれた。
私はそれを持ち帰って、Oさんの指示通りに天日干しにした。そして、その栗を茹でて食べたら、甘くてそれは美味しかった。
小さい栗はコテージの周りにある木から落ちた山栗を私が拾ったものである。
Oさんの栗は元々甘いのか、天日干しをしたから甘くなったのかは定かでない。
東京に戻ってしばらく経つが、まだ私は伊達を楽しんでいる。
(おまけの話)
伊達からの帰りに、大洗港でカーフェリーを降りて、高速道路で東京に向かう。久し振りの本州の高速道路である。
北海道とは違い、車も多い。
友部JCTで常磐道を行かなければならないのに、久し振りの本州でボーとしていて北関東自動車道へ入ってしまった。
この道は笠間へ行く道である。
女房は助手席で私を冷たい目で見ている。
まずいなーと思いながらもUターンも出来ず、先に進む。
やっと次の出口で高速道路を降りて、カーナビで元へ戻るようにセットした。
一般道を走っていたら、岩間に近付くと栗の販売の看板が目立つようになった。
『焼き栗あります』という魅力的な看板を見つけ、横道だが入ってみる。
看板に釣られて行った農家は3台の焼き栗製作装置で栗を焼いている。大繁盛である。
試食をもらって食べてみた。これは凄い。
普通の栗の2倍くらいの大きさがある。
しかもそれが甘くて美味しい。
初めてこんな美味しい栗を食べた。
思わず、1袋2800円の焼き栗を2袋も買ってしまった。
私の不注意がこんな素晴らしい出会いをさせてくれたのだ。女房も私を冷たい目で見ていたことを忘れて、『来年も伊達の帰り道はここに寄って、焼き栗を買おう』なんて言っている。
ハワイの和尚もいいことを言っている。
『道に迷ったおかげで、たくさんのいい人に会えたなー』・・・と。
(教訓)道路も人生も寄り道も悪いことばかりではないのである。