■貧富の現れるバス路線
マンションの前のバス停には「都04」と「門33」の2路線のバスが来る。「都04」は「東京駅丸の内南口行き」で、「門33」は「亀戸駅行」である。
この2つの路線には際立った大きな違いがある。
「都04」の朝は通勤するサラリーマンで、非常に混み合う。
(今回の写真は自宅から月島経由で、門前仲町までの間のステイ週間中の写真です)
月島にはまだ路地裏には昭和の名残りの長屋がある。
また越境入学で、アルマーニの制服で世間を騒がせた泰明小学校へ通う生徒達も乗って来る。サラリーマンは東銀座で降りて浅草線に乗り換える人、銀座4丁目で降りて銀座線か丸の内線に乗り換える人、
有楽町で降りてJRに乗り換える人、終点の東京駅まで行って新幹線などに乗り換える人、丸の内に会社のある人に分れる。
昼頃からは銀座に買い物や用事の為に出掛ける、よそ行き姿の奥さん方が増える。
月島の「もんじゃ通り」(ステイホーム週間中)
「門33」は生活路線で、サラリーマンは殆ど乗っていない。この路線に乗っている人は、高齢者が多い。
病院に行く人、月島か門前仲町の安いスーパーに行く人、パートに行く人、老人クラブに行く人達だろうと思う。
この路線に乗っている人は、ほとんどが無料のシルバーパスを持っている。だから2つの路線で、乗っている人達の身なりや服装が全く違う。
殆どの「もんじゃ屋」は臨時休業していた」(ステイホーム週間中)
私は外出自粛の間でも、人混みを避けて運動のために時々、門前仲町まで歩く。ゆっくり歩いても30分くらいで、あまり運動にならない。
ある時、女房に「門仲まで行くなら、ドーナツを買って来て」と言われた。そこで門仲でミスター・ドーナツに行くことにした。
「もんじゃ通り」にある、昔懐かしい名物交番。
ドーナツを買って、帰りはバスに乗ることにした。
バス停のベンチに座ってバスを待っていたら、80歳以上と思われるお婆さんが近付いて来た。
私は席を譲ろうと思い、「バスに乗るのですか?」と聞いた。
するとお婆さんは、私の予想を遥かに超えた言葉を発したのである。
住吉神社の近くの「佃小橋」。後ろに見えるのは「リバーシティ21」。
私がいま買って来たばかりのドーナツの袋を指さして、「それチョウダイ!」と言った。
人は誰でも予想外のことが起きると、うろたえてしまう。
私もその時はうろたえて、「駄目!あげられない!」と言ってしまった。お婆さんは悲しそうな顔をして、そこからヨロヨロと去って行った。
住吉神社の「藤棚」が満開だった。
私が見たところ服装からして、お婆さんはホームレスではないように感じた。ボケてしまって、徘徊しているのだろうか?
お腹が減ってしまったのだろうか?
後で落ち着いて考えたら、ドーナツはたった551円だったのだから、お婆さんにあげて、私はもう一度、買いに行けば良かったと悔やんだのであった。
リバーシティから見た隅田川に架かる「新大橋」。
(おまけの話)
お婆さんが去ってしばらくしたら、今度はジイサンがベンチの私の席の隣に座った。そして手に持っていた物を、私との間に置いた。
なにかと思い、私は何気なくそれを見た。
そこには2つの物が置いてあり、1つはコロッケパン、もう1つは野菜サラダだった。
門前仲町の交差点。
どちらも表面に赤字で大きく、「半額」と書いたシールが貼ってあった。しかもレジ袋にも入れず、手に持って来たらしい。
すぐ近くには安売り店の「赤札堂」がある。
そこで買って来たのだろうか?
身なりもそれほど悪くない。やはり80歳前後か?
ミスター・ドーナツ(門前仲町店)
バスが来たので私は乗ったが、その人も乗り込んで通路を挟んだ隣の席に座った。相変わらず2つのパンを手に持っている。
なぜレジ袋に入れなかったのか?、有料となったレジ袋代の3円が勿体ないのか?
「ひょっとして?」という思いが頭に浮かんだ。
最近多いと言われている、高齢者の万引きではなかったか?
この日、たった1回の「門33]だったが、「都04」とのあまりの違いに驚いた。
門前仲町のバス停でバスを待つ私。