■深大寺の「だるま市」
同じマンションに住む友人のXさんを誘って、調布市の深大寺に行った。遠方に泊りがけの旅行には行くのに、写真撮影などで23区から出るのが億劫になっている。
以前は郊外の小金井に住んでいたくせに、今は9年ですっかり都会人になってしまった。その小金井にも近く、以前はよく蕎麦を食べに行っていた深大寺に行った。
「深大寺そば」の「大師茶屋」
Xさんは一昨年に女房を風呂の事故で亡くし、いまは一人暮らしをしている。喫煙者のXさんは女房のいた時は部屋でタバコが吸えないので、毎日、何回も外に出ていた。
ところが今は気兼ねなく部屋でタバコを吸えるので、引きこもり状態になっている。そこで私がXさんを外に連れ出すことになったのである。
「もりそば」(750円)を食べたが、以前と同じく美味しかった。
深大寺に行くには大江戸線で新宿に出て、そこからJR中央線で三鷹に行く。更に「調布駅行き」のバスに乗って、「深大寺入口」で降りる。
三鷹駅からのバスには以前には何回も乗った。
私が癌の手術をしたのが杏林大学病院で、術後のPSA検査のために5年近くも通った駅で、路線は違うが思い出深いバス乗り場なのである。
深大寺の山門を入り、振り返って参道を見る。
最近は新型コロナウィルスの影響でイベントが中止になるので、行く前にネットで調べた。すると次のようなことが書かれていた。
「来る3月3日、4日の深大寺元三大師大祭だるま市は、新型肺炎に関する情勢から、寺としての主要行事である大規模なお練り行列について中止致します」。
「しかしながら、古来の伝統行事でもあり、だるま等の出店自体は各店の判断となるため、寺ではだるまの目入れについて極力対応致します。おでかけの際には各自で感染防止に十分ご配慮ください」とあった。
本堂の前の境内は「だるま屋」で埋め尽くされている。
「深大寺入口」のバス停を降りて深大寺に行く途中に、私が以前に贔屓にしていた蕎麦屋がある。その店の名は「大師茶屋」である。店の前では、10人ほどが席の空くのを待っている。
深大寺では色々な店で蕎麦を食べたが、私は大師茶屋が一番気に入っている。店に入り「モリそば」と「味噌おでん」を注文する。
味噌おでんというのは蒟蒻の田楽である。
懐かしい味だ。そばと田楽で、10年前の小金井時代に引き戻された。
「だるま屋」は多いが、お客が少ない。
(この4~5倍の店が出ていた)
食後に歩いて深大寺へ向かう。深大寺の山門を入ると、達磨屋がたくさん出ている。大小様々な達磨で、中には金色の達磨もある。
店の数の割に人出は少ないように感じた。
売り手の掛け声も無く、なんだか静かだ。
ここにも新型コロナウィルスの影響が出ているようだ。
「だるま」は昔と違い、今はみんなビニールに包まれている。
奥に進むと「だるまの目入れ」の場所があったが、そこがガラ空きだった。店で買った達磨に深大寺の僧侶が、ここで目を入れてくれるらしい。そこで初めて知ったことがあった。
私は達磨の目は墨で丸く円を書くのかと思った。
ところが正式には達磨の左目に阿吽(あうん)の「阿」を書く。そして願いが叶ったら、もう片方に「吽」を書き入れるのだそうだ。
また知らなかったことをひとつ覚えた。
「だるまの目入れ」の場所は行列も無く、係員は手持ちぶたさだった。
例年通りに行列を整理する場所を作ったが、無駄だった。
(おまけの話)
若い時は気が付かなかったが、年をとって気が付いたことがある。
私の父は56歳で亡くなり、母は同居をしていなかったので年寄りのことは分らなかった。
ところがこのマンションに越して来て知り合った人達は、みんな年寄りだった。それまでは自分は若いつもりでいたが、気が付いたら彼らと同じだったのである。
築地「藪そば」
マンションの友人のYさんは、いま話題の「老々介護」である。
奥さんが動けないので、自宅で彼が介護をしている。介護保険の適用を受けているのでサービスは受けているが、トイレの世話はヘルパーに頼むのを本人が嫌がるのでYさんがやっている。
だから彼は2時間以上は家を空けられないのである。しかも家に介護の出来る人がいる場合は、受けられるサービスも限定されるらしい。
天ぷらそば(1700円)
家族の介護を受けていると、区役所から介護人に1年に1回だけ1万円の買物券が送られて来る。彼は外出もままならないので、有効期限が近付いて来た日にそれを使うために私を誘って来た。
そして他の友人も誘って近所の日本蕎麦店に行き、4人で「天ぷらそば」を食べた。
天ぷらそばを食べながら考えた。
私は健康で介護の世話にもならず、今のところ幸せである。
せめて近くにいる後期高齢者には親切にしよう。
外の壁に「We have English menu」と貼り出してあり、外国人のカップルが我々を見て、同じ天ぷらそばを注文し食べていた。