むしゃなび編集部
お不動さんを訪ねて(室蘭市天神町)
先々月、知利別町生まれの私にとっては懐かしい場所、
「お不動さん」に立ち寄る機会がありました。
貴重なことに、
この場所を開いたという沖本妙道師のひ孫、沖本洋子さんと一緒でした。
ちょうど雪が積もった日で、
そこにはとてもきれいな風景がありました。
空気が透き通っていて、気持ちがすうっと静かになりました。
そして、日を改めて、
沖本妙道師から5代目にあたる、やしゃ孫、中学2年生の沖本拳一くん(通称:拳ちゃん)と一緒にここを訪ねたのは、つい先日のことです。
事前にお不動さんに問い合わせた時「ゴマを焚く日に来たらいいよ」と勧められたので、その日に訪ねることになったのですが、
胡麻を燃やすのか!
と、小さな黒ゴマの粒を思い浮かべている自分がいました。
<神社のようなお寺>
さて、この場所は「お不動さん」と呼ばれて皆に親しまれていますが、正式なフルネームは「真言宗醍醐派 天神山不動尊清瀧寺(てんじんざんふどうそんきよたきじ)」。
名前からすると、お寺です。
しかし神社のような鳥居が何箇所にも立っています。
「お不動さん」は「不動尊(不動明王)」のこと。
不動明王、八百万(やおよろず)の神や、弁天さま、というと
神社で祀られている神様たちでは?
「真言宗は他宗教に対して寛容的で、神道等の御霊信仰と相性の良い密教思想を併せ持つ宗派」であり、その他にも、独自の歩み、あり方で受け継がれてきたお寺なのでした!
「坊主丸もうけ」なんて言葉がありますが、
このお寺は、いわゆるそういう「葬式寺」ではなく「祈祷寺」なのでお布施をもらったり檀家さんがいたりということがなく、気持ちのある方たちの自主的な奉仕で維持されています。
素晴らしいことです。しかしその苦労は、事務局長さんの笑い混じりのお話からも理解できました。(内容は下記に)<護摩を焚く>
お不動さんでは毎月4回「護摩(ごま)」を焚きます。
・・・すでにお察しの方も多いと思いますが、燃やすのは黒ゴマではありません。
願い事、祈り事を書いた木のおふだ(護摩)を燃やして天に届けるのです。
届け先は日によって違います。(最下記、日程を参照)
一緒に行った拳ちゃんに「あたし食べるゴマだと思ってたさ」と耳打ちすると、
くすっと笑われました。
血のつながりがあるとはいえ世襲で受け継がれるわけではなく、今回ほぼ初めてここを訪れた彼なので「僕も」と返ってくるかと思いきや、護摩が胡麻ではないことをきちんと知っていたのです・・・。 何も書かれていないおふだは祭壇前に置いてあり、いつでも誰でもいただくことができます(寄付500円)。
そして祈願したいことを書き、納めます。どんな願いでもいいそうです。
「達筆で書かなくてもいいんだよ。達筆すぎて読めないのは駄目だよ、ちゃんと読めるように、普通に書けばいいんだよ」とのこと。
護摩を焚く日なら、その場で書いて納めます。遠方の方は、このおふだを郵送で届けてもいいそうです。
<お不動さんのはじまり・霊泉>
かなり昔のお話です。
開拓時代、この天神町に分け入った3人の男がおりました。
ここがまだ、木々と熊笹におおわれた深山の中だった頃のことです。
3人は、現在の崎守町あたりに住んでいましたが、食料を求めて、ここまで栗拾いに来たのでした。
ふと、小さな沢に、小川が流れていることに気ずきました。
喉をうるおせる流れに感謝しながら上流へと辿っていくと、湧き出す泉があるではありませんか。
『清水が流れ落ち、或いは小滝となっていて、沢の行き止まりは立木の枝葉が生い茂り、水音を聞くだけの静寂さがあり、三人はこの良質な浄水の思わぬ発見を喜んだ』
(山内孝彦氏による30年前の文献「室蘭地方史研究」より)
この湧き出す水の話を聞いた高橋栄作という人がいました。3人と同じ地区に住んでおり、長く眼病に悩んでいましたので、瀧(滝)の水で目を洗いに通い勉めたところ、ついに治癒して大喜び。
感謝の気持ちで、同郷の者と相談し、自分らで彫った不動尊像を祀りました。不動尊は悪いものを追い払うという神様です。
「眼病に効験のある霊水」として口コミで人々に広がり、参詣する人が増えていきました。
ここまでは明治時代のお話です。
ここからは大正時代のお話。
やがてふたたび、村から人が出て行き、この辺りは無人の山中となりました。
時は流れ、もう誰もそんな泉があったことも記憶から消えた大正5年のことです。
母恋に住んでいたある女の人が夢を見ました。
『ある夜の夢のお告げで、東方の山に湧き出る霊水の場所を知らされて』と伝えられています。
その人は夢で聞いたことを頼りに道のない山の中に入って探しました。
そしてついに、夢のお告げの通り、霊泉を探し当てました。
この女の人というのが、誰あろう沖本妙道師。
拳ちゃんの、ひいひいおばあちゃんなのです。
文献には泉を見つけた時の沖本妙道師の心情を表して、
『四囲の環境と云い霊水の滾々盛んに流れ出るようすに深く感じ入り~』
と、綴られています。
事務局長の関根 実さんはこう語ります。
「沖本道師はもともと神託のある方で、大変な思いをして奥の院(霊水の湧き出るところ)を見つけてから、ここに道場を作って、不動尊像を祀ったり、簡単な建物を建てて弟子を育てたんだよ」
道場とは、空海の教えの流れを汲む修験道場で、「垢離取(こりとり)」や、「お籠り」をするための簡素な籠堂などが設けられたそうです。
「それを口伝えで聞いた中田仁三郎という人がいて、商売のことで祈願してご利益があったらしくてね。古物商でお金がある人だったから、資産を投じてここを整備して維持に尽くした。だからここは、沖本道師と中田さんの二本柱があったからこそ今、在るんだよ」
そして、出入り口の方を指して、
「高齢者が多いから車椅子でも入りやすいようにバリアフリーにしたいんだけど、ここは皆でやっていて儲けなんてないから改装もできない。それで皆で一枚づつ宝くじを買えばそのうち誰かは当たるんじゃないかって話し合ってね」
と、笑いながら。
この寺はまた、昭和にかけて、二度の法の改正を通って来ました。
「宗教団体法というのができて、どこかに所属しないと駄目だということになって、成田山別院の成田山青龍寺になったんだけど、そのあと信教の自由が守られる法律ができたりして自由になって、それで天神山不動尊青瀧寺になった」
奥の院の霊水は、昔より水量は少なくなったものの今も絶え間なく湧きだしていています。毎年、保健所の水質検査も受け、飲用として合格しているので安心してください、とのことです。
「ここの水は硬水(ミネラル分が多)なので飲みにくいかもしれないし、胃腸の弱い人は沸かしてからお茶なんかで飲んだらいいよ。私は水割りが一番だけどね」と関根さん。
この水を汲みに来る人は多く、遠くからも訪ねて来ます。
その昔、高橋翁が自ら刻んだ不動明王碑が、現在も奥の院に祀られています。
<拳ちゃん、お接待の蕎麦をいただく>
護摩修法が終わったあと「お接待があるから一緒にどうぞ」と、声をかけていただきました。四国八十八ヶ所遍路と同じ、お接待。
「誰でも来た人は食べていいんだから」と、近所に住んでいるというおかあさん。
そのおかあさん、拳一くんを見て大きな笑顔で言いました。
お「沖本道師のお孫さんだってねえ」
拳「・・・いえ、ひいひい孫です」
お「ああそおお!よく来たねえええ」
厨房にいたおかあさんたちも、
「若いから何杯でも食べられるっしょ。好きなだけおかわりしなさいよ!
そのあと、通りかかる人ごとから軽くチヤホヤされつつ、蕎麦を3杯たいらげた拳ちゃんなのでした。
本堂を出て車に向かいながら、こう言いました。
拳「カフェとか行くより、ずっと落ち着く」
私「そっか、私もなんか気持ちがスッキリした」
拳「心のデトックスというか」
おおお! 中2にしてこの言葉。君はいったい。
そしてこの後、室工大で行われるセミナーに午後1時から参加するというので車に乗って時間を確認すると、すでに1時の10分前。
私「なんだ、じゃあ、お昼食べられて良かった!」
拳「うん、ほんとよかった。昼飯代、浮いたし」
というわけで、ますます本日いい感じです、といった面持ちの拳なのであった!
また、本堂には十一体以上の木像があります。
一つ一つをじっくり眺めてお参りするのも、いいものです。
~~~<沖本妙道師の逸話・洞爺湖弁天島(仮)>につづく!~~~
ホームページはこちら
北海道室蘭市天神町19番25号
電話 0143-44-4483
毎月の護摩修法の日
3日 毘沙門天(びしゃもんてん)への祈願
15日 八百万の神(やおよろずのかみ)への祈願
21日 弘法大師空海への祈願
28日 不動尊(ふどうそん)への祈願
変更に成る場合もあります。時間について、また、
そのほかの行事や厄払い等についても、
上記にお問い合わせ、またはホームページをご覧ください。
拳ちゃんも参加した「ロボットアリーナ」でのセミナーほか、
室工大で一般人も楽しめるスポット紹介は、このあとすぐ!
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