心の伊達市民 第一号

謎のスパゲッティ 

同じマンションに住む友人が(Xさん)言った。
『私がここへ越して来る前に住んでいた三鷹駅のすぐ近くに、とても美味しいスパゲッテイがある。機会があったら、是非とも案内したい』。スパゲッテイは美味しいといったところで、高が知れている。


私は『ちょっと遠いから、そちら方面に行くことがあったらお願いします』と言っておいた。
グルメとは言えないXさんの話だが、何だか謎めいたスパゲッテイではある。



電車の中から見た風景(右奥に小さく富士山が見えた)


話の様子ではイタリア料理レストランではなく、駅近くによくある昔ながらの喫茶店のような店らしい。
Xさんは私より7歳も年上だし、体調も万全でなく要介護の認定も受けている。
まだボケてはいないと思うが、要介護の人とわざわざ三鷹までスパゲッティを食べるだけに行きたくなかった。ところがある時、そのスパゲッティを食べに行くことになった。



東京駅から特別快速に乗り「三鷹駅」で下車。


その理由であるが、私が色々と面倒を見ていた男(Yさん)が、昨年に藤沢から三鷹に越して来た。
そして彼から『一度は家に来て下さい』と言われていたのである。
わざわざ三鷹のYさんを訪ねるなら、「例のスパゲッテイを食べてもいいかな」と思った。
そしてXさんにその事情を話して、三鷹にスパゲッテイを食べに行くことになった。



スパゲッテイ屋の「ふらんすや」は37年の歴史がある。


ある日の土曜日に、私とXさんは三鷹に向かった。
スパゲッテイ屋は駅近くではなく、5分くらいは歩く距離だった。
店は小さく客席数は15席くらいで、元々はケーキ屋で店名は「ふらんすや」だった。


席に着き、メニューを見て驚いた。なんと食べ物はスパゲッテイ以外は無く、しかも19種類もある。
スタンダードのミートソースから、変わり種では「クラムチャウダー」とか「牡蠣と小松菜の中華風」などという初めて見るメニューがあった。殆どが980円(コーヒー付き・税込み)だった。



「茄子のミートソース・コーヒー付き」(980円)


私は失敗したくないので「ミートソース」にしたが、味はマアマアで助かった。
元々がケーキ屋ということで、食後にXさんのお勧めの「洋ナシのシャルロット(380円)」を注文した。
やはり都心と違って、値段はかなり安い。
ケーキを陳列してあるケースが冷え過ぎていたらしく、ケーキが冷たくて参った。


Xさんから「スパゲッテイとケーキはどうだった?」と聞かれたので、『美味しかった。でもわざわざ三鷹まで食べには来ないだろう』と正直に答えるしかなかった。そして三鷹に住む妹を訪ねるというXさんと駅で別れたのであった。



ケーキの種類はあまり無く、都内と比べると値段が安い。


(おまけの話)
Xさんと別れてから三鷹駅に向かったら、昔のことを思い出し1人で三鷹駅近くを懐かしくて歩き廻ってみた。ここには武蔵野税務署があり、私が現役の時はその外郭団体の「法人会」に属していて友人が多かった。駅近くの女性会員だったHさんのビルが近いので、その前まで行ってみた。
そこは既に売却されたらしく、彼女のことも分からなかった。



JR中央線「三鷹駅北口」(今も変らず懐かしい光景だ)


また小金井の自宅を建て替える為に、40年近く前に私達家族は三鷹に1年間、住んだことがあった。
その時に貸家を紹介してくれた不動産屋は店舗こそ綺麗になったが、同じ場所に相変わらず小さいままあった。三鷹駅前の大地主のDさんのビルもそのままあったが、もう息子の代になっているはずだ。
懐かしさ半分と時代の変化を感じたが、もう全ては「忘却の彼方」に行ってしまっていた。



三鷹駅北口は南口と違い、あまり変わっていなかった。


三鷹駅から電車に乗り、1駅先の吉祥寺駅で降りたのには事情がある。
私がYさんを訪問する約束の前日に、詳しく家の場所を聞いたら「三鷹ではない。富士見ヶ丘です』と言われて焦った。なんとYさんは三鷹に引っ越したのではなく、井の頭線の「富士見ヶ丘」に引っ越したのであった。年をとると「早とちり」も増えて来る。私だけかな?



吉祥寺駅から井の頭線に乗って「富士見ヶ丘駅」で降りた。


吉祥寺駅から井の頭線に乗って「富士見ヶ丘駅」で降りると、改札口でYさんが待っていた。
Yさんは元は台湾人で、日本に帰化している。私は彼のオヤジとは親しくしていて、何回も台中の家を訪ねたことがある。もう20年くらい前になるが、そのオヤジさんの葬儀の為に女房と一緒に台湾に行ったこともある。


オヤジさんもオフクロさんも日本時代に教育を受けた人達だったので、日本人以上に日本的な人達だった。
Yさんと初めて会ってのは、彼が日本に留学して来て以来だから、もう40年も経つ。
その間には大学卒業、就職、結婚、離婚、会社設立、倒産、破産、就職、再婚、独立と目まぐるしい人生があった。



Yさんの家の玄関を入ると、中華風の掛け軸があった。


Yさんは駅から歩いて数分のところにある、洒落た地区の低層マンションを借りて住んでいた。
とても閑静な一画で、かなり前に一世を風靡したサラ金の帝王の「武富士」のオーナーの自宅も近くにある。


行く前にYさんに聞いた。『お土産は何が欲しい?』。彼は迷うことなく『焼き魚』と言ったのにはビックリした。母の介護の為にアメリカに行っている奥さんは不在で、居間でお茶を飲みながら昔話に花が咲いた。帰りは「井之頭公園駅」で降りて、公園内を散策してから吉祥寺駅まで行った。



井の頭公園の池にはスワンボートが群れていた。

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北海道伊達市に2003年夏より毎年季節移住に来ていた東京出身のH氏。夏の間の3ヵ月間をトーヤレイクヒルG.C.のコテージに滞在していたが、ゴルフ場の閉鎖で滞在先を失う。それ以降は行く先が無く、都心で徘徊の毎日。

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